2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04241
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
前田 晶子 鹿児島大学, 学術研究院法文教育学域教育学系, 准教授 (10347081)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武隈 晃 鹿児島大学, 学術研究院法文教育学域教育学系, 教授 (90171628)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 発達概念の形成史 / スポーツ教育 / カール・ディーム / 山下徳治 / フランス心理学史 / L’ecole de plein air / 波多野完治 / メイエルソン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、主として、ドイツ・フランス調査を実施し、資料の収集と現地での研究交流を行うことができた。また、中間報告書として「山下(森)徳治における発生論の形成~戦前の教育運動から戦後のスポーツ教育論まで~」を発行した。 まず、ドイツでは、ケルンスポーツ大学オリンピック研究センターのカール・ディーム文書にある日本関係資料の閲覧・収集を行った。特に、1950年代の資料として、日本のオリンピック・ムーブメントへの貢献や教育学者山下徳治との交流の状況を詳細に把握することができた。また、ディームが残した膨大な日録が公文書館の被災により喪失したといわれていたことについて、彼の子孫による複写ノートが当センターに所蔵されており、その一部を収集することができた。さらに、これも膨大な書簡類について、必要な部分を全て収集することができた。最後に、1920年代にディームが初めて来日した際の資料を発掘することができた。また、当センター所長Stephan Wassong 教授と会談し、今後は共同研究を通じて「Sports for all」の思想史研究を行うことで共通認識をもつことができた。 次に、フランスの国立障害者教育・指導方法高等研究所(INS HEA)では、副所長Murielle Maugin、国際連携プロジェクトマネジャーのSeverine Maillet及びElodie Bouchetと面会し、今後の調査研究体制について打ち合わせを行った。その結果、平成28年度に研究代表者が当研究所に所属をして、フランス心理学研究を進めることで合意をした。さらに、当研究所の附属図書館にてL’ecole de plein airについての資料の閲覧・収集を行った。 ドイツ研究については、先に中間報告書を発行(3月)したので、今後は出版助成に応募する計画を立てている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目の段階で中間報告書をまとめることができたので、予想以上の成果をあげることができたと考えている。特に、この報告書は、前半で本研究の論点を提示すると同時に、後半では歴史資料の一覧を示しており、資料的な価値をもつものとしてまとめることができた点は評価できると考える。今後は、本研究のうちドイツ研究の成果として、本中間報告書の出版に向けて準備をしていきたい。 また、今年度の海外における研究機関との交流により、今後において国際的な共同研究を行う体制を作ることができた点が評価できる。まず一つは、ケルンスポーツ大学オリンピック研究センター所長Stephan Wassong 教授との打ち合わせにおいて、スポーツ教育史研究を「Sports for all(ディーム)」という枠組みで位置づけ、ドイツと日本におけるそれぞれのスポーツ教育の思想史と両者の関係について共同研究を行っていくことで合意を得ることができた。また具体的に、国際学会での発表や国際的な学会誌への投稿も検討することとなった。 次に、フランスINS HEAとの協議の結果、研究代表者が平成28年度に一定期間当研究所に所属をし、研究を進めることで了解を得ることが出来た。1月には、当研究所の所長からインビテーションレターを受けている。 以上から、本年度の研究活動によって、研究基盤が当初の計画以上の広がりを持って形成することができたと考えている。そして、本年度の研究活動を受けて、次年度以降の計画を飛躍的に発展させる形で再調整したいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は、フランス心理学の発達研究について検証することに重点を置く形で進める。平成28年度は研究代表者がフランスに一定期間滞在をすることになったため、フランス国立公文書館における心理学史・歴史的心理学の史料を収集することが可能である。特に、1920-40年代のフランス心理学会の状況について、学会のジャーナルを指揮したI.メイエルソンの文書について全体的に収集する予定である。また、心理学者波多野完治が同時代のフランス心理学から何を吸収したのか検討を行い、1934年の発育論争以降の波多野の研究史を明らかにする。 研究分担者の担当として、引き続きドイツ・スポーツ教育学と日本との関係について研究を進める。山下徳治の未発表原稿についての論考を発表する他、ヨーロッパにおける布置関係を明らかにするためドイツとフランスのスポーツ教育の比較検討も併せて行う予定である。また、国際的共同研究として、ケルンスポーツ大学との交流をさらに進め、共同研究を行う計画である。 最終年度に向けて、本研究の全体像を構造的に整理し、日本における発達思想の戦後の形成史を素描する。特に、人間発達研究所(滋賀)の田中昌人文書の研究成果に学び、かつそのプロジェクトと共同しながら、諸概念の整理や発達保障の歴史的分析を行っていく予定である。 研究の発表としては、フランス編、ドイツ編、日本編の各領域で論考を発表する予定である。そして、最終年度にはそれらを総合した報告書の作成に取り組む。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた人件費を有効に使用できなかったことが理由であると考えている。本研究で必要となる人件費は、フランス語かドイツ語の資料の整理・データベース化の作業に関連して計画したが、その任務に適する大学院生等の人材が見つからなかったため、雇用せずに作業を行った。また、翻訳者等の雇用には予算が足りず、また作業自体もそのような専門家に依頼するものではなかったため、雇用を行わなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用分については、平成28年度に大きく膨らむことが予想されるフランスでの資料印刷費に充てたいと考えている。
|
Research Products
(3 results)