2015 Fiscal Year Research-status Report
特別活動におけるコミュニケーション能力の育成に関する指導と評価の在り方
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15K04487
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
高橋 知己 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (50733383)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 特別活動 / コミュニケーション能力 / 指導と評価 / 学校行事 / 学級集団 |
Outline of Annual Research Achievements |
特別活動(合唱コンクール)における生徒のコミュニケーション能力の変容に関する学校現場での調査を実施し,現在その調査結果を分析するとともに論文作成に向け準備中である。分析中の段階であるが,生徒の持つ「学級への満足感」と「学級集団への関与」意識が,学校行事の前後において変容していることが確認されており,コミュニケーション能力が学校行事に大きく影響を受けることが推定される結果となっている。学校生活に変化をもたらす学校行事は,生徒の集団意識にも変化を与えているといえそうである。 また,生徒に対して特別活動の指導を行う指導者の特性を明らかにすることが,教科書のない特別活動という領域にとって重要であることから,特別活動の学習経験と指導に対する不安感について調査し,論文として作成するとともに,その成果を各種学会で公開している。特別活動の学習経験の多寡が,指導に対する不安感に影響を与え,経験が少ないから不安であり,多いがゆえに不安感を感じない内容がある一方で,経験が少なくとも不安を感じない領域や経験が多いにもかかわらず不安感を感じる領域があることが確認されている。特別活動は取り扱う内容や領域が多岐にわたるため,当該領域の専門性をすべて身に付けて指導することは難しい。生徒のコミュニケーション能力や人現関係形成力,実践力を身に付けるために好適な内容であるものの,効果的な指導を行うためには実際の生徒の変容を適切にとらえる評価の方法と指導の在り方についての検討が不可欠であることを提言している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学校現場からの協力を得ることにやや困難な場合もあるが,さらに調査対象を広げるためにも協力を要請しているところである。学校事情によっては,調査の受け入れが困難な場合も想定されるため,広く調査対象校を選定し交渉に当たる必要がある。そのため,実際の調査に関しては,生徒対象のものと教員及び教員志望の学生を対象に行うものと実験計画を慎重にデザインしながら実施することを検討している。これまでの調査で得られた知見については,論文作成や学会発表を通して順次発表していっており,おおむね順調に進展していると考えている。 しかしながら,特別活動は学級のコミュニケーションネットワークの発現の場の一つであり,学校行事等に注目した研究を展開することに加え,そうした活動に影響を及ぼす日常的な学級集団の様子や学級風土についても検討していくことが不可欠である。学校行事に注目するとともに,その基底となる学級集団全体のコミュニケーションの変容にも注目していく必要があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
特別活動を実践する際の指導と評価のためのあり方を検討するためにも,生徒側のコミュニケーション能力の変容とそれに対する教師のアセスメントのあり方について,より分析的に検討していく必要がある。学校行事の前後における教師の生徒に対する認識の変容について,複数の学校行事をとりあげながら質的な分析を加えて検証していくことを計画している。 特別活動におけるコミュニケーション能力の変容は,生徒指導にも大きな影響を及ぼすことが考えられ,「いじめ」や「学級経営への障害」を引き起こしかねない。そこで,コミュニケーション能力を支えるための学級経営やいじめ防止といった点にも注目してコミュニケーション能力の評価やアセスメントを計画している。特に,発達段階はコミュニケーション能力の変容にも大きな影響を及ぼすことが考えられるため,小学生段階から高校生までの各年代に注目して集団感や他者への意識に関する調査を実施したいと考え検討中である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,当初調査協力校に謝金を支払う予定だったものが,固辞されたことによることと,想定された物品費が安価に入手できたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
量的調査に加え記述分析など質的調査を今後さらに実施する過程で,分析に要する人件費等の経費が必要になってくるため,次年度使用額を活用していきたいと考える,また質的分析に必要なソフトをより精緻な分析ができるものにしていきたい。研究を推進する過程でさらに深化拡充することを計画しており,より効果的に使用するように配慮したいと考えている。
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