2016 Fiscal Year Research-status Report
社会経済的背景の厳しい地域における「効果のある地域運営学校」の運営モデル構築
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15K04302
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
大林 正史 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (40707220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 敦史 静岡大学, 教育学部, 教授 (30322209)
柏木 智子 大手前大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90571894)
仲田 康一 大東文化大学, 文学部, 講師 (40634960)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 効果のある地域運営学校 / コミュニティスクール / 学校運営協議会 / 社会経済的背景 / 全国学力・学習状況調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度には、予定通り、6校の「効果のある地域運営学校」への訪問調査を実施した。ただし、調査予定の学校が自然災害の影響をうけたり、年度替わりに校長が交代したり、共同研究者が多忙であったりして、6校中4校には、0~2回程度しか訪問調査を実施することができなかった。研究代表者が担当した残りの2校(A校、B校)には、合計11回の訪問調査を行った。その結果、主に次の2点が明らかになった。 A校は、地方の都市部にある中学校である。A校では、「ユニット型授業研究」が実施されていた。これは、学年をまたいだ数人の教員が1つのユニットを形成し、学期に1度ずつユニット内の教員が授業研究を行い、この授業を他のユニット教員が参観して、ユニット単位で事後の検討が行われるものである。A校では、学校運営協議会委員や、一部の生徒が、この「ユニット型授業研究」の事後の検討に参加していた。A校の学校運営協議会では、主に、委員と教員が取り組んでいる学力向上を含めた3つの取り組みの現状と改善策がワークショップ形式で話し合われていた。また、一部の生徒が、学校運営協議会に参加し、取り組みの問題点や改善策の話し合いに加わっていた。このようにA校では、コミュニティスクールでの取り組みを含めた様々な学校経営上の方策が、生徒の学力の高さに影響を与えていることが推察された。しかし、この仮説を証明しうる証拠を未だ十分に入手しえていないので、2017年度も、A校の調査を継続する。 B校は、A校と同じ市にありながら、山間部にあるごく小規模の中学校である。観察や聞き取り調査の結果、この中学校では、単親で経済的には就学援助を受けている家庭の割合が比較的高いものの、それらの家庭では、3世帯同居が多く、生徒は比較的手厚い養育を受けていることがわかった。B校では、このことが、生徒の学力の高さに影響を与えていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度の主な目標は、「効果のある地域運営学校」における質的調査を行うことであった。この点については、研究実績の概要で記したように、研究は概ね順調に進展していると言える。 先行研究の検討については、当初予定していた「効果のある学校」研究の知見を保護者・住民の学校運営への参加の観点から検討することや、学校経営参加機関に関する研究を、社会経済的背景の格差の克服の観点から検討することは、やや遅れている。 ただし、全国学力・学習状況調査の結果を見直した結果、地域連携の取り組みを含めた、学校による各種取り組みの実施の程度と、児童生徒の学力の間には、ほとんど相関がないことが明らかになった。そこで、共同研究者との議論の結果、学力を、学力・学習状況調査の正答率で測れる数値に限定せず、より広義に解釈することになった。すなわち、学力を、汎用的能力などを含めた広い概念として捉えていくこととなった。このように、先行研究についても、徐々に進展してきている。
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Strategy for Future Research Activity |
①2017年度には、調査対象を「効果のある地域運営学校」6校から4校に絞り、さらに観察や聞き取り調査を継続して実施する。そのことを通して、家庭の経済的な困難による低学力を克服することが可能になっている要因と、そうなるに至った運営過程を解明する。 ②「効果のある学校」研究の知見を保護者・住民の学校運営への参加の観点から検討する。 ③学校経営参加機関に関する研究を、社会経済的背景の格差の克服の観点から検討する。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた理由としては、調査予定の学校が自然災害の影響をうけたり、年度替わりに校長が交代したり、共同研究者が多忙であったりして、十分に訪問調査を実施することができなかったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に訪問することができなかった分を含めて、2017年度に訪問調査を実施するために、助成金を使用する。
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