2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K04780
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
星 裕一郎 京都大学, 数理解析研究所, 講師 (50456761)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Grothendieck予想 / 双曲的多重曲線 / p進Teichmuller理論 / 休眠乍 / 当分点 / 有限平坦可換群スキーム / 対数スキーム / 狭義射 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、研究実施計画で述べた「(1)一般次元の双曲的多重曲線に対するGrothendieck予想の解決」に関して、この研究の当初の着想から、適当な「一般的条件」を満たす双曲的多重曲線に対する相対版同型版Grothendieck予想の成立を確認することができた。一方、完全に一般的な双曲的多重曲線に対するGrothendieck予想は、たとえ相対版同型版でも、まだ証明できていない。 2、研究実施計画で述べた「(2)双曲的曲線上の冪零許容固有束や冪零通常固有束の超特異因子の明示的表示」に関連した研究として、標数pの射影的双曲的代数曲線の上の階数p-1の休眠乍の一意性を証明した。(論文投稿中)標数3の場合のこの一意性は、標数3の場合に実際に行った超特異因子による冪零許容固有束や冪零通常固有束といったp進Teichmuller理論の中心的対象の明示的な記述の研究の出発点となる事実であった。 3、研究実施計画で述べた「(3)単遠アーベル的復元アルゴリズムの数論に対する応用」の実現を目的として、そのような応用の現時点での数少ない成功例と考えられる「宇宙際Teichmuller理論」の理解をより深めるために、理論の概観をまとめた解説論文を作成した。(論文投稿中) 4、射影的双曲的代数曲線をJacobi多様体に埋め込むことで、「曲線の上の当分点」という概念を考えることができる。およそ30年前に、Coleman氏は、この当分点の分岐に関する予想を立てた。有限平坦可換群スキームの古典的な理論などを応用することで、この予想に関するある結果を得た。(論文投稿中) 5、与えられた対数スキームに対して、その上の対数スキームたちのなす圏によって元々の対数スキームが復元されるという事実が、望月新一氏によって証明されている。中山能力氏との共同研究によって、対数スキームの狭義射の特徴付けを経由する形で、この事実の別証明を与えることに成功した。(論文投稿中)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「一般次元の双曲的多重曲線に対するGrothendieck予想の解決」の研究において、すべての双曲的多重曲線に対する予想の解決には至らなかったが、しかし、充分一般的な場合における成果が得られたことには一定の意義があるように思われる。また、研究の目的に記載した「p進Teichmuller理論に登場する様々な概念の明示的表示」に関連する研究である、上記研究実績の概要の「2」で説明された「標数pの射影的双曲的代数曲線の上の階数p-1の休眠乍の一意性」は、当初まったく想定されていなかった事実であり、そのような結果に到達できたことは興味深い。そして、「研究実績の概要」の「4」で説明された当分点の分岐に関する研究、及び、「5」で説明された対数スキームの狭義射の特徴付けや対数スキームの復元など、研究実施計画に組み込まれていなかった研究において成果を上げられたことにも一定の評価ができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の本研究課題の推進方策として、平成27年度の研究実施計画でのテーマの一つであった「一般次元の双曲的多重曲線に対するGrothendieck予想の解決」において残されている課題の研究を継続しながら、研究実施計画に記載されているとおり、Grothendieck予想に関する研究、p進Teichmuller理論に関する研究を行っていく予定である。特に、平成27年度の研究で得られた知見を有効に活用することで、Grothendieck予想に関して「有限体上の双曲的曲線」、p進Teichmuller理論に関して「標数が5以上の場合」といった、当初の研究実施計画に含まれていない場合の研究も可能なのではないかと期待している。
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Causes of Carryover |
研究遂行の際の物品費が当初計画よりも小さくなったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、外国人研究者の招聘のための費用や、あるいは、旅費に充当される予定である。
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Research Products
(12 results)