2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K05070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 洋介 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60443983)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重力波天文学 / KAGRA / データ解析 / 中性子星 |
Outline of Annual Research Achievements |
KAGRA重力波望遠鏡は平成27年度3月に試験運転を開始した。平成27年度はこのデータを解析し、パルサーなどの中性子星からの連続重力波を探索するための基盤を整備した。ソフトウェアの面では、連続重力波信号と地球起源の線ノイズとを弁別する手法を開発しており、論文を準備中である。本手法は重力波検出統計量の時間発展を理論的に求め、これと実際の検出統計量の時間発展を比較することで短時間のみ存在する線ノイズを棄却するものである。本手法によって、欧州のVirgo重力波検出器が昨年報告した3つの重力波信号候補を、信号処理の初期段階で統計的な言明を持って棄却する方法を提供できるだろう。また、解析パイプラインは一通り稼働することができるようになっており、KAGRAの試験運転データの解析に向けて準備ができた。その他、グリッチノイズを除去するための手法として独立成分解析を重力波データ解析分野において初めて導入し、その性能の研究を開始した。こちらも現在論文を準備中である。ハードウェアの面では、重力波データ解析のための専用計算機クラスタを導入、ソフトウェア環境の整備をおこなった。上記のグリッチノイズおよび線ノイズの除去方法について、その性能テストのためのモンテカルロシミュレーションを当該計算機を用いておこなっている。その他、平成27年度は理論的な研究として、単独中性子星から重力波を観測することによって中性子星の質量を決定できることを示した。当該研究を共同研究し、発表した学生によるポスターは、重力波についての国際会議GWPAW2016において最優秀ポスター賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
KAGRA重力波検出器の試験運転は順調は終わり、これを解析するためのソフトウェアの準備は、多くのソフトウェアをLIGOから導入することで、短時間で一通りそろった。計算機資源は、少なくとも既知のパルサーを探索する上では問題ない程度に用意することができた。さらに線ノイズの弁別手法について一定の成果が得られ、平成28年度のKAGRAデータ解析に適用できるまでになった。重力波データ解析ソフトウェアの開発に必要な最低限の環境はビッグバンセンターで私が整え安定運用に至っている。一方で未知のパルサーを探索するための計算機資源は未だ足りず、インコヒーレント探索手法については基礎研究にとどまっており、今年度の課題である。中性子星の質量を決定できる手法を新たに提案できたことは、当初の計画にはなかった大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後とも、国内外の重力波研究者、データ解析研究者と連携して連続重力波データ解析の研究、実行に努める。本年度前半はKAGRAの試験運転データを用いた既知パルサー探索に注力する。同時にインコヒーレント探索手法について大阪市立大学の田中一幸氏とともに研究をすすめ、今年度後半には実際のインコヒーレント探索をKAGRAデータを用いて実行することが目標である。データ解析のための計算機資源については、関係各所と折衝し、収得に努める。特に東京大学宇宙線研究所の共同利用計算機の利用を申請する予定である。
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Causes of Carryover |
KAGRA重力波検出器の当初計画では2015年12月に観測を行なう予定であった。これが3月にずれ込んだこと、また、2016年第二四半期により高速な計算機CPUが発表される見込みが2015年秋の時点で判明していたため、計算機資源の効率的取得を考え、平成28年度に繰り越しを申請した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し金はより性能が向上したCPUを搭載した計算機の購入にあてる予定である。本年度の研究経費の使用計画に当初計画からの変更はない。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] 重力波で探る中性子星2015
Author(s)
伊藤 洋介
Organizer
中性子星の観測と理論: 研究活性化ワークショップ
Place of Presentation
京都大学(京都府、京都市)
Year and Date
2015-12-21 – 2015-12-22
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