2016 Fiscal Year Research-status Report
全国教研における組合執行部・講師団・現場教員の関係性の構築とその変容に関する研究
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15K04372
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Research Institution | Saitama Gakuen University |
Principal Investigator |
布村 育子 埼玉学園大学, 人間学部, 准教授 (70438901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨士原 雅弘 日本大学, 国際関係学部, 准教授 (30339238)
太田 拓紀 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (30555298)
岩田 考 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (60441101)
植上 一希 福岡大学, 人文学部, 准教授 (90549172)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本教職員組合 / 教育研究全国集会(大会) / 日教組講師団 / 教育運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には主として第一回全国教研を中心に研究を行い、組合執行部の役割や、講師団の編成、全国教研のレポートの選定過程を、一次史料をもとに明らかにすることができた。平成28年度は、同様の手法を用いて、第2回から第4回までの全国教研を対象として研究を行った。研究は以下の4点を中心にすすめた。1.日本教職員組合(以下、日教組)所蔵史資料の検討と分析、2.関連文献・史資料の収集吟味、3.聴き取り調査の実施、4.全国教研のレポートの整理と分析である。 1.については、前年同様1950年代の教文部、総務部、組織部の史料を中心に検討を重ね、中央執行委員会の議事録と配布プリントの吟味は重点的に行った。第2回以降の全国教研は、文部省の政策等との関連も高かったため、一次史料の分析にあたっては、政治的な背景を視野にいれておこなった。2.については、1同様に、1950年代の政治や社会状況を説明する学術書、労働組合に関する学術書も収集した。講師団については、平和問題談話会のメンバーとの関連性が高いため、参加学者に関する文献・資料等も収集した。3.については、兵庫県と福島県の単組を訪ねて、所蔵史料の確認と現在の執行部より概略的な説明を伺った。4.については、分科会のテーマごとにレポートを整理し、具体的な分析を行った。 以上の1~4の成果は、第75回日本教育学会(北海道大学)及び日本大学研究発表会で発表した。また、その成果の一部を学術論文にまとめた。各メンバーとはメールでの情報交換だけでなく、研究会を定期的に開催することで各自の研究の進捗状況を共有し、その成果を議論しながら新たな課題を明確化した。学会発表前には二泊三日の合宿を行い、客観的な視点を担保するために専門的知識を有する研究者を招聘し、発表内容の検討、内容の精査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画で本研究は、1980年代までの全国教研を対象にしていたが、平成27年度の研究を踏まえて、3年間の研究で1950年代と1960年代を重点的に行う研究として変更した。これは、分析対象とする史料が膨大であることと、組合執行部、講師団、現場教員の関係性の基本的な枠組みを読み取るためには、年度毎に丁寧な分析が必要と考えたためである。この変更によって、平成28年度は平成27年度に引き続き、1950年代の全国教研、具体的には、第2回から第4回の全国教研を丁寧に分析することができた。 平成28年度に明らかになったのは以下の点である。1、全国教研を開催するための日教組中央の組織編成及び教文部の役割は、場の設定役に限定されていた。2、全国教研の中央講師団の選定方法と全国教研の分科会のテーマ設定の過程は、概ね講師団に任されていた。第4回に至っては、細かなテーマ設定を組合員からのアンケートによって決定しようとしたが、それは運営上の理由によりうまくはいかなかった。3、単組、支部を経て、全国教研で発表されるレポートの選定過程には、単組ごとの取組まれ方があった。これは第一回と変化はなかった。4、全国教研で発表されるレポートの内容は、現場教員の授業に資するような技術的なものが多くなっていった。つまり、初期日教組の全国教研は、一般的に流布されている様な、ある種のイデオロギーに偏向するようなものではありえず、組合員の研究発表の場、という性格が強調された場であった。しかしながら一方では、「特別委員会」という場も設けられており、そこでは政治状況に対抗する組合論的な事項がテーマとなっていたということも明らかになった。 平成28年度も、前年同様、得られた知見を学会発表と論文において公表することができた。そのため「おおむね順調に進展している」と自己評価をした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究を踏まえ、平成28年度は、第2回から第4回の全国教研を研究対象に据えて研究を実施して来た。平成29年度は第6回までの全国教研を丁寧に分析する予定である。第6回全国教研は、教科別の分科会が確定された集会であった。全国教研が開催当時に目指した、政治、社会、経済の関係から教育を考えるという理念が、第6回では変容していたことになる。この背景にはどのような力学があったのか、またこの変容の結果、組合執行部、講師団、組合員の関係はどのように変容したのか、これを明確にするのが、平成29年度の目標である。つまるところ、この変容の過程を、第1回から通史的に整理することで、初期全国教研の性格が明らかに出来るものと考えている。 現在の課題は、各単組のレポート収集である。古い史料のために、各単組で処分している史料が多く、有効な史料をまだ得られていない状況である。引続き研究分担者とともに探索を続けるつもりである。さらには、1940年代後半から1960年代までの民間教育団体が発行する雑誌等を用いてレポートの性格をつかむという方法も実践してみるつもりである。 平成29年度は本研究の最終年度でもあり、これまでの研究成果を報告書としてまとめることも目標である。そのために学会発表は行わず、各メンバーが各研究テーマに専念できるようにした。ただし、各自の研究成果を共有し協議する機会は必要であるため、定期的な研究会及び報告書作成のための合宿を予定している。各メンバーの所属機関が各地に分散しているため、頻繁に研究会を開くことはできないが、メール等を活用し情報交換をする予定である。 平成27年度、平成28年度は、単発のアルバイトを雇い資料等の整理を行った。平成29年度においても基本的な作業は各メンバーで行いながら、これまで同様に資料等の整理はアルバイトに委託する予定である。
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Research Products
(3 results)