2015 Fiscal Year Research-status Report
デング熱・デング出血熱再興予測モデルの展開と流行抑制戦略シミュレーション
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15K04990
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
石川 洋文 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 非常勤講師 (00108101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下河原 理江子 東京医科歯科大学, 医学部, 非常勤講師 (50146776)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | デング熱 / 感染症数理モデル / ヒトスジシマカ / 確率シミュレーション / 東京代々木公園 / アウトブレーク / 潜伏期間 / 不顕性感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
デング熱症の清浄地とみられていた日本において、2014年夏東京都心を起源とする流行が発生した。平成27年度は、2014年代々木公園及びその周辺での起こったデング熱症アウトブレークに焦点を当て、Stochastic数理モデルに基づく確率シミュレーションによりデング熱感染拡大様式を推定し、その再現を試みた。 1.2014年東京代々木公園を中心としたデングウイルス-1型流行に関するデータを収集した。これらのデータに基づきデング熱潜伏期間を推定し、平均6.3日、標準偏差2.03日との結果と発症者の潜伏期間の分布が形状パラメータ9.8、尺度パラメータ0.65のガンマ分布に極めてよく当てはまることを確認した。またこの確率分布を用いて、代々木公園及びその周辺で感染発症した感染日不詳の全例についてモンテカルロ法により、感染日の推定を行った。 2.日本におけるデングウイルスの媒介蚊であるヒトスジシマカ(Aedes albopictus)に関する日生存率、産卵サイクル、ヒト嗜好率などのEntomological データ、デングウイルスに対する外部潜伏期間などの重要なデータの収集・検討を実施し、デングウイルス感染伝播モデルに利用するパラメータの推定を行った。 3.代々木公園の利用者及びその周辺の人々を対象としたヒト―媒介蚊間のデングウイルス感染伝播に関するStochastic数理モデルを構成した。アウトブレークが発生した2014年7月25日よりほぼアウトブレークが収束した9月30日までの期間について当数理モデルに基づく1,000回の確率シミュレーション・トライアルを実施した。アウトブレークにおける発症者数の日別推移は、全日がこれらのトライアルの最大値最小値間に約9割の日々が第1四分位第3四分位間に含まれており、アウトブレークのシミュレーション・トライアルによる再現が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、デングウイルス感染伝播に関するモデル構成のため基礎的な研究を中心に行うこととしていた。 平成27年度の研究の第1の目標は、2014年東京代々木公園を中心としたデングウイルス流行に関するデータを収集・検討し、デングウイルス感染伝播モデルに利用するパラメータの推定を行うことであった。これは上記研究実績第1項及び第2項記載の通り達成されている。 平成27年度の研究の第2の目標は、デングウイルス感染伝播に関するプロトタイプモデルを構成し、2014年に起こった代々木公園及びその周辺でのデング熱症アウトブレークのシミュレーションによる再現を行うことであった。これは上記研究実績第3項記載の通り達成されている。 上記の内容については、研究発表項記載の通り学会発表を行っている。また、学術論文として発表すべく準備を進めている。 以上により、「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトスジシマカにより感染の広がるデング熱症は毎年100例程度の輸入症例が報告されている。デング熱と同じヒトスジシマカにより媒介されるジカ熱は2016年オリンピック開催地であるブラジルで流行が拡大しており、いずれも日本への侵入及びそれらの国内流行が危惧されている。平成28年度以降は平成27年度までに開発したヒト―媒介蚊間のデングウイルス感染伝播のプロトタイプモデルを基に、多様な地域に適用可能なモデルへの発展、モデルの精密化を図り、各種の感染防護対策及びそれらの組み合わせについての多様なシナリオについて大規模stochasticシミュレーションを行い、流行拡大抑止に関する有効性や施策の限界について研究する。このために以下の項目について研究を進める。 (1) プロトタイプモデルによる2014年に起こった代々木公園及びその周辺でのデング熱症アウトブレークのシミュレーションによる再現について論文としてのとりまとめ (2)デングウイルスの血清型DENV-1~DENV-4の感染率、発症率、重症化率の差異、異なる血清型への再感染事象のモデル化(3)デング熱と類似の感染様式を持つジカ熱についての疫学に関する情報収集・検討及び感染伝播モデルパラメータの推定 (4)都市におけるヒト集団の行動のモデル化と、デングウイルス伝播感染モデルに組み込み、合わせて感染者の移動による、空間的な流行地の拡散の取り扱い(5)媒介蚊対策、ヒト感染源対策等感染抑圧政策についての多様なシナリオについてのシミュレーションの実施と流行拡大抑止に関する有効性や施策の限界について研究
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Causes of Carryover |
物品費が当初計画よりわずかに下回り(約3千円)、旅費も当初計画をわずかに下回った(約8千円)。またその他経費では、英文校閲、投稿料などの発生が翌年度になったため、学会参加費を中心に約3万円が支出され約7万円の未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、ノートパソコンの整備及び学会発表、論文出版等が見込まれるため、未使用分を含めて、物品費、旅費、その他経費に上乗せして使用する。
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