2017 Fiscal Year Research-status Report
援助者・被援助者間の悲嘆ケアに対する認識のずれを修正するコミュニケーションの実践
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15K04029
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
増田 匡裕 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 教授 (30341225)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グリーフケア / 対人援助 / ソーシャル・サポート / 対人コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年6月1日より、医療系大学に所属を変更し、医療者教育に携わることで、医療者がグリーフケアについてどのような知識をどこまで得ているのかを把握できるようになった。また、研究倫理審査委員に就任し、審査を通じて医療現場のニーズを汲み取る機会を得られるようになった。より現場に近い組織に所属することで得られた新しい情報により、医療従事者のメンタリティに関する、自身のこれまでの見解を修正する必要性を感じ、何度も変更を重ねている本研究の研究計画をより現実に寄与するものとすべく、再び修正する作業に時間を掛けた。
援助者と被援助者の間のアンビヴァレントな関係を説明するために、従来の心理学の理論以外にコミュニケーション学の理論を積極的に取り入れる理論のブラッシュアップを行った。特に、相手に近づく気持ち・行為(求心力)と相手から離れる気持ち・行動(遠心力)の対立を明確に記述し、その推移で対人関係の形成・維持・解消を説明する対話論など、質的心理学に取り入られている理論が援助を伴う対人関係のコミュニケーションを説明するのに適していると判断した。その新しい理論的な観点を用いて、パイロット的に収集した被援助者からの聞き取り調査のデータを詳細に再分析し、援助者との距離の調整の過程を記述した。
理論、特に方法論の検討に並行して、これまでラポールを形成していた悲嘆ケアサポートグループの活動のために九州・東北地方の会合に出席し、継続可能な対人援助の実践例を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
将来の成果発表を心理学系学会のみならず医療系学会でも可能とするため、研究倫理審査委員会が設置されている大学に異動したものの、異動先の申請書のフォーマットが医学系臨床研究のフォーマットになっており、人文社会科学的研究をそれに当てはめるには相当な工夫が必要な状況である。現在研究倫理審査委員として申請書の審査をしながら、それを参考にして審査可能な研究のデザインに変更すべく、研究計画を再度変更している途中である。このような、所属変更に伴う想定外の事態については、授業などの他の用務にもあり、結果的に平成29年度頭の計画通りに研究を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
サンプリングについては民間の調査会社などを通じたリクルートメントを実施する予定であり、そのために十分な経費は残してある。回答者の負担の少ないインフォームドコンセントの方法と所属機関の研究倫理審査のフォーマットが両立できるように調整を行う。
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Causes of Carryover |
本課題の潜在的なオーディエンスが心理学者のみならず、医療従事者にまで広がるため、医療系の学会での発表が不可欠であるが、そのためには研究倫理審査委員会(IRB)の承認が必要である。本課題の申請時には前任校人文社会科学部でIRB設置の見込みがあったが、最終的にIRB設置計画自体がなくなってしまい、そのため現在の所属に移ったという経緯がある。次年度使用額が累積しているのはこのような事情による。しかしながら、医療系大学である異動先のIRBには心理学的研究の審査の前例がないため、申請準備に想定外の時間を要している。平成29年度途中の異動において、研究機関同士の連絡の齟齬があったことも補助金の執行に影響を及ぼしている。
延長年度である今年度の使用計画については、IRBの承認の下り次第、業者を利用した対人援助職を対象の質問紙調査を実施する。サンプルの一部については参加協力の承諾を受けて近隣の医療機関における収集も並行させる。被援助者対象の調査については、悲嘆ケアのサポートグループの協力を仰ぎ、IRBの承認を経て、個別またはフォーカスグループの聞き取り調査を実施する。成果の年度内の発表は困難であるが、データ分析結果の一部の発表準備は年度内に終わるため、年度内には学会発表の手続きを取ることができる状態にまとめる。
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Research Products
(1 results)