2015 Fiscal Year Research-status Report
マヨラナ・ニュートリノ探索実験用大型飛跡検出器の開発
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15K05112
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
石原 信弘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 名誉教授 (50044780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川井 正徳 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 技師 (50391735)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マヨラナ・ニュートリノ / シーソー機構 / レプトジェネシス / 運動量測定器 / ドリフトチェンバー / 超伝導マグネット |
Outline of Annual Research Achievements |
既知のニュートリノが軽い理由を説明するシーソー機構と、それに基づくレプトジェネシスは宇宙が物質だけから構成され反物質が無い現実を自然に説明する。理論の根底に有るマヨラナ性(物質と反物質の区別が無いこと)が事実であるなら、いくつかの原子核は必ずニュートリノ放出を伴わない二重ベータ崩壊(0nbbと略記)を起こす。我々は0nbbを確認する最も確実な方法として、2つのベータ線が一様磁場中で描く螺旋飛跡を捉えて個々の運動量を測定する実験Drift Chamber Beta-ray Analyzer (DCBAと略称)を開発してきた。DCBAではニュートリノ放出を伴う二重ベータ崩壊の半減期測定が限度である。0nbbの半減期は10の25-26乗年と予測されているので、将来は超伝導マグネットを利用した一様磁場飛跡検出器 Magnetic Tracking Detector (MTDと略称)に大量の崩壊核を組み込むことを考えている。当該研究では0nbbを起こす確率が高いと予想されるQ 値の高いNd-150やMo-100 等を崩壊核ソースとして使用する予定である。 今後MTDに進むためには大型飛跡検出器であるドリフトチェンバー本体の量産技術を確立する必要がある。MTD に設置される幅50 mm のドリフトチェンバーは全部で28台を予定しており、チェンバー間には27 枚の崩壊核ソース板が挿入される。これらを一体に組み上げてチェンバーガスコンテナに収納し、さらにMTDマグネット内に挿入するには、チェンバー製作と組立技術を確立しなければならない。 本研究期間内に実機大のチェンバー2台とダミーソース板1枚を、高い剛性が得られるように試作すると共に組立てとワイヤー張りに必要な治具を開発し、建設のノウハウを得ることを目的としている。平成27年度は回転機能を持つ治具の設計と製作を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究期間内にMTDに据え付けるドリフトチェンバーの内、最大のものを2台と、その間に挿入する崩壊核のダミーソース板1枚を試作することを目的としている。チェンバー1台でも高い剛性が得られるように設計するが、実際に組み立ててワイヤーを張り宇宙線の飛跡を観測することによってのみ実用性が確認できる。ワイヤーには3種類が在る。一つはアノードワイヤーと呼ばれ、材質は金メッキ・アルミニウム、直径20ミクロン、長さ約2.5mである。もう一つは材質金メッキ・アルミニウム、直径80ミクロンで、長さ約2.5mのカソードワイヤーとフィールドワイヤー、約1.6 mの長さのピックアップワイヤーと区別して呼ばれる。他の一つはガードワイヤーで、材質はベリリウム銅、直径140ミクロン、長さ約2.5 mである。これらをフィードスルーという電気絶縁棒を介して3mmピッチでアルミ合金の枠に縦横に固定する。 平成27年度は、回転式のチェンバー組み立て台を設計・製作し完成させた。これを利用してワイヤーとフィードスルーの接続半田付け作業が円滑に行える。又、ワイヤーの張力測定やタワミ測定も容易に出来る。ワイヤー張りに必要な材料と各種小道具(プーリー、張力を加える錘、等)も手配した。以上の状況から計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はチェンバーに各種ワイヤーを張り、機械的強度や電気的特性を調べた上で、チェンバーとしての性能を調査する。 MTD モジュールに設置される幅50 mm のドリフトチェンバーは全部で28台在り、 チェンバー間には27 枚のソース板が挿入される。これらを一体に組み上げてチェンバーガスコンテナに収納し、さらにマグネット内に挿入するには、チェンバー製作と組立技術を確立しなければならない。本研究の結果を踏まえて、将来的にMTD モジュールを10 台製作することを念頭に置いて作業を進めたい。 MTDモジュール10台には約300 kg(100% 150Nd なら2000 mol)のソースを設置できるので、ニュートリノ質量が47 meV だと仮定すれば1年間で数個の実事象を得、数年でマヨラナ性を確定出来る。 MTDは電子、陽電子、ミュー粒子、陽子に対する粒子選別能力と電子の位置測定と飛来方向について優れた性能を有する。この特長を生かせば地球中心からの電子ニュートリノのエネルギーと運動量測定も可能であると考えている。
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Remarks |
運動量領域が0.5 - 5.0 MeV/cの電子と陽電子の飛跡を捉えることが出来る世界で唯一の電子/陽電子運動量分析器DCBA(Drift Chamber Beta-ray Analyzer)を紹介したものである。 DCBAの将来プロジェクトであるMTD(Magnetic Tracking Detector)についても述べられている。既に発表された論文や国内外の講演原稿も公開されている。
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Research Products
(3 results)