2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04893
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
WILLOX Ralph 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (20361610)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 離散可積分系 / 超離散可積分系 / 特異点閉じ込め法 / ベックルンド変換 / ダルブー変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度には、初年度の続きで、複素射影平面上の写像の性質を考察し、特に複素射影平面上の双有理写像の可積分性判定について研究を行った。それに関して7月にカナダで開かれた国際研究集会で研究成果を発表し、そちらで集まった専門家と議論した結果、写像の代数的エントロピーという一つの可積分性判定によく使われている量の新しいかつ驚くべき単純な計算方法を見つけることができた。その後、その新しい計算方法の代数幾何学的な意味を解明することにも成功した。それらの結果を発表する論文は、出版済みのものは既に一つあり、もう一つの論文は現在作成中である。さらに、Miura変換と呼ばれる特殊なベックルンド変換を用いて、様々な例外的な形をしている離散パンルヴェ方程式の間の関係を明らかにすることにも成功した。その結果を発表する論文は既に出版済みである。
去年に続けて、2次元の格子上で定義される離散可積分系ついても研究を行い、特に2次元非線形偏差分方程式の簡約として得られる高次写像の可積分性を考察した。 この結果についての論文は既に出版された。
超離散系のCauchy問題については、 まず、昨年度に高橋・薩摩の箱玉系について証明した「rigged configuration」に基づく線形化を、もっと一般的な「運搬車付き箱玉系」へ拡張することができた。さらに、一般の超離散KdV方程式に関する散乱問題の波動関数を厳密に構成し、その波動関数の新しい表現により、束縛状態の数を増やしたり、減らしたりする変換を具体的に記述することができた。それらの結果を発表する2つの論文は現在作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複素射影平面上の写像に関する研究は当初の計画よりずっと早く進んでいる。さらに、去年の夏頃に発見した代数的エントロピーの新しい計算方法は当初の計画で予期しなかったものであり、今後の研究に大きな影響を及ぼすことが期待できる。
超離散可積分系についての研究も計画より早く進んでおり、超離散KdV方程式における散乱問題の波動関数が厳密に構成できることは当初全く予期できなかった大事な進展である。
2次元の離散可積分系の簡約についての研究は計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、昨年度の様々な進展に基づき、まず特異点閉じ込めという性質を持たないけれども、それに近い性質を持つ写像の特異点を研究し、その特異点の特徴により、そういった写像の代数的エントロピーの計算方法を考察する予定である。 さらに、ここまで開発してきた数学的手法や可積分性判定法が2階以上の高次写像にも適用できるかという問題を考察する予定である。
超離散系についての研究も29年度に続けたい。特に、28年度に超離散KdV方程式の散乱問題について得られた結果の他の超離散可積分系(例えば、超離散 sine-Gordon方程式など)への拡張を試みたい。
2次元の格子上で定義されている離散可積分系の簡約についての研究も今年度続けて行う予定である。
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Causes of Carryover |
28年度に購入する予定だった専門書は年度内に購入できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額を29年度に専門書の購入に充てる予定である。
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