2017 Fiscal Year Research-status Report
子どもと親の学びを生み出す発達資産としての生活体験を育む「地域家庭教育支援」
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15K04309
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
永田 誠 大分大学, 教育学部, 准教授 (50435369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 景三 佐賀大学, 学校教育学研究科, 教授 (30193824)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生活体験 / 発達資産 / 幼児の育ち / 親の学び / 地域家庭教育支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,研究分担者1名(上野景三)と連携研究者2名(大村綾,菅原航平)の計4名の共同研究グループにて調査研究を進めた。これまでの2年間の研究成果等に基づき,本年度は以下の3点についての調査研究等を実施した。 1.定期的な研究会の開催:研究分担者・連携研究者と①家庭教育・子育て支援に関する先行研究分析,②当該研究に関する進捗状況の共有,③研究成果に関する検討のための研究会を合計8回にわたって開催した。特に,平成29年度においては,質問紙調査結果に対する詳細な分析と保育所等における親の保育参画に対する実践分析調査の検討を重ねた。 2.質問紙調査に関する分析と研究成果の報告:前年度から継続して,幼児の保護者に対する質問紙調査結果について,より詳細な統計的分析を行い,学会発表・論文投稿を行った。そこで得られた知見としては,①幼児の日常生活と親・家庭生活は,園ごとに位相が異なっており,その要因に,子育て家庭を取り巻く「発達資産(Developmental Assets)」の形成状況が関連している,②幼児の日常生活と親の子育て意識は,就園後,一定の変容を見せる,の2点であった。したがって,保育実践が親の子育てに対する親の学びの過程としての役割を有することが明らかとなった。 3.実践分析調査の実施と研究成果の検討:上記2の知見に基づき,質問紙調査協力園の内,特徴的な結果を示した2園を対象に,幼児の「育ち」と親の「学び」を支援する保育実践についての実践分析調査を実施した。特に,子どもの生活体験やその基盤となる「発達資産(Developmental Assets)」を形成するための一つのキーワードとして,「親の保育参画」に着目した。具体的には,a)クラス別保護者懇談会における親の語りの分析とb)親の保育体験を通した変容に関するインタビュー調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度においては,①前年度までの研究において,追加の調査研究・分析を実施したこと,②当初の計画では,実践分析調査を平成28年度後半期から平成29年度前半期にかけて実施する予定であったが,親の保育参画を通した子ども理解ならびに親子の生活改善の変容は,年間を通じた保育実践の過程で変容・向上することが予測されたことから,平成29年度1年度間を通して実施することに計画を変更した。 そのため,当初は平成29年度後半期に計画していた実践分析調査に関する研究成果報告ならびに本研究全体の研究成果報告書の作成のための期間を確保するために,研究期間を延長することに至った。ただ,調査実施時期の変更はあったものの,調査内容ならびに予定していた成果報告(学会発表ならびに論文投稿)は,概ね計画通りに進行している。 具体的には,クラス別保護者懇談会における親の語りの調査においては,調査期間を平成29年度に変更したことにより,同一クラスならびに親を対象に,新年度当初(5月)―中間期(10月)―年度後半期(3月)の年間を通じた調査を実施することができ,年間を通した親の保育参加による語りの変容を捉えることができた。また,親の保育参加を通した気づきの変容過程の調査では,調査期間を変更したことで調査対象者を増やすことができたことで,より精緻な実態把握につながった。したがって,研究成果としても,当初の到達点を超えた知見を得ることができ,本研究課題の進展においては有益なものであった。 以上の理由から,本研究の達成度としては,「(3)やや遅れている。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
期間延長した平成30年度においては,前半期に,前年度に実施した実践分析調査の分析ならびに研究成果報告を進めるとともに,後半期には研究成果報告書の作成と成果報告会の開催を予定する。 前半期の実践分析調査の成果報告については,9月の日本生活体験学習学会第20回研究大会での学会発表を予定している。また,論文としても,日本生活体験学習学会学会誌等への投稿を予定している。後半期には,まず総括的な研究成果報告として,共同研究者とともに報告ならびに論文投稿を行う予定である。 その上で,これまで4年間の研究成果をまとめた研究成果報告書を発刊する予定である。研究成果報告書は,調査協力園ならびに同分野の研究者・関係機関等あわせて100ヵ所程度に送付し,今後の研究に対する示唆を得るために活用する。さらに,この研究成果報告書等をもとに研究成果報告会を開催することで,研究成果を社会的に発信するとともに,今後の継続研究における示唆を得ていきたい。 研究期間終了後には,本研究で実施した質問紙調査は,今後も縦断的調査として継続する予定であるため,経年変化を検証するデータとして活用可能なものとして,研究代表者の管理・責任のもと厳重に保管していく。 なお,上記の研究推進に関する経費については,前年度までの予算に研究成果の報告関連費用を計上しており,予算執行にも問題はない。
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Causes of Carryover |
平成29年度は,前年度生じた残額については,ほぼ計画通り,支出することができた。 しかし,①前年度までの研究において,追加の調査研究・分析を実施したこと,②実践分析調査を平成29年度1年度間の期間にて実施すること,の2点の変更から研究成果報告等に関する予算に残額が生じた。 期間延長した平成30年度においては,前半期に,前年度に実施した実践分析調査の分析ならびに研究成果報告を進めるとともに,後半期には研究成果報告書の作成と成果報告会の開催を予定している。 したがって,生じた次年度使用額については,研究成果報告に関する必要経費として計画的に確保したものであり,その使用ならびに計画についても,概ね計画通りの使用額として適切に執行できる予定である。
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Remarks |
講演①:菅原航平「幼児期の育ちに大切なこと」兵庫保育園保護者対象講演会,2017年6月3日10:30~11:30(兵庫保育園年少・年中保育室) 講演②永田誠「気付いていますか?如水のふしぎな子育て―もし如水こども園の親子が100人だったら・・・」如水こども園親講座,2017年12月12日19:00~21:00(如水こども園ホール)
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Research Products
(7 results)