2015 Fiscal Year Research-status Report
地域包括ケア推進に不可欠なケア専門職のIPW力を向上するIPEプログラムの作成
Project/Area Number |
15K03987
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
松岡 千代 佛教大学, 保健医療技術学部, 教授 (80321256)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多職種連携 / 介護支援専門員 / フォーカスグループインタビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、地域包括ケアシステム推進に不可欠な在宅医療と介護を一体的に提供できるケア専門職のIPW(Interprofessional Work)力の向上を目指したIPE(Interprofessional Education)プログラムの開発と普及である。 今年度は介護支援専門員を対象とし、IPWにおいてどのような困難性に直面し対処しているのか、またその経験を踏まえてどのような教育的ニーズがあるのかを明らかにするためにフォーカスグループインタビュー(以下、FGI)を実施した。FGIは、大阪市、北海道釧路市、三重県鈴鹿市の3箇所において、その地域でケアマネジメントを実施している経験年数が5年以上の介護支援専門員を対象とした。対象者は、研究者がこれまでに調査や研究支援等でかかわってきた関係者によって熟練の介護支援専門員を紹介してもらった。FGIは、半構成的質問紙を用いて1箇所あたり2時間程度実施し、その内容を逐語録としてテキストデータ化し、要約的内容分析の手法を用いて分析を実施した。 データ分析の結果、介護支援専門員のIPWにおける困難性と対処として、3つのカテゴリーに集約された。介護支援専門員は、「医療専門職とのコミュニケーション」に困難性を感じ、その上で「専門職間の観点・考え方の相違の相互解決」や「ケア対象者を中心とした代弁と調整」をしていることが明らかとなった。この結果から、現任の介護支援専門員に対するIPEとして、基本的なコミュニケーションに加え、医療職とのコミュニケーションスキル、対象者中心アプローチの価値と理念、IPWにおいて葛藤解決スキルに関する教育プログラムが有効であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、ケア専門職のIPW・IPEに関する文献的基礎研究と、IPW・IPEの実態調査として先に報告した介護支援専門員へのフォーカスグループインタビューによるIPWの困難性とIPEのニーズを明らかにする質的研究を実施した。しかし当初予定していた、文献研究と質的研究に基づいて作成した質問紙による全国調査は実施するに至らなかった。その理由として、文献研究がまだ十分ではないことに加えて、質的研究の分析が遅れたことにある。本研究の特徴は、IPW・IPEの実態に関してミックスメソッド、すなわち量的・質的に明らかにすることにあるため、量的研究の実施に向けて準備をして行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題は、まずは介護支援専門員が抱えるIPWの困難性とIPEのニーズを質問紙調査(量的研究)によって明らかかにすることである。次にIPW力向上のためのIPEプログラムを作成して試行し、その評価を行うことである。 IPEプログラムは、先の質的研究の結果を参考として、①「IPW基礎講座」(IPWに関する基礎的知識・価値・技術)、②「IPWにおけるコミュニケーション研修」(基礎的な対人関係能力向上)、③「IPWにおけるコンフリクトマネジメント研修」から構成される。IPEプログラムの対象は、地域包括ケアにおけるIPWにおいて困難を感じている介護支援専門員とし、全国3箇所程度において、各地域20名程度を募集して実施する。 IPEプログラムの評価指標としては、現在開発中の「IPWコンピテンシー自己評価尺度」(大塚ら,2013)、「Interprofessional実践能力評価尺度」(山本ら, 2012)を使用する予定である。 また今年実施した質的研究の成果は、8th ATBH(All Together Better Health) conferens(Oxford Brookes University)で発表予定である(採択済み)。
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