2017 Fiscal Year Annual Research Report
Parity mixing and electromagnetic effects in strongly correlated electron systems
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15K05175
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松村 武 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (00312546)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 共鳴X線散乱 / サイクロイド型磁気構造 / トロイダルモーメント / キラル磁性体 / キラルソリトン格子 / ジャロシンスキー・守谷相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
局所反転対称性が破れた系における秩序構造研究としてGdRu2Al10のサイクロイド型磁気構造について,その伝播ベクトル(0, q~0.75, 0)のqが温度とともに変化することを詳しく調べた.これはGdの磁気モーメントがS=7/2であるため,異方性が弱く,RKKY相互作用が秩序変数の発達に伴って変化していることに対応している.帯磁率で観測されていた2段転移の詳細も明らかになり,弱いb軸方向の異方性のために転移温度直下ではb軸成分だけが生じることがわかった.これらの成果をまとめたものがJPSJで発表された. また,キラル磁性体YbNi3Al9およびNi-Cu置換系についても,共鳴X線回折によってらせん磁気構造を観測した.この物質系では,結晶構造が空間群R32に属するキラル構造をもつことにより,磁気構造にもキラリティが現れ,らせんの巻き方が一方のみ選択された構造が実現する.このことを,右型,左型の両方の結晶について円偏光ビームを用いた磁気構造観測を試み,確かに逆巻きのらせん磁気秩序が実現していることをつきとめた.このことは,結晶構造の対称性の破れによってDzyaloshinskii-Moriya型の反対称相互作用が生じていることの直接の証拠となっている.また,磁場中で実現されると推測されていたキラル磁気ソリトン格子についても,円偏光ビームを用いた磁場中共鳴X線回折によって観測に成功した.らせんの高次波数成分が磁場印可とともに発達する様子が,理論的に予測されていた振る舞いとよく一致している.ただし,理論は連続体モデルによるものであるのに対し,本物質のらせん周期は格子定数の数倍程度と短く,なぜ連続体モデルのキラルソリトン格子が本系にも当てはまるのか,新たな研究課題が発生した.このことは,希土類化合物におけるらせん磁気構造に付随する物理として新しいテーマになり得る.
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