2015 Fiscal Year Research-status Report
中性子回折法の鉄筋コンクリート構造力学研究への展開
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15K04738
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
秋田 貢一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, リーダー (10231820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 裕士 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (10373242)
楠 浩一 東京大学, 地震研究所, 准教授 (00292748)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中性子回折 / 鉄筋コンクリート / 付着 / 応力測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、低波長の得られる高強度モノクロメータを開発するとともに、多重度因子を考慮した最適測定条件を見出すことにより、角度分散中性子回折法による鉄筋コンクリートの付着力測定の精度向上を目指している。平成27年度は、具体的には以下に示す成果を得た。 1.大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設(MLF)にある工学材料解説装置(TAKUMI)により測定した鉄筋コンクリートのひずみ分布測定結果について、回折面ごとにひずみ分布を整理した結果、211回折よりも高次の回折面(多重度因子が24以上)を用いることで、測定精度の向上が望めることを明らかにした。 2.前項で得られた知見に基づき、日本原子力研究開発機構の研究用原子炉JRR-3に設置されている中性子応力測定装置RESA-1において、211回折よりも高次の回折面のひずみ測定を、90度よりも低い回折角度で実現できる高強度モノクロメータシステムの基本設計を完了した。具体的には、モンテカルロシミュレーションや理論計算を用いることにより、上記性能を満足できるモノクロメータ結晶のサイズや方位、集光方法などを決定した。その結果、(1)Si(400)の利用、(2)Si110晶帯を利用した波長範囲の拡大、(2)0.7mm厚さのシリコンウエハを15枚積層した積層型結晶の利用、(3)縦横の集光制御の実現などにより、1.7Å以下の波長の中性子線が得られるとともに、現行のモノクロメータシステムの2倍から2.5倍の中性子強度が期待できるモノクロメータシステムを設計・製作した。 以上に示した研究成果により、RESA-1においても211回折よりも高次の回折面のひずみ測定を90度以下の回折角度で実現できる環境が整備され、本研究目的でもある鉄筋コンクリートの付着応力度測定の高精度化が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、J-PARCや理研小型中性子源RANSを含めた国内の中性子実験施設が利用できる状況になかったため、当初予定していたRANSを利用した実験的な性能評価ができなかった。そのため、モンテカルロシミュレーションや従来理論計算などを用いることで、モノクロメータシステムの基本設計を完了した。開発したモノクロメータシステムの実験的検証については、平成28年度に実施することとし、本システムの性能評価ならびに問題点の抽出と改善に取り組み、モノクロメータシステム開発を完了する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、理化学研究所の小型中性子源RANSを用いて、平成27年度に設計・製作したモノクロメータシステムの性能評価を行う。平成27年度にRANSが使用できなかったのは施設移転のためであり、平成28年度は利用可能である。RANSで得られる中性子線を利用することで、(1)波長の選択範囲、および(2)製作した集光機構により十分な強度の中性子線が得られることを確認する。以上の実験的検証により、開発したモノクロメータシステムの問題点の抽出とその改善を図るとともに、現行のモノクロメータシステムとの性能比較を行う。平成29年度には、開発したモノクロメータシステムをJRR-3の工学回折装置RESA-1に導入し、中性子強度や装置分解能など、所要の性能を満たしていること、さらに実際の鉄筋コンクリートの引き抜き付着試験により、高精度付着応力測定のための最適測定条件を見出す予定である。しかし、JRR-3の再稼働の目途が立たない場合には、海外の研究炉を代替手段として、鉄筋コンクリートの引き抜き付着試験のみを行うこととし、海外炉で実施可能な範囲でひずみ測定精度に及ぼす多重度因子の影響について検討する。ここで得られた知見をもとに、角度分散法による鉄筋コンクリートの高精度付着応力測定のための最適測定条件を提案することとする。
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Causes of Carryover |
平成27年度に予定していたモノクロメータシステムの性能評価実験を次年度に変更したことに伴い、それに必要な実験消耗品の購入を平成28年度に変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
モノクロメータシステムの性能評価に用いる模擬結晶(銅プレート)やひずみゲージなどの実験消耗品の購入に充てる。
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