2017 Fiscal Year Annual Research Report
A historical approach to the developmental thought in Japanese pedagogy
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15K04241
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
前田 晶子 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (10347081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武隈 晃 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (90171628)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 発達概念の形成史 / 山下徳治 / カール・ディーム / 発育論争 / 形成と造形 / 戦後教育学 / スポーツ教育思想 / フランス心理学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前から戦後にかけての日本の教育学において発達概念がどのように検討されてきたのかを問題としている。その際、1934年に行われた「発育論争」の主要な論者である山下徳治と、山下に対立した心理学者らの中で波多野完治にみられるフランス心理学の立場に注目し、両者の発達思想の固有性を追うこととして研究を進めてきた。 前者の山下研究については、彼のライフヒストリーを基軸としながら、主としてデューイとドイツの教育思想との出会いを通して、彼の立場が、子ども・青年の発達研究を「人間の自己形成-造形の発生論的研究」として成立させていった過程を明らかにした。とりわけ、戦後において、ドイツのスポーツ教育思想との対話から、青少年の「造形」論を導き出した山下の発達思想は、1930年代の発育論争における「発達するのか/させるのか」という二項対立を乗り越える視点として提出されたこと、その際、戦後社会における独自の身体論と文化論を踏まえた論理が見られたことをその固有性として押さえた。 後者については、研究代表者が研究期間2年目にフランスでの在外研究の機会を得たことから、日本のフランス心理学受容の基礎的研究として、フランス心理学史の当地における研究状況についてリファーする作業を進めた。とりわけ、日本に大きな影響を与えたアンリ・ワロンの発達理論について、一次資料に当たると共に、研究交流を通して近年のワロン評価を押さえることができた。特に、ワロンの発達理論を基礎づけた病理学的身体論に注目する研究が進んでいる点は、日本のワロン受容においても検討する必要性があるものと考えている。当初の計画にあった波多野らによる受容過程についての検討は限定的なものとなったが、今後の研究の視点は明確になった。
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