2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K05035
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
中西 康一郎 国立天文台, チリ観測所, 特任准教授 (60399277)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近傍宇宙にある爆発的星形成銀河の電波観測を行い、新しい星形成指標を用いて星形成則を探ることが本研究の主目的である。平成29年度は、天体観測データのさらなる解析と結果の公表を中心とした研究活動を行った。 アルマ望遠鏡による観測データの処理と解析を継続し、従来得られたものよりも高い角分解能で水素再結合線の空間分布を得ることに成功した。水素再結合線データから実際に星形成率を導出したのみならず、データ中に含まれる分子輝線スペクトルを解析することで、爆発的星形成銀河の中心には多様な物理的・化学的性質を持つ複数の星形成領域が存在することを見出した。とりわけ、多種の高温分子ガスが放射する輝線がスペクトルを隙間なく埋め尽くす「分子の密林」と呼べる状態にある星形成領域の存在が明らかになったことは天文学研究者の関心を惹くのみならず、プレスリリースを通して広く一般の注目も集めた(https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2017/5614/)。 前年度および当年度中に得られたこれらの成果は、二度の国際研究集会("Measuring Star Formation in the Radio, Millimetre, and Submillimetre", 2017年7月、英国; "ALMA Long Baseline Workshop"、 2017年10月、京都)および国内学会(日本天文学会秋季年会)において発表した。これらの結果をまとめた最初の学術論文が英文専門雑誌に受理され、出版された(Ando, Nakanishi, Kohno他, 2017)。 国外の研究者と共に爆発的星形成銀河に対する水素再結合線の観測研究も推進し、その成果も英文専門雑誌に査読付論文として掲載された(Bendo, Miura, Espada, Nakanishi他, 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究第3年度は、アルマ望遠鏡による観測データの処理・解析を引き続き行い、その手法を完成すると共に、成果のさらなる公表と出版を目指していた。 実際には、観測データ処理および解析手法を改善し、より高品質の天体画像の取得することができた。当年度途中までに得られた成果を二度の国際学会で公表すると共に、専門学術誌において査読付論文二本を出版できたことは、重要なマイルストーンを達成できたと言える。 しかしながら、研究代表者が勤務先において計画申請段階で予期しなかった新たな職責を負い、本研究に充てる時間が減少したため、平成29年中に新たに取得された観測データの処理・解析の進捗が予定よりも遅延しており、その成果の公表には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当研究課題の補助事業期間の延長が承認されたので、平成30年度も引き続き研究を実施する。 平成30年度は、前年度(平成29年度)に新たに取得した観測データの処理・解析を行う。これまでに完成したデータの処理手法を適用し、新たな成果の公表および研究のまとめとなる論文の出版を目指す。 データ処理が完了し天体画像が得られれば、解析作業と詳細な解釈に移行する。天体画像から大質量星形成率と高密度分子ガスの正確な分布と量を取得し、星形成則の正確な推定、他の銀河との比較など、研究の主要部分に関わる作業を進める。前年度までの成果として、高温の星間物質が集中した星形成領域の存在が明らかになっている。星間物質の物理状態が星形成活動度や星形成則に与える影響について重点的に考察する。これらの成果は国内学会・国際研究集会等で発表すると共に、論文誌に査読付論文として公表する。 データ解析の進捗に応じて計算機資源を増強する。この他、研究の成果を公表するための論文出版費、国内外の研究集会において成果発表を行うための旅費にも研究費を使用する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者が勤務先において計画申請段階で予期しなかった新たな職責を負い、本研究に充てる時間が減少したため、データ解析および論文出版が遅延した。その結果、計算機資源の増強および論文出版費の支出額が予定よりも減少し、当該年度使用額に余剰が生じた。 余剰となった助成金は、平成30年度中に予定している成果公表論文の出版、および解析の進捗に対応するための計算機資源の増強のために主に使用する予定である。
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[Presentation] ALMA imaging of NGC 253 nuclear starburst and anticipation of future high resolution observations2017
Author(s)
K.Nakanishi, R.Ando, K.Kohno, K.Sorai, N.Nakai N.Kuno, K.Matsubayashi, H.Sugai, T.Izumi, S.Martin, N.Harada, S.Takano, T.Tosaki, T.Nakajima, Y.Nishimura, Y.Tamura
Organizer
ALMA Long Baseline Workshop
Int'l Joint Research
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