2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K03972
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
副田 あけみ 関東学院大学, 社会学部, 教授 (60154697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 典子 立正大学, 社会福祉学部, 准教授 (60523131)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高齢者虐待防止 / 施設内虐待予防 / チームワーク / ケースカンファレンス / 多機関協働 / 解決志向アプローチ / 解決志向マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
家庭内における高齢者虐待対応における効果的なチームワーキングを促進するためのケースカンファレンス・シートとして、①ストレングス視点、②安全像の構築と安全度測定、③プラン案の見通し確認、④ファシリテーションの段取りの明示といった特徴をもつ、「AAA多機関ケースカンファレンス・シート」を開発し、全国で本シート活用のケースカンファレンス研修を実施してきた。2016年度は、全国10か所で実施したが、その際、本シートの有用性を検証するため、(1)研修前質問紙調査、(2)研修後質問紙調査、(3) 3か月後質問紙調査を実施した。また、実際の虐待事例に対してシート活用ケースカンファレンスを実施した専門職に対し、(4)半構造化法によるインタビューないし、そのインタビューガイドを質問紙として回答を自由記述してもらう質問紙調査も実施した。 (1)と(2)から、本シートがどのような参加者にどのような点で、評価されたのかを明らかにすることとした。また、(2)の自由記述にかんしてオープンコーディングを行い、評価の意味内容を掘り下げて理解することを試みた。研修参加者のなかから協力者を募って実施した(3)の結果と(1)との比較、また、(4)のトランスクリプトのオープンコーディング結果から、本シートの有用性の検証を試みた。集計対象としたのは、(1)327、(2)326、(3)87サンプル、(4)18事例である。 施設内虐待予防班においては、サンクチュアリモデル、解決志向マネジメント論の文献研究を継続して行い、施設内虐待予防におけるマネジメント論、および、施設内におけるチームワーク促進手法のモデル案を検討した。また、得られた知見をもとに開発した「施設内虐待予防研修プログラム」を、全国4か所(静岡、東京、栃木、神奈川)で実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1),(2),(3),(4)の結果分析を終えている。(1)と(2)の結果からは、事例への対応という「パフォーマンス管理」に関して、ケースカンファレンスでよい経験を重ねている人たち、また、他者とのコミュニケーションや自分との内的コミュニケーションをケースカンファレンスにおいて積極的に行うという「ダイアローグ型コミュニケーション・スキル」の得点の高い人たちが、本シート活用のケースカンファレンスのねらいをより理解し、評価していることがわかった。 (4)のトランスクリプトのオープンコーディングの結果からは、本シートが、①ケースカンファレンス参加者の感情・態度・行動・意識への肯定的な影響、②支援内容の前向きな検討と役割分担の促進、③チーム意識や機関間のコミュニケーションの促進、といった効果をもたらすことが示された。解決や支援が困難な高齢者虐待事例対応において、チームワーキングを促進すると考えられる①と③、タスクワークを推進する②の機能を本シートがもっていることが示唆されたと言える。 施設内虐待予防班においては、サンクチュアリモデル、解決志向マネジメント論の文献研究を継続して行い、施設内虐待予防におけるマネジメント論、および、施設内におけるチームワーク促進手法のモデル案を検討している。また、得られた知見をもとに開発した「施設内虐待予防研修プログラム」を、全国4か所(静岡、東京、栃木、神奈川)で実施した。研修参加者の意見から、施設内虐待予防のためには組織内の円滑なコミュニケーションが不可欠であること、円滑なコミュニケーションを組織内に浸透させるためには、施設職員のコミュニケーション・スキルの向上のみならず、管理職が組織内コミュニケーション阻害要因に気づき、コミュニケーションを活性化させるための組織的な取り組みを行う必要のあることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度も引き続き、AAA多機関ケースカンファレンス・シート活用のケースカンファレンス研修を、全国5か所で行い、(1)研修前質問紙調査、(2)研修後質問紙調査、(3) 3か月後質問紙調査を実施する。2016年度に実施した(3)の対象者数が少なかったことや、(3)と(1)の比較分析の結果から、当該研修への参加効果が明確には認められなかったことから、調査協力の依頼文と調査票を若干修正した。2018年度には、2017年度に実施した(1)、(2)、(3)の調査結果の分析を行う。 シート活用ケースカンファレンス実施者に対する、(4)半構造化法によるインタビューないし質問紙調査は、協力者を得ることが非常にむずかしく、これまでの調査協力の依頼とは異なる方法を検討する必要がある。現在、ある自治体で、虐待事例を含む「複合問題事例」について、本シート活用のケースカンファレンスを年に3回程度実施してもらい、そこにファシリテーターの支援者として参加できないか、依頼している。この方法がとれるようであれば、インタビュー対象者も得られやすい。協力市町村を増やすためにも、『AAA多機関ケースカンファレンス・ハンドブック~複合問題事例への支援~(仮称)』をできるだけ早く刊行する予定である。 施設内虐待研究班においては、2018年度も引き続き、サンクチュアリモデル、解決志向マネジメント論の文献研究を継続して行い、施設内虐待予防のためのマネジメント論を検討する。その中で、特にチームワーク促進手法のモデル案を構築したい。また、組織の管理者、現場リーダーへ半構造化法によるインタビュー調査を実施し、開発したモデル案に基づく施設内虐待予防研修プログラムの有効性と妥当性について検証していく。さらに、開発した施設内虐待予防研修プログラムを試行的に、全国3,4か所(静岡、東京、埼玉)で行う予定である。
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Causes of Carryover |
実際の高齢者虐待対応におけるケースカンファレンスで、AAA多機関ケースカンファレンス・シートを活用した実践者へのインタビューを少なくとも15人は行い、そのテープ起こしを業者に依頼する予定であったが、インタビューを行えたのは半分で、残りは調査票記入という形をとったため、テープ起こし代金を予定より少なくしか使用しなかった。2018年度は、インタビュー数を増やし、そのトランスクリプト作成のための費用として使う予定である。 施設虐待予防班のほうでも、研究実施とその後のヒアリング調査をもう少し多く予定していたが、担当者の健康不良のため、予定数より少ない数しか実施できなかった。そのため、テープ起こしのアルバイト料金などが予定より少ない消費となった。2018年度は、研修後のヒアリング数を増やし、そのテープ起こし代金に使う予定である。
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