2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K04902
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鷲見 直哉 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (50301411)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 解析学 / 力学系 / エルゴード理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,軌道同士の振舞いに関するある局所的な条件から,軌道の存在確率密度に関する次の大域的な性質(1)と(2)を導くことである:(1) すべての軌道の存在確率密度が決まるならば,この存在確率密度は一意的に決まる.(2) 有限時間での軌道の存在確率密度と,無限に時間が経過した軌道の存在確率密度との差は,エントロピーとポテンシャルという2つの値を用いて具体的に表示できる.特に,本研究では,互いに異なる軌道の組に対して,一方の軌道の近くから他方の軌道の近くに移動する別の軌道がある,という局所的な条件のみから上の性質(1)と(2)を導くことを目的とする. 更に,本研究の応用として,次の結果(3)を導く:(3) 稠密な軌道をもつ可微分力学系が,摂動を加えてもその性質を失わないならば, 性質(1)と(2)を満たす. (1)について平成27年度は,3次元以下の多様体について,すべての周期軌道に対して上の局所的条件を満たせば,存在確率密度は一意的に決まることが証明できた.また,3次元以下の多様体について,明記性を満たせば,存在確率密度は一意的に決まることが示せた.これらの結果は,韓国と中国で開催された国際研究集会で講演し,その内容は論文として投稿中である. (3)に関連して,明記性をもつ微分方程式のクラスを考えたとき,幾何学的ローレンツアトラクターはこのようなクラスに入らないことを示した.この結果は論文にまとめて発表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたとおり,3次元以下の多様体について,研究目標を達成することができたため,おおむね順調に進展していると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き,研究実績の概要で述べた局所的条件から,大域的条件(1)と(2)を導くこと,並びに,本研究の応用として,上記の結果(3)を導くことを目標とする.特に,(1)については,局所的条件をより精密化し,定理の応用可能な範囲を広げることを目標とする.(2)については,支配的分解をもつ力学系に対して,有限時間での軌道の存在確率密度と,無限に時間が経過した軌道の存在確率密度との差を評価する.(3)については,中心方向が1次元部分空間となるような支配的分解をもつ力学系の,安定多様体と不安定多様体の交差の仕方を調べる. そのため,連携研究者・平山至大氏(筑波大),鄭容武氏(広島大),山本謙一郎氏(長岡技術科学大),並びに,軌道の存在確率密度の専門家である研究協力者・辻井正人氏(九大),高橋博樹氏(慶応大),力学系の安定性の専門家である研究協力者・酒井一博氏(宇都宮大)と,年に数回お互いに行き来し研究打ち合わせを行う.さらに,存在確率密度の時間変化の速さに関する専門家である研究協力者・Varandas氏(Universidade Federal da Bahia)と研究連絡を行う. また,本研究に必要な多様体上のエルゴード理論に関する書籍等の文献,並びに,文房具等の必要な消耗品を購入する.得られた結果は関連分野の研究集会で発表する.
|