2017 Fiscal Year Research-status Report
個々の有機分子を自己組織的に配列させた超高密度記録媒体の試作
Project/Area Number |
15K04630
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 孝将 福岡大学, 工学部, 教授 (10580178)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳生 数馬 福岡大学, 工学部, 助教 (90609471)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノ表面・界面 / 走査トンネル顕微鏡 / 有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Ge/Si(001)表面上に有機半導体である3,4,9,10 perylene tetracarboxylic dianhydride (PTCDA: C24H8O6)分子を個々に自己組織化させて、1個のPTCDA分子が1ビットに相当する様な超高密度記録媒体の原理実証プロトタイプを試作する。 平成28年度までに、Ge(001)清浄表面上に室温でPTCDA分子を少量吸着させて、その化学吸着構造を走査トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscopy: STM)で詳細に調べた結果を論文にまとめて英文誌に投稿した。また、石英坩堝を使用した小型のGe蒸着装置を製作してSTM装置に組み込みGe蒸着テストを行った。 平成29年度は、Ge蒸着装置の石英坩堝が熱膨張で割れる現象が頻繁に発生したため、アルミナ坩堝を使用する様に改造した。蒸着装置の坩堝が割れるたびに真空装置を大気圧ベントして坩堝を交換してベークを行ったため、想定外に時間がかかった。その後、Ge/Si(001)ミッシングダイマー列を作製して、PTCDA分子を少量吸着させたところ、予想に反して分子がミッシングダイマー列に沿って規則的に化学吸着する自己組織化が起こらず、ランダムに吸着することが分かった。そこで、分子をPTCDAから基板表面との相互作用が弱いペンタセンへ変更して、同様の実験を行ったが、ペンタセンでも予想に反して自己組織化が起こらなかった。 また、イギリスのウォーリック大学とドイツのデュイスブルク・エッセン大学との共同研究で、極低温で超電導になることが報告されているSi(111)-√7×√3-In表面のIn吸着量と表面構造を光電子分光(X-ray Photoemission spectroscopy: XPS)とSTMと第一原理計算により調べて論文にまとめ、英文誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験計画では、平成29年度までに、PTCDA分子をGe/Si(001)上に規則配列させて、分子のスイッチング動作をさせる予定であった。しかし、平成27年度に福岡大学の学内資金による特別招へい外国人研究者が研究室に滞在して優先的に実験装置を使用したので、Ge/Si(001)表面上での実験より先にGe(001)清浄表面上でのPTCDA分子の吸着構造を調べる実験を行った。また、平成28年度は研究代表者がイギリスのウォーリック大学へ在外研究に行き、Si(111)-√7×√3-In表面上のTCNQ分子吸着の研究をドイツのデュイスブルク・エッセン大学と共同で行った。さらに、平成29年度末に当該研究室が入居する老朽化した福岡大学工学部4号館が立て替えられて、新棟への引っ越しが行われたために2カ月強の間実験を行うことが出来なかった。また、Ge蒸着装置の石英坩堝が熱膨張で割れる現象が頻繁に発生するトラブルが起きた。それらの当初の想定外の事態があったので、本研究課題の進捗状況はやや遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は、概ね研究計画に沿って行う予定である。Ge/Si(001)表面にPTCDA分子やペンタセン分子を少量吸着した場合には、分子がミッシングダイマー列に沿って規則的に化学吸着する自己組織化が起こらなかったので、吸着量を増やして規則配列が出来るかどうかを調べる予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)当初の研究計画では、STM装置への騒音ノイズを遮断するために300万円程度の防音室を設備備品として購入する予定であった。しかし本科研費の提出締切後に、該当研究室が入居する老朽化した福岡大学工学部4号館の建替えが急遽決定された。その関係で、建替え後に移設困難等の理由で防音室が数年で使用不可になる事態を避けるために、防音室の購入の是非を検討していたので、次年度使用額が生じた。 また、平成28年度に福岡大学から年度をまたいで繰越し不可能な想定外の研究費が別途支給され、そちらを優先的に使用していたことも次年度使用額が生じた理由である。
(使用計画)平成29年度末から平成30年度初めにかけての工学部4号館新棟への引っ越しが完了したので、今後は新棟での我々の実験室の防音性能を検証して、引き続き防音室の購入の是非を金額的に可能かどうかも含めて検討する。もし防音室を購入しない場合には、分子薄膜や金属薄膜を作製するための蒸着装置と膜厚計と抵抗加熱用定電流電源を購入する計画を検討している。
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Research Products
(8 results)