2015 Fiscal Year Research-status Report
大正から昭和初期の仏教日曜学校で展開された児童文化活動をめぐる総合的研究
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15K04275
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
中地 文 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (70207819)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 仏教 / 日曜学校 / 宗教教育 / 児童文化 / 児童文学 / 児童図書館 / 宮沢賢治 |
Outline of Annual Research Achievements |
大正期に全盛時代を迎えた仏教日曜学校の実態を調査するとともに、その教育的・文化的意義を探るという目的のもと、初年度は浄土真宗および日蓮宗の日曜学校に関する調査を行った。また、大正中期に刊行された児童の宗教教育関係図書に掲載された児童教育理論の検討を行った。 浄土真宗については、本願寺派の『日曜学校講習会講義録』を読み解き、同派では大正四年に日曜学校の設立が企画され、翌年までに773の日曜学校が全国に設けられたことを確認。お伽噺の口演等の児童文化活動も含む活動内容や、京都府立図書館長が策定にかかわったという日曜学校経営方針も把握した。加えて、大正十一年四月に創刊された大谷派の児童教化の機関誌『児童と宗教』の復刻版を入手し、その内容の整理・検討も進めている。ここには日曜学校経営の理論と活動実態を伝える記事のほか、日曜学校が当時の児童文学および児童図書館の問題や幼児教育の問題ともかかわりをもっていたことがわかる記事が掲載されていた。 日蓮宗に関しては、国柱会の新聞「天業民報」の調査を進め、大正中期には全国各地で児童向けの会合が開かれていること、大正十年頃から童話・童謡が同紙上に掲載され始めていること、児童劇・遠足等、多彩な児童文化活動をめぐる記述がみられることなどを確認した。 大正期に刊行された宗教教育関係図書としては、伊藤堅逸『児童宗教教育の基礎』(大正八年 洛陽堂)、鳥越道眼『児童の宗教々育』(大正九年 六大新報社)を読み解き、児童の宗教教育の目的についての認識を明らかにするとともに、それと日曜学校経営の考え方とのつながりを見出した。 これらの成果は、公表に向けて現在取りまとめを行っている。そのうち、大正期の児童文化活動と児童図書館の動きに関して判明した事柄は、2015年12月5日に塩竃図書館で行った講演の中で公表した。また、成果の一部を宮沢賢治の活動の背景の考察に活用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するためには、第一に、明治・大正・昭和初期において宗教団体が刊行した書籍・雑誌・新聞等に掲載された仏教日曜学校関係記事の調査が必須である。そして第二に、宗教関係書に掲載された児童教育理論や仏教日曜学校関係の記述の調査が必要になる。初年度は、浄土真宗本願寺派・浄土真宗大谷派・日蓮宗に焦点を当ててその調査を行う予定であったが、雑誌『児童と宗教』の復刻版が入手できたことから、資料収集に苦労することなく調査を進めることができた。大正期の仏教日曜学校の多彩な活動状況が見えてきているので、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、浄土真宗本願寺派・浄土真宗大谷派・日蓮宗の書籍・雑誌・新聞に掲載された仏教日曜学校関係記事の調査・考察をさらに進めるとともに、天台宗・真言宗。浄土宗における仏教日曜学校・子ども会等の調査・資料収集を進めていく。さらに、明治から昭和初期の子どもを取り巻く文化環境、宗教関係以外の場での児童文化活動の状況についても、当時の書籍や雑誌等をもとに探ることにする。
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Causes of Carryover |
物品が予定より若干安く納入されたため、少額であるが次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度同様、宗教団体が刊行した図書・雑誌・新聞を収蔵している図書館・図書室で調査・資料収集をするため、国立国会図書館(東京)、国柱会図書室(東京)、および平成27年度とは異なる宗教団体の本部の図書室(京都・山梨)へ出張する必要がある。その旅費として使用したい。さらに、研究情報の収集のため、学会の研究大会(日本児童文学学会、宮沢賢治学会等)への出張も予定している。資料複写費、データ整理用の記録メディア購入費にも充てたいと考えている。
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