2016 Fiscal Year Research-status Report
高電子移動度を有する窒化スカンジウム薄膜へのキャリアドーピングに関する研究
Project/Area Number |
15K04684
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大垣 武 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点 電気・電子機能分野 電子セラミックスグループ, 主任研究員 (80408731)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 窒化スカンジウム / 薄膜 / 分子線エピタキシー / 電気特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、高い電子移動度を有するn型半導体である窒化スカンジウム(ScN)のキャリア制御を試み、新しい窒化物半導体材料としての可能性を検討することを目的としている。本年度は、分子線エピタキシー法(MBE)による再現性の高い、高品質なノンドープ薄膜の合成、及び、その物性評価を行った。さらに並行して、合成したScN薄膜にラジカル照射処理を施すためのラジカル照射装置の改良、その装置を使用したScN薄膜のラジカル照射処理を実施した。 MBE法によるScN薄膜の合成に関しては、サファイア単結晶m面、r面を成長用基板とした薄膜の合成・評価を実施し、それらの成長様式を明らかにした。さらに、その特徴を利用して、昨年度よりも、高結晶性、高移動度の薄膜を得ることに成功した。来年度は、本年度に得られた合成手法を用いて、ドナーであるシリコン(Si)、アクセプタであるマグネシウム(Mg)をドープしたScN薄膜を合成し、その物性評価を進める。 ラジカル照射処理に関しては、試料加熱機構の導入に伴い、真空チャンバーに改良の必要性が生じたため、水冷機構、熱遮蔽板の追加などの改良を実施した。改良したラジカル照射装置を用いて、MBE法で合成したScN薄膜の窒素ラジカル照射処理、水素ラジカル照射処理を実施し、ラジカル照射による薄膜のキャリア濃度、移動度の変化を確認することに成功した。来年度は、ラジカル照射条件を検討し、合成したScN薄膜のキャリア濃度、移動度の制御を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薄膜合成に関しては、Si、Mgを供給する機器のメンテナンスのため、若干の遅れが生じているが、ドーピング試料作製のために必要な合成プロセスは確立している。 ラジカル照射処理に関しては、試料加熱機構の導入に伴う真空チャンバーの改良が終了し、すでに、合成した薄膜試料のラジカル照射処理を実施している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り、本年度に得られた高品質ScN薄膜の合成プロセスを利用して、ドナーであるSi、アクセプタであるMgの添加を試み、キャリア制御の可能性を検討する。さらに、それらの試料をラジカル照射装置を用いて処理し、ラジカル照射によるキャリア制御の可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
薄膜合成装置のメンテナンスが必要になったため、当初の計画よりも、薄膜の合成回数が少なくなった。その結果、薄膜合成に必要な消耗品代が計画よりも少額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
薄膜合成に関しては、若干の遅れが出ているが、来年度も引き続き合成実験を継続するため、当初の計画通り、薄膜成長用基板、原料、坩堝などの消耗品代として使用する。
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