2018 Fiscal Year Research-status Report
義務教育段階の教員におけるリアルタイム・モニタリングによる授業実践の質的向上
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15K04253
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
大石 幸二 立教大学, 現代心理学部, 教授 (80302363)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教員 / 授業実践 / 省察 / 反省的実践 / リアルタイム・モニタリング / 行動コンサルテーション / 実践研究 / カンファレンス |
Outline of Annual Research Achievements |
第4年次(平成30年度)の研究では、教師の省察を促すリアルタイム・モニタリング(RTM)の手法を多くの学校に普及し、その定着を図ることを目的とした。特に一定の年数以上の教職経験を有する教師ばかりでなく、新採用者を含む教職経験の浅い教師も対象としていることが本研究の特色であった(研究実績の一部は『日本特殊教育学会・第56回大会』にて公表済み)。RTMが授業実践の質的向上(すなわち、授業改善)に効果を発揮するか否か,を行動観察、ナラティブ、および評定尺度など、過去の研究実績で有効性が確認された指標を用いて検証した。東京都内の複数の公立小学校、八戸市内の複数の中学・高等学校(私立校を含む)、さらには国立大学附属の特別支援学校(幼稚部)において、RTMの考え方と技術を生かした学校への介入を精力的に行った。学校への介入の際は、行動コンサルテーションの技法が必須であった(研究実績の一部は『人間関係学研究・第23巻』にて公表済み)。RTMとともに、幼児・児童生徒の「学習輪郭表」および教師の「学習過程分析票」の考案なども行い、これらについては、公開研究発表会・研究協議会において、全国から参集した教師に対して成果の還元を行った。このように実践型の研究を展開したことは大きな実績である(研究実績の一部は『配慮を要する子どものための個別の保育・指導計画:カンファレンスで深まる・作れる』にて公表済み)。第4年次の広範な研究活動により、研究成果を地域社会に浸透させるための足場が築かれた。そして、この基盤を活用して、人材を育成・配置することにより、授業実践の質的向上を持続的に達成できる可能性が高まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたリアルタイム・モニタリング(RTM)手法の普及は、①手短な(1シーンが30~60秒の)サンプル動画の使用、②幼児・児童生徒に対する指導・支援の意味づけのテロップ化、③教員ごとの優れた特質としての整理により、効果をあげることができた。その成果は、5篇の論文(うち2篇は「印刷中」)、6冊の著書(うち2冊は「印刷中」)および5件の学会発表として当該年度内にその成果を公表している。そして、これらの成果を踏まえ、第5年次に社会実装のための再現実験を行う準備ができた。当初の計画では、社会実装に向けての道筋を展望することができなかったが、RTMの考え方が、当初予想していた以上に関係者の肯定的評価を得て、平成31年度に第5年次研究を実施できる準備が整ったこともその理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間延長申請が承認されたことにより、補助事業の目的をより精緻に達成するための再現実験が実施できる。豪州・クイーンズランド大学から国際ライセンスを有するファシリテーターを招請してワークショップ(知識・技能を陶冶するための研修)を開催する。対象地域とする青森県八戸市は10ブロックに区分されるため、10名のプロバイダー(多様な人材)を養成することで、市内全域にプロバイダーを配置できる見通しである。もしも、八戸市で成功裡に展開できない場合は、山口県山口市において研究協力者である須藤邦彦准教授(山口大学教育学部)の助力・助言を得て、再現実験を実施する。以上により研究を推進することで、これまで測定していない地域の社会的健康の増進についても評価を行うことが可能となる。 第5年次(平成31年度)に、社会実装のための実践型の研究を継続する。上記の人材を育成・配置するために、前年度までの未使用額を有効に活用して、研修プログラムを実施する予定である。小学校に支援に関する情報や技術を引き継ぐ保育所・幼稚園の関係者、教育委員会で学校・教師支援にあたる専門相談員、学校のコーディネーターや通級担当教師など、多様な人材に研修を通じて知識・技術の普及を目指す。
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Causes of Carryover |
研究推進の過程で、予想以上に研究が進捗した場合には、第5年次(平成31年度)にリアルタイム・モニタリング(RTM)を発展的に適用するための研究を行うことを予定していた。また、前記の発展的な研究を成功させるために、研究費の一定額を次年度に繰り越す必要があった。RTMの普及のためには、一人でも多くの有能なプロバイダーを養成して、これらの人材を後方支援することが必要とされる。このプロバイダー養成と後方支援により、RTMの考え方と技術を生かした社会実装が可能になると予想される。 直接経費の助成金の次年度使用予定額(約2,280,000円)を充てて研究成果を地域に浸透させるために、①まずプロバイダーの養成を行う。その開催費用として、約1,575,000円(*10名を養成)を支出する。②続いて「国際ライセンス有資格者」となった10名のプロバイダーに対して行動コンサルテーションの手法を用いて、後方支援(RTMの実践現場における適用の間接援助)を行う。1か月に1回の頻度で計4回実施する予定である。研究協力者2名を伴い、その出張費用は約705,000円である。これらの成果を実践研究論文にまとめる。
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