2015 Fiscal Year Research-status Report
現代版顧客志向の研究:カスタマー・アドボカシー志向尺度開発とモデル構築
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15K03750
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
山岡 隆志 名古屋商科大学, 商学部, 教授 (70739408)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 顧客志向 / サービスマーケティング / 顧客ロイヤルティ / アドボカシー / 顧客エンゲージメント |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は緻密化した定量実験を設計するため、文献サーベイを行った。文献サーベイの目的は、カスタマー・アドボカシーだけでなく顧客志向やリレーションシップ・マーケティングの周辺テーマの研究から、中心概念とその下位概念、先行要因、成果の要素となり得るものを網羅的に発見し整理することである。中心概念の研究蓄積については十分ではないため、顧客志向に対して意識が高い経営者または経営に携わる部長級以上の実務家への定性調査からの情報収集が必要であることが認識できた。また、先行要因と成果要素については、市場志向、リレーションシップ・マーケティング、サービス・マーケティングや経営・組織学研究で明らかにされている、経営者、組織、従業員、文化などに関わる要素が関係することを確かめることができた。 アドボケイトについては、消費者側の研究が進んでいるため、企業側からのマーケティング戦略としての研究と消費者側から消費者行動研究の両面から探求を進めると、より深い考察につなげることができるという考えに至った。具体的には、先行研究レビューからは、顧客ロイヤルティ、顧客満足、信頼、コミットメント、再購入などの要素とアドボケイトとの因果関係の研究が進んでいる。学会発表では、申請者が参加した2015年度の日本広告学会においてアドボケイト関連の発表が3つあり、アドボケイトを活用した企業のコミュニケーション活動への応用について関心が高いことを知ることができた。 そこで、消費者側のアドボケイト調査として、流通業2社の協力を得て、それぞれの会員に対してアンケート調査を行った。企業が保有する会員は、カード会員など純粋な顧客層から隔たりがある可能性があるため、調査会社がもつサンプルでも同様のアンケート調査をそれぞれの顧客に対して行った。これにより、消費者側のアドボケイトを中心としたモデルを確認することできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献サーベイは、国内外のマーケティング系トップジャーナルをレビューし、マーケティング研究だけでなく、経営・組織学関連のレビューを行った。文献レビューに加えて、学会参加により最新の研究動向の把握に努めた。日本商業学会や日本消費者行動学会といったマーケティング系の学会は勿論のこと、日本行動計量学会、経営行動科学学会、組織学会、日本心理学会などに参加して知見を深めた。 また、顧客志向に対して意識が高い経営者または経営に携わる部長級以上の実務家に、デプス・インタビュー形式での聞き取り調査を開始した。被験者のこれまでの経験上、アドボケイトを生み出すために行った取り組み、志向性を生み出す要素、どのような成果をもたらしたかなど具体的な経験に沿って語ってもらっている。 企業向けの調査が主体となるが、研究が進む上で消費者側の調査を行うことができると、より深い研究になることが分かってきた。そのため、消費者側の調査を行うために企業の顧客に対するアンケート調査を行い新しい知見を得た。当初、初年度では予定していなかった、消費者向けのアンケート調査や文献レビューなど消費者側の研究を加えたため、実務家へのインタビュー調査については少々遅延気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
顧客志向に対して意識が高い経営者または経営に携わる部長級以上の実務家への定性調査を引き続き進める。定性調査により緻密化されたカスタマー・アドボカシー志向の構成要素と下位概念、先行要因、成果、モデレーターを網羅した調査票を作成し、実証調査を行う。質的調査を基に設計した調査票を作成し、事前調査を行い調査設計の見直しをする。消費者を対象にした調査を行うことによって、顧客の立場からの企業評価に関するデータを採取する。これにより、企業活動に対する顧客からの評価を確認することができ、企業が行うカスタマー・アドボカシー志向の各要素がもたらす顧客の志向性、態度、行動への影響や効果について解明する。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況で説明したように、消費者向け研究を取り入れたことによる、定性調査については今年度計画の進捗がやや下回ったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、今年度実施していない定性調査およびその旅費を消化する計画である。
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