2016 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害児を対象とした書く力の評価システムの開発に関する研究
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15K04544
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
澤 隆史 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80272623)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 聴覚障害児 / 作文 / 評価 / テキストマイニング / 言語要素 / 印象評定 / 聾学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、聴覚障害児の書いた文章の計量的分析結果と教員による評価結果との関連性を分析し、聴覚障害児の書く力の評価方法を開発することを目的としている。平成28年度は、以下の3点について分析・検討を行った。 (1)聾学校児童および生徒が書いた計89編の作文を対象に、50項目の言語要素についての使用頻度や使用割合等を測定し、作文の分類を試みるとともに、複数の評価者による印象評定の結果との関連を分析した。その結果、言語要素の使用傾向の違いが作文の評価に関連することが示唆されたが、言語要素のみからの評価の信頼性については検証が必要であることが分かった。 (2)聾学校教員への書く力の評価に関するアンケートを実施した。69項目の観点について小学部から高等部の教員約450名からの回答を分析した結果、作文の評価は7つの観点に集約されることが明らかになった。また小学部低学年と高等部については、評価観点が大きく異なることが示された。特に小学部低学年では、基本的な文の記述力を、高等部では文章全体の構成力を重視することが示された。 (3)小学部高学年と中学部の作文について、聾学校教員による評価と言語要素の使用傾向との関連を検討した。聾学校児童生徒の書いた作文48編について7つの観点から評価させるとともに総合的評価を行った。その結果、総合的評価は各分析的観点からの評価と強く関連することが示された。また言語要素の分析結果から、特に誤りの程度が評価に強く関連するとともに、使用語彙の豊富さ、モダリティの使用頻度が関連すること等が示唆された。 以上のうち、(1)と(2)については、日本特殊教育学会第54回大会および論文にて発表を行った。なお(3)については平成29年度開催の特殊教育学会において発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究によって、作文評価に用いる言語要素をほぼ確定でき、また印象評定による評価の観点についても明らかとなった。さらに分析用のプログラムについても部分的に完成することができた。以上より、28年度に予定していた研究計画はほぼ遂行できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、評価の対象とする作文量を増やすとともに、評価に使用できる言語要素の絞り込みと集約を行う。さらにその結果に基づいて、言語要素の使用傾向から作文を評価する方法について、具体的な試案を提示する。なお研究結果については、学会発表および論文の形式で公表する予定である。
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