2016 Fiscal Year Research-status Report
越境的ネットワークの発展と拡散に関する社会心理学的研究
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15K04031
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
加藤 潤三 琉球大学, 法文学部, 准教授 (30388649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野入 直美 琉球大学, 法文学部, 准教授 (90264465)
前村 奈央佳 神戸市外国語大学, 外国語学部, 講師 (50632238)
金城 宏幸 琉球大学, 法文学部, 教授 (50274874)
酒井 清 (酒井アルベルト) 琉球大学, 法文学部, 准教授 (50458692)
山里 絹子 琉球大学, 法文学部, 講師 (00635576)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 沖縄 / 海外移民 / 越境的ネットワーク / 受容 / 世界のウチナーンチュ大会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、2016年10月27~30日にかけて沖縄県で実施された『第6回世界のウチナーンチュ大会』において、大会参加者を対象とした調査を実施した。調査は、県の大会実行委員会事務局とも共同で行い、最終的に1,093名から回答を得た。そのうち海外参加者は381名、県外参加者は35名、県内参加者は677名であった。 大会に関する実態的な側面の分析としては、多様な国・世代からの参加があること、訪れる海外参加者の移民世代に変容の傾向がみられることが示された。また大会の評価に関しては全般的に満足度は高い反面、海外のウチナーンチュとの交流が少ないことや広報不足に関する不満点が多いことが明らかになった。 研究の主目的である大会を通じたネットワークの構築・拡大という点については、海外参加者では、70%近くの人は何らかの新たなウチナーンチュネットワークを築いていたことが示された。海外参加者の創出したネットワークについて詳細を見ると、それぞれの国・地域と沖縄をつなぐ「母県とのネットワーク」、国同士をつなぐ「越境的なネットワーク」、そして国内や地域内をつなぐ「ローカルなネットワーク」と、多岐にわたるネットワークの構築が確認された。一方、県内参加者においては、8割近くの人が、大会を通じて新たに構築したネットワークが「0人」であった。つまり、世界のウチナーンチュ大会は、海外の参加者にとってはネットワークを構築・拡大させる場として機能しているが、県内参加者にとってはその機能が十分果たされていないことが示された。 この点について補完すべく、県内在住者309名を対象に、第6回世界のウチナーンチュ大会に関するWeb調査を行ったところ、実際の参加率は8%程度であり、県内在住者にとって大会の意義や目的が十分に浸透しきれていない可能性も示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本年度は「第6回世界のウチナーンチュ大会」にて調査を実施した。 また県の大会実行委員会による公式の報告書にも執筆を行い、研究成果のフィードバックを行った。現在は、より直接的に調査協力者にフィードバックできるよう、研究チームとして独自の報告書を作成しており、4言語に翻訳したものを海外県人会等へ送付する予定である。研究業績については、国内外の学会にて報告を行っており、また研究チームとして複数本の論文を執筆する予定である。このまま順調に研究を推進させていく。 なお前年度の進捗状況における問題点として、海外県人会を対象とする調査において、有効回収率が十分でないこと(33.7%)、および測定されたネットワークが組織としての公的なものに限定されたことの2点が挙げられた。後者については、「第6回世界のウチナーンチュ大会」において個人レベルのネットワークを測定しており、この問題点についてはある程度解決できている。一方、前者の問題については、回収率を改善すべく大会直前まで各国県人会に依頼を行ったが、向上させることはできなかった。研究上の問題点として残ったままとなってしまったが、この点に関する詳細は『今後の研究の推進方策』にて記述する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成29年度は、平成27年度に実施した沖縄系海外県人会を対象とする調査を再度実施する予定である。調査の基本的なデザインは同様であり、沖縄県が把握している88の海外県人会に対して、メールで調査を依頼する。主な測定項目は、交流のある海外県人会についてであり、そこから海外県人会相互のネットワークを明らかにする。 上記研究における目的は「第6回世界のウチナーンチュ大会」前後の2時点間におけるネットワークの比較を行うことである。この比較を通じて、海外県人会相互の組織的なネットワークの構築・拡大に対して、世界のウチナーンチュ大会がどのような効果を持っているのか検証を行う。 また組織間のネットワークに関するデータと、平成28年度に実施した「第6回世界のウチナーンチュ大会」における参加者個人のデータを整合させ、組織的なネットワークの構築に個人のパーソナルネットワークがどのように寄与するのか、またウチナーンチュに関する心理学的、社会学的要因がネットワークの構築・拡大にどのような影響を及ぼすのかについて検討を行うことも目的とする。 なお『現在までの進捗状況』に記したが、平成27年度の調査では88の海外県人会のうち、回答を得られたのは28団体であるなど有効回収率に問題が残った。少しでも回答数を増やすべく、大会直前まで依頼を行ったものの改善することはできなかった。現状としては、直接的に比較する方法として、この28団体を用いるしかない。ただし2時点間における変化を少しでも測定できるよう、現在有するネットワークを測定するだけでなく、そのネットワークがいつ、どこで作られたのか、その機会として「第6回世界のウチナーンチュ大会」が関わっているのかなど、測定方法を工夫して実施する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は「第6回世界のウチナーンチュ大会」にて調査を実施したが、その際当初予算よりも経費が掛かることが予想されたため、30万円の前倒し申請を行った。 実際的には、平成28年度に要した経費は当初予算とほぼ同額に抑えることができたが、それも大会調査後の作業等においてできるだけ経費を節減したこと、また報告書作成の進展度合いから翻訳作業がずれ込んだためである。不測の事態を予想しながら、また少しでも当初計画よりも研究を進展させていくことを考えた場合、ある程度研究費にゆとりをもって行うことも重要である。そういった意味で前倒し申請も必要な処置であったと考える。 以上のように、前倒し申請をしたため次年度使用額が生じたが、研究遂行上、特段の遅れ等が生じているわけではない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
発生した次年度使用額については、主に英語、スペイン語、ポルトガル語への翻訳に使用する予定である。 また平成29年度は国際学会(アジア社会心理学会AASP)での発表を考えており、そちらに充当することも検討中である。
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Research Products
(4 results)