2015 Fiscal Year Research-status Report
越境的ネットワークの発展と拡散に関する社会心理学的研究
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15K04031
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
加藤 潤三 琉球大学, 法文学部, 准教授 (30388649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野入 直美 琉球大学, 法文学部, 准教授 (90264465)
前村 奈央佳 神戸市外国語大学, 外国語学部, 講師 (50632238)
金城 宏幸 琉球大学, 法文学部, 教授 (50274874)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 沖縄 / 海外移民 / 越境的ネットワーク / 受容 / 世界のウチナーンチュ大会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では、沖縄系海外移民および沖縄県民の越境的ネットワークの実態を明らかにすべく2つの調査を実施した。 まず1つは、沖縄系海外移民を対象とした調査であり、本研究では沖縄県が把握している88の海外県人会にメールにて調査を依頼した。メールが届かなかった5団体を除き、これまでに28の海外県人会から回答が得られた(有効回収率33.7%)。海外県人会が有している他の県人会とのネットワークは、平均3.48(標準偏差5.26)であった。ただし度数で見ると、最も多い県人会では20以上のネットワークを有していたが、半数近くの県人会はネットワークが0ないし1であった。つまり、海外県人会の有するネットワークは多いところと少ないところが両極的であることが示された。またこれら海外県人会間のネットワークは、同国内が中心(73.4%)であり、国をまたぐネットワークは少なかった(26.6%)。また国をまたぐネットワークも、同一エリア内(北米、中南米など)が大半(93.7%)であった。つまり県人会間のネットワークは言語や社会環境などが類似している近距離内で形成されることが示された。 2つ目の調査は、沖縄県民を対象にWeb調査を実施し、724名から回答を得た。沖縄県民の有する海外移民とのネットワーク(海外移民の親戚および友人の合計数)は、平均2.52人(標準偏差7.16)であった。なお属性的要因によるネットワークの相違について検討を行った結果、沖縄県民のうち、もともと出身が沖縄である個人と県外から移住してきた個人(0.85人)とでは有意差があり、出身者の方がネットワークの人数が多かった。また出身者の中でも、20・30代の若年層と、40・50代の中年層、60代以上の高年層では差が認められ、高年層(5.20人)は、中年層(2.27人)および若年層(2.97人)よりもネットワークの人数が多かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では、予定してた海外県人会と沖縄県民を対象とする調査が実施できた。その点では、おおむね研究は順調に進展しているといえる。ただし海外県人会調査では以下のような問題点と変更を伴った。 1)当初の計画では、調査対象者を海外県人会に所属する会員個人をサンプルとすることを考えていた。しかし調査票の配布・回収(託送調査法)にあたり、依頼する県人会への負担が大きいこと、また個人を対象とするだけの調査費用(郵送代・謝礼等)を確保することができなかったため、県人会という組織単位での調査へと切り替えた。そのため、現時点で測定されている海外県人会相互の越境的ネットワークは、集団レベルの公的なネットワークに限定されたものになっている。海外移民個々人が有する越境的ネットワークに関しては、「第6回世界のウチナーンチュ大会」における大会調査(平成28年度)において測定を行えるよう計画をアレンジする。 2)現状、海外県人会から得られた回答の有効回収率(33.7%)は十分であるとは言えない。本研究では、世界のウチナーンチュ大会の前後における越境的ネットワークの変化を検証することを主たる研究目的としているが、この研究目的を達成するためには、大会前の時点でのデータを十分に確保しておくことが肝要である。今年度開催される世界のウチナーンチュ大会は10月末であるので、それまでに回収率が高められるよう、結果のフィードバックを含め、各海外県人会に働きかけていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、「第6回世界のウチナーンチュ大会」にて、参加者を対象とした調査(質問紙調査)を行うことが主目的である。 大会は2016年10月26~30日にかけて行われるが、これまで大会参加者は年々増加しており、海外移民が5000名以上、県内・県外も含めた延べ参加人数は42万人以上となっている。大会調査では、主に海外移民を中心にデータを収集するが、海外移民と沖縄県民の双方向的なネットワークなどを明らかにするために、大会に参加している沖縄県民にも調査を実施する。また本研究では対象として大きく取り上げていないが、沖縄からの移住者は海外だけでなく、国内(他都道府県)に行った人も多く、各地で県人会も組織化されている。海外移民と比較する意味でも、可能であれば国内移民からもデータを収集したい。 最終的なサンプル数としては、前回実施された大会調査が1000名規模であったので、結果を比較するためにも同規模を想定する。なお調査の実施に当たっては、世界各国から参加者が集まるため、日本語・英語・スペイン語・ポルトガル語など複数言語で質問紙を作成する必要がある。 以上のように、大会調査は比較的規模が大きいため、円滑に調査を遂行していくためには、県庁・大会事務局をはじめ関係機関からの協力も必要不可欠である。協同的な研究体制の整備も推進していく。 また平成27年度に実施した沖縄県民調査では、モニターに継続調査への参加を依頼しており、IDによってデータを対応付けることが可能である。大会終了後、再度Web調査を実施し、大会前後で海外移民とのネットワークや、彼らへの態度(例えば海外移民への受容態度など)にどのような変化があったかを時系列的に検証を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては主に次のようなものである。本研究では、海外県人会を対象とした調査を実施しているが、回答していただいた県人会には、回答への謝品および報告書を送付している。 現在回収数が28団体であり、当初計画上想定していた全数回収に比べて、数が少ない。つまり郵送代が当初予算に比べ執行できていない状態である。また郵送費それ自体もエコノミー航空便(SAL)を利用するなどにより、予算の圧縮に努めた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外県人会調査に関して、今年度も引き続き(10月に開催される第6回世界のウチナーンチュ大会前まで)実施していく。その際、調査協力に対する督促やフィードバックのメール送信など、回収率の向上に務めていく予定であり、回答が得られた県人会には随時、上記謝品と報告書を送っていく。その費用として、次年度使用額を充てていく。 また大会調査にかなりの費用を要するため、その一部にも充当していく予定である。
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Research Products
(2 results)