2016 Fiscal Year Research-status Report
移民第二世代の母語・継承語の資産性に関する国際比較研究
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15K04379
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
拝野 寿美子 神奈川大学, 人間科学部, 非常勤講師 (30747001)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 継承語としてのポルトガル語 / 在外ブラジル人 / 在日ブラジル人 / ブラジル人女性移住者 |
Outline of Annual Research Achievements |
母語・継承語としてのポルトガル語の資産性に関する国際比較研究を実施しているが、2016年度は2015年度(初年度)に行った調査結果を発信することに重点を置いた。そのなかで、教育支援者にとっての「資産性」については、一定の成果を見いだすことができた。継承語としてポルトガル語を教えるという行為は、教育実践者であるブラジル人女性移住者のエスニック・アイデンティティ(brasilidade)を強化したり、移民としてホスト社会で生きていくこと、つまり異文化間性(interculturalidade)を肯定的に捉えることに通じていることがわかった。これは継承語教育が与える教育支援者への個人的な資産性といえるが、この資産性が教育支援者にとどまることなく、学習者であるブラジル人の子どもたちやその家族、ホスト社会の複言語化、複文化化につながる可能性を見いだすこともできた。
調査、および研究成果発信については具体的には下記の通りである。 2016年度は、国内調査を4回(大阪府大阪市、愛知県岩倉市、群馬県大泉町、静岡県浜松市)にて実施し、海外調査を1回(ブラジル)実施した。また、研究成果報告として、日本語による論文を1本(神奈川大学紀要、2017年3月発行)執筆した。さらに、研究成果を含めた内容の教科書(『ブラジルの人と社会』上智大学出版2017年4月刊行予定)の共編著の執筆も行った。口頭発表としては、日本移民学会で日本語による個人発表を6月に行った他、11月にブラジル・サンパウロ人文科学研究所において日本語による発表を、同じくブラジル・バイア連邦大学(SIPLE:外国語としてのポルトガル語国際学会)でポルトガル語による発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ブラジルに帰国した青年への調査が、ブラジル渡航後先方の都合によりキャンセルされたため、思ったように進捗していない。継承語としてポルトガル語を習得した当事者への調査に関して、欧米在住の対象者が幼少であることが多いため適切なインフォーマントになかなかたどり着けないのが現状である。 これまで具体的には教育支援者や学習者といった「当事者」への調査を行ってきたが、「継承語としてのポルトガル語教育」研究の第一人者である在英ブラジル人研究者とのコンタクトもとれていることから、当該研究者への面談も視野に入れインフォーマントにつながる具体的な情報を得る必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は最終年度であるため、2016年度に口頭で行った研究報告を日本語、ポルトガル語で研究誌に投稿するほか、できれば英語に翻訳することで、より多くの研究者の目に触れるようにしたいと考えている。調査については、インフォーマントを早い段階で確定して海外調査にのぞむ予定である。国内に関しては、静岡県浜松市の調査を拡大する予定である。 申請にあたって研究計画を立てた段階では主要な調査地として米国のポルトガル語教育機関を考えていたが、初年度に欧州における教育機関およびその主宰者たちとの人脈ができたことにより、予算も考慮しつつ、最終年度は欧州の教育機関への調査や在英ブラジル人研究者との面談を計画している。
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Research Products
(5 results)