2015 Fiscal Year Research-status Report
悉皆調査による中1ギャップ型不登校未然防止ツールの開発と活用
Project/Area Number |
15K04073
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
中島 義実 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (20335954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 克巳 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (10361974)
大西 彩子 甲南大学, 文学部, 講師 (40572285)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不登校 / 中1ギャップ / 未然防止 / 自己効力感 / アンケート / 簡易分析シート / 悉皆調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、いわゆる「中1ギャップ」による不登校の未然防止のためのツールの開発と活用とを目的としている。そのためにまず、小学校高学年の時点でどのような側面の自己効力感を高めておくことが、中学校進学後の不登校につながる不適応を抑えることができるのか、実証的に明らかにすることとした。 初年度である平成27年度においては、すでに前年度、小学校6年生の時点で自己効力感の諸側面を測定しておいた自治体Aの当該学年全員(およそ8000名)に対して、中学校進学後の適応状況を測定する質問紙を作成し、民間業者を用いて印刷、配布、回収、データ入力を行った。 入力されたデータを解析し、新たに、小学校高学年の時点で高めておくべき自己効力感の7つの側面(学校生活で自分を律する力、家庭学習で自分を律する力、気持ちを言葉で伝える力、周囲を害することを自制する力、気持ちを切り替える力、友だちなど周囲の人と信頼関係を結ぶ力、家族との信頼関係を結ぶ力)をチェックするアンケートを作成、併せて、子どもが記入したアンケートの結果をエクセルシートに入力するだけで、7つの側面の中のどこの自己効力感を今後強めていくとよいのかが一目でわかる簡易分析シートを開発し、自治体Aの教育委員会に引き渡した。 他方で、今回の自治体Aにおける悉皆調査に先立ってパイロット的に行っていた調査の成果について、以下の学会発表を行った。 原田克巳・大西彩子・中島義実(2015).中学校への進学時不適応の予防に必要な能力 (4) ―登校状況に着目して―.日本教育心理学会第57回発表論文集,203 Onishi,A., Nakashima,Y., & Harada, K .(2015). A longitudinal examination of the effects of self-efficacy on preventing problem of peer relationship : transition from elementary to junior high school.14th European Congress of Psychology.Milan,Itary
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画のマイルストーンと照合すると、データ収集・分析までは当初の計画以上に進行し、平成28年度からの前倒し執行を行うことで、データ解析がさらに加速し、自己効力感アンケートと簡易分析シートとからなる未然防止ツール自体は、早い段階で完成し、自治体Aの教育委員会に引き渡すことのできる態勢は整っていた。 しかし年度末にかけて、自治体Aの教育委員会において、本ツールを全学校がよりしっかり理解して活用できるように、説明会や説明冊子の作成を丁寧に行うこととしたために、マイルストーンでは全小中学校への配布も平成27度中に終えるはずであったが、まだそこには至っていない(平成28年度4月に、全中学校区に対して説明会を予定している)。 他方で、学会発表については、平成27年度中にすでに国際学会で1回、国内学会で1回行っており、当初計画以上の進捗となっている。 以上を差し引いて、おおむね順調に進展していると評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗の遅れている、自治体Aの教育委員会による未然防止ツールの全校配布と活用のために、平成28年度4月中に全中学校の校長とスクールカウンセラーとが一堂に会する会合で説明することを予定している。同時に、自治体Aの教育委員会のイントラネットを通して未然防止ツールを市内全小中学校に配布する。 また、3箇所の中学校区を研究モデル校区に指定し、活用の進捗報告を自治体Aの不登校対策推進協議会において行わせる。実効のあった活用方策については自治体Aの教育委員会のイントラネットを活用して市内小中学校に提供する。 平成29年度には、平成28年度に小学校6年生であった学年が中学校に入学してくるため、平成28年度における活用が実をあげていれば、この年度において、「中1ギャップ」による不登校の発生が抑制されているはずであり、本研究の仮説に対する検証がなされるはずである。 研究モデル校区における活用実践を継続し、教育委員会によって実効性のある活用について、冊子にまとめて市内の小中学校で共有する。 以上の成果について、すでに平成28年度において国際学会で2回、国内学会で2回の学会発表と、国内学会でのシンポジウム1回が予定されている。これらの成果を元に教育心理学研究誌に論文投稿を行う。同様の発信を平成29年度においても行っていく。
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Causes of Carryover |
研究代表者が「その他」で計上していた1,100,000円はアンケート印刷・発送・回収・入力・データマッチングに充てるものであったが、代行業者との交渉等により、アンケート印刷・発送を物品費に繰り入れ、回収・入力・データマッチングの見積もりを厳しくすることで893,668円に抑えることができ、206,332円の残高が残った。この残高に、研究代表者が平成28年度分の前倒し支払を行った額を加えてハイスペック・パソコンおよび統計ソフトを導入したが、なお15,592円の残高が残った。 また、研究分担者の物品費として計上していた360,000円はハイスペック・パソコン導入に充てるものであったが、予定額より安く246,390円で導入することができ、113,610円の残高が残った。この残高と旅費で計上していた額を加えて学会発表エントリー費用に充てたが、なお108,610円の残高が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者の次年度使用額15,592円は、平成29年度前倒し支払分と合わせて、学会参加費等に充てる予定である。 研究分担者の次年度使用額108,610円は、同じく学会参加費等、また、統計ソフトの導入、および関連書籍購入に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)