2016 Fiscal Year Research-status Report
構図・構成・レイアウトの心的メカニズムによる理解とその指導
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15K04392
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
新井 義史 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (10142762)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 構図 / 構成 / レイアウト / 情動性 / 視覚心理 / 絵画 / 鑑賞 |
Outline of Annual Research Achievements |
「構図」「構成」「レイアウト」のベースには共通する美的形式原理がある。それは人間の生理的メカニズムによるものであるが、原理生成の由来までは一般に理解されていない。本研究は、諸心理学、音楽美学、造形芸術論等の文献により、恒常性や力動性、情動やゲシュタルトの観点から美的原理や造形性のとらえ直しを行う。また、その内容を理解しやすく解きほぐしたベーシック・テキストを作成する。さらにiOSアプリを試作し試行することにより、学校美術における構成教育の効果的な指導方法を検討するものである。本年度は、研究2年度として以下の2点を中心におこなった。 (1)前年度の、文献による美的原理の整理・検討を用いて「構図」「構成」「レイアウト」の3領域を一元的に理解可能なテキストの作成を目指した。 ①「抽象絵画の構造理解(図版解説版V1)(2016)」は、2016年12月実施の講義の際に配布した解説テキストである。その講義記録VTR と併せてWEBページにアップロードした(PDF12ページ1.7mb)。 ②「構成的観点によるコンポジションの心的理解―造形用語を活用した絵画構造の検討―」『芸術・スポーツ文化学研究3』(芸術・スポーツ文化学研究会編:A5版17ページ)を発表した。これは、絵画の画面構造の多層性の観点から作品特性を明らかにした内容である。 (2)iOSアプリの大学生へのトレーニングを試みた。iPadには、絵画、写真、動画、レイアウトに関する多様なアプリがすでに存在する。しかし、まだ「絵画教育」や「構成教育」において有効に活用されているとは言い難い。そこでiPadの既成アプリ別の使用解説を作成し、それをもとにステップを追ったトレーニングを行った。その成果は「iPadグラフィックアプリ活用事例(PDF18ページ 4.5mb)」にまとめてWEBページにアップロードした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)理解のための「ベーシックテキスト」は50ページまでの原稿作成が完了した。しかし計画していたテキスト<試作版>の印刷製本までには至らなかった。なお、研究計画書の段階では、印刷所に依頼する必要があると考えていたが、小ロットであることから、コピーでも可能であると考えている。 (2)トレーニングのためのiOSアプリの自作は相当困難であることが分かった。その代わりとして、既成のアプリを活用することで類似した成果が期待できると考えている。したがって、今年度実施したiPadアプリを用いた活用を、次年度にはさらに継続発展させたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度は28年度に未達成であった「構図」「構成」「レイアウト」を一元的に理解しうるテキスト作成ならびにiPadグラフィックアプリのトレーニング方法の検討を推進する。 (1)解説テキストの内容としては、項目別に諸研究者の文献を集約した詳細内容と、平易な図版を多用した入門者向けを組み合わせて作成する必要があると考える。第二次大戦後の抽象系作品は著作権の関係から、図版掲載に支障あるものが多い。そのために新規図版作成や学生による制作物を用いることになる。テキストはDTPアプリケーションを用いて全てのレイアウトを行う。試作用としてはテキストを印刷所に発注することなくプリンターで出力し、必要分をコピーで増刷りすることとしたい。後期の講義においてこのテキストを用いた解説を行い、内容を反映したレポートを回収することで、理解の効果を確認したい。 (2)既成iPadグラフィックアプリの活用方法の検討を行う。ただし、既成iPadアプリには、操作や機能を理解するための使用説明が不足していることから、試行にあたり効果的な使用解説書を作成することから始める必要がある。美的形式原理の理解および作品分析トレーニングのためのiPadアプリ活用に、「視て、触って、動かす」といった体験的手法が有効であると考える。そのための有効な方法を試行を通じて検討したい。
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Causes of Carryover |
旅費及び謝金使用が計画とは異なった。 (1)旅費の使用に関しては、2度計画したものが1回となったため。(2)人件費に関しては、アプリ作成に手間取り、アプリ試用に計画していた部分が試行にまで至らなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費および人件費に関しては、次年度も計画より少額で完結する見込みである。その他の経費としてはテキスト印刷を外部発注する予定であった。小ロットプリントの場合には、DTPデータをプリンタにて出力することが可能であるし経済的でもある。したがって、旅費・人件費・その他の経費に関する経費が残る際には、それら経費を物品費に使用する計画である。
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Remarks |
WEBページには、以下のPDFおよび記録VTRをアップロードした。図書:①身体感覚の観点による美的形式原理の理解-抽象絵画の普遍的心理構造の検討-、②構成的観点によるコンポジションの心的理解―造形用語を活用した絵画構造の検討―。その他:①解説テキスト「抽象絵画の構造理解(図版解説版V1)」2016、②解説 VTR「抽象絵画の構造理解」2016、③「iPadグラフィックアプリ活用事例」
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Research Products
(2 results)