2016 Fiscal Year Research-status Report
自己肯定感に注目した子どもの「貧困に抗う力」育成のためのサポートシステムの構築
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15K03981
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
埋橋 孝文 同志社大学, 社会学部, 教授 (60213427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山縣 文治 関西大学, 人間健康学部, 教授 (10159204)
矢野 裕俊 武庫川女子大学, 文学部, 教授 (80182393)
田中 聡子 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (30582382)
劉 眞福 プール学院大学, 教育学部, 講師 (70708643)
郭 芳 同志社大学, 社会学部, 助教 (70755389)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レジリエンス / 自己肯定感 / 親の貧困と子どもの貧困 / 子どもの貧困の経路 / 子どもの貧困のステージ |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度の研究成果は以下のとおりである。
1)レジリエンスと自己肯定感に注目しながら子供の貧困を検討していくことが重要であるとの共通認識に到達したこと。 2)図「子どもの貧困の経路・ステージと対応する施策」を通して、親の貧困と子どもの貧困を区別しつつ両者の関係を明確にした。これまでの先行研究では、子どもの貧困にフォーカスした研究は少ない。子どもの貧困を親の貧困に解消してしまうのも誤りであるが、逆に、親の貧困と切り離して子どもの貧困を捉えるのも誤り。また、同図から予防的措置と治療的措置を明確に区別し、それぞれを位置づけることができたこと。 3)「京都子ども調査」を実施したことにより、自己肯定感を規定する各種要因を多変量解析によって明らかにする見込みを得られたこと。 4)①「スクール・ソーシャルワークの役割をめぐる2つの異なったアプローチ」、②「生活困窮者支援」とその中の「家計相談支援」の中身とその役割、意義、などの今後の検討課題を明らかにできたこと。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの議論を基にして科研報告書の分担(執筆)を次のように定めた。 ライフコースに沿った子どもの貧困の現状と対応を目次化、保育・教育の執筆者の手配。周産期・乳幼児期⇒鷲巣さん、保育⇒石田さん、小学校期⇒小川さん、中学校期⇒「京都子ども調査」、学校ソーシャルワーク⇒梅山さん、福祉の方では、児童養護施設⇒梅谷さん、田中弘美さん、母子生活支援施設⇒堺さん、(精神)障害をもつ親⇒山村さん、子ども食堂⇒田中聡子さん。 「京都子ども調査」を実施、4月20日に単純集計完了、5月末「報告概要(案)」完成、その後、「応用統計分析研究会」が多変量解析に挑戦、成果は『評論社会科学』に投稿予定。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は次のとおりである。 子どもの貧困は教育、福祉の各分野(保育、小学校教育ほか)でどのように表れ、どのように対応されてきたか(対応されてこなかったか)ほかのリサーチクェスチョンRQに沿って検討を続けてきた。これなどは触れるべき主要な項目を構成。今後は、どのように対応しているか(現在進行形)と、どのように対応すべきか(sollen)にシフトしてゆく。そのために必要な調査などを実施すること。 経済的要素および「親の貧困」を直接扱う担当者及び章がない。そこで、急きょ、桜井啓太さん(名古屋市立大学)に加わっていただいた。要望としては、①子供の貧困率(相対的貧困率)と生活保護水準などとの関係、②効果的な親の貧困削減策(児童扶養手当、児童手当、生活保護手当などを視野に)が検討課題。それでもまだ手薄なので、メンバーを補足する必要があるかもしれない。
大阪府の「子ども調査」が大きく取り上げられている。これは科研シーズン1の「大阪市子ども調査」をベースにしたもの。この調査は子どもの貧困について世間の目を向けてもらうことに主眼があるが、私たちの研究は、それよりも、どうすれば子供の貧困をなくす、減らせるか、その深刻さを軽減できるかに主眼を置いたもので、いわば「一歩先」をにらんでいる。そのために関係者(保健士、保育士、教員、児童福祉施設職員、母子生活施設職員)に示唆できる対応策を模索している。とはいえ、この間の全国各地での子供の貧困調査をサーベイすることが必要。と同時に、多くの自治体で子どもの貧困対策大綱などが制定されているので、そちらも今後ゲストスピーカーなどを呼んだりして押さえておきたい。
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Causes of Carryover |
1.2016年度には数種類のインタビュー調査を行う予定であったが、その実施のための理論的検討に時間がかかり、年度内に実施ができず、2017年度に持ち越されることになったため。 2.2016年度に実施した「京都子ども調査」の有効回収率が予想(2494人に配布し、回収数は1159、回収率は46.5%、予想回収率は70%)よりも低く、そのため集計費用が安くついたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.2017年度中に、小、中学校教員、児童養護施設職員、乳児院職員、保育所保育士、母子生活支援施設職員にインタビュー調査を実施する。
2.ゲストスピーカー(学校ソーシャルワーカー、保育ソーシャルワーカー、家計相談支援員、コミュニティ・ワーカーなどを)を招いての研究会を開催する。
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