2015 Fiscal Year Research-status Report
Sm系金属間化合物で発現する新奇強相関電子物性の機構の究明
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15K05178
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| Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
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Principal Investigator |
東中 隆二 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (30435672)
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| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 重い電子状態 / カゴ状化合物 / Sm 化合物 / 中間価数 / 層状化合物 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
磁場に鈍感な非従来型の重い電子状態を示すSmTr2Al20(Tr:遷移金属)について、SmTa2Al20の精密な磁気抵抗測定から低温まで非従来型の近藤効果により顕著な波数依存性を持った磁気散乱が存在することを見出し、この系の磁気抵抗がこれまで純二次元強相関電子系でのみ報告されている修正Kohler則に従い、本系で初めて修正Koher則が３次元系においても成立することを見出した。また、SmTi2Al20のLa置換系の詳細な低温比熱およびSm価数測定を行い、比熱測定から、どのSm濃度においても4f電子の比熱は磁場依存性はほとんど無く、転移温度はSm濃度減少に従って低下し、x = 0.1近傍で転移が消失することを見出した。Sm価数測定では転移温度以下でもSm価数(2.87 価)に変化はなく、Sm濃度を変化させてもほとんどSm価数は変化しないことを見出した。
他の物質系として、多結晶の研究から新しい強磁性近藤格子系の候補物質として注目されているCePd2P2について、高圧フラックス法による単結晶育成に世界で初めて成功し、磁化異方性からCeの結晶場基底状態を明らかにし、抵抗測定から近藤効果を示唆する抵抗の増大を確認した。
また、最近報告された層状超伝導体LnOBiS2(Ln:希土類)のLnの磁性に注目して研究を行い、母物質で半導体のCeOBiS2の単結晶の研究から、低温にC/Tが-logTに依存する異常な発散があることを見出し、その起源として磁気フラストレーション機構を提案した。また、多結晶の報告から強磁性と超伝導の共存が議論されているCeO0.5F0.5BiS2の単結晶を用いた研究を行い、強磁性的異常は磁気困難軸のc軸にのみ観測され、比熱測定から見積もった異常に関連したエントロピー変化がRln2の1%以下であることを見出し、強磁性異常はバルクの相転移ではないことを明らかにした。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的に示した内容に関して、以下の状況にあるため研究遂行はおおむね順調に進展していると考えられる。
1の育成条件の最適化による単結晶の純良化と大型化については、育成条件の最適化により単結晶NMR、超音波測定に耐えうる数mm角の単結晶育成に成功し、それらの試料を用いた、NMR、超音波測定については共同研究者に試料を提供し、既に共同研究を進めている。
2の高圧合成法による新規Sm化合物の探索については、Smではないが強磁性近藤格子系を示す新たな候補物質として注目を集めているCePd2P2の単結晶育成に成功しており、基礎物性については既に測定済みで圧力下測定を含めたより詳細な研究を現在進めている。Sm化合物については高圧合成法ではないが、同じ系のSmPt2Cd20に加え、SmPt2Si2, SmIr2Si2, SmPd3Ga8, SmGa6等のこれまで報告例の少ない強相関Sm化合物の単結晶育成に成功しており、現在詳細な物性測定について進めている。
3のSmTr2Al20の研究に関しては、磁気抵抗、ホール測定により非従来型の近藤効果による特異な電子輸送現象が実現していることを見出したことに加え、希釈系においてもSmの価数は中間価数であり、磁場に鈍感な重い電子状態もSm濃度によらず存在していること見出すなど、順調に成果が出ている。さらに、同結晶構造を持つ新物質SmPt2Cd20の単結晶育成に成功し、その基礎物性測定から、SmTr2Al20とは対照的に磁場印加により変化する振る舞いを見出している。
また、これらとは別に最近超伝導を示すことが報告されたBiS2層状化合物LnOBiS2(Ln=希土類)のLnが示す磁性に注目をして研究を行っている。既に、Ln=Ce,Pr,Nd,Euの単結晶育成に成功し、着実に成果が出てきている。
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| Strategy for Future Research Activity |
Sm1-2-20系に関して、まずは、本年度単結晶育成に成功したSmPt2Cd20の基礎物性測定を進める。本物質は磁場に鈍感な振る舞いを示すSmTr2Al20と異なり、磁場印加により物性が変化しており、同一の結晶構造にもかかわらず磁場依存性に差異が出てくる原因について、これまでの研究結果と比較を行い、系統的な研究を行う。また、Sm1-2-20系を含めたSm強相関電子物質について、熱伝導特性についての研究がほとんど行われていないため、熱特性測定を専門的に行っているウィーン大学との共同研究で、それらの物質の熱電能、ゼーベック係数測定を進める予定である。その他の学外施設での共同研究として、超音波、NMR、熱膨張、Smメスバウワー分光実験等を予定しており、試料提供等の実験準備を進めている。
本研究課題で予定していた上記の物質に加えて、最近希土類の磁性に起因した異常物性を見出しているBiS2層状化合物LnOBiS2(Ln=希土類)のLnの磁性に起因する基底状態についての研究を行う。既に、Ln=Pr,Nd,Euの単結晶育成には成功しており、基礎物性測定を進めている。Ln=Ndの系では、比熱測定から低温で大きな電子比熱係数を持ち、磁場印加によりその値が抑制される、重い電子系物質とよく似た振る舞いを示すことを見出しており、その機構解明を含め、研究を進める。
また、予定している一軸圧下実験については、測定に用いる一軸圧力セルの準備はほぼできており、Sm1-2-20系を用いた本実験の前に、比較的圧力依存性が大きいと考えられるBiS2層状超伝導体の超伝導の一軸圧依存性について研究を行う予定である。
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| Causes of Carryover |
当初購入を予定していた備品は研究室で他の用途に使用していた装置を使用することにしたため、その他の消耗品を購入することに変更した。そのことにより予定していた物品費かかなり減ることになってしまい、次年度に繰り越すことになってしまった。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した予算については、次年度の研究費と合わせて、次年度に予定しているウィーン大学との共同研究に関連する費用として使用する予定である。それに加えて、現存装置の測定系の整備を予定しており、それに必要な付加的な装置、コンピュータの購入を行う予定である。また、新規物質探索、共同研究用試料合成に必要な合成用試料及び消耗品、低温測定に必要なヘリウム代として有効利用する予定である。
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[Journal Article] Mixed valence state (SmxLa1-x)Tr2Al202016
Author(s)
Akira Yamada, Ryuji Higashinaka, Kengo Fushiya, Takuya Asano, Tatsuma D. Matsuda, Masaichiro Mizumaki, Satoshi Tsutsui, Kiyofumi Nitta, Toshiaki Ina, Tomoya Uruga and Yuji Aoki
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Journal Title
J. Phys.: Conf. Ser.
Volume: 683
Pages: 012020-1-6
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Fermi surfaces and orbital polarization in superconducting CeO0.5F0.5BiS2 revealed by angle-resolved photoemission spectroscopy2015
Author(s)
T. Sugimoto, D. Ootsuki, C. Morice, E. Artacho, S. S. Saxena, E. F. Schwier, M. Zheng, Y. Kojima, H. Iwasawa, K. Shimada, M. Arita, H. Namatame, M. Taniguchi, M. Takahashi, N. L. Saini, T. Asano, R. Higashinaka, T. D. Matsuda, Y. Aoki, and T. Mizokawa
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Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 92
Pages: 041113(R)-1-4
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] 単結晶PrT2Al20のNMR測定2016
Author(s)
久保徹郎, 三宅遼磨, 松野治貴, 小手川恒, 藤秀樹, 播磨尚朝, 東中隆二, 中間章浩, 青木勇二, 佐藤英行, 井原慶彦, 後藤貴行, 佐々木孝彦
Organizer
日本物理学会第2016年年次大会
Place of Presentation
東北学院大学
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
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[Presentation] 籠状物質SmTa2Al20の低温弾性特性と相転移異常（II）2016
Author(s)
高橋祥平, 大山雄輔, 長谷川潤弥, 中西良樹, 中村光輝, 吉澤正人, 山田瑛, 東中隆二, 松田達磨, 青木勇二, 佐藤英行
Organizer
日本物理学会第2016年年次大会
Place of Presentation
東北学院大学
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
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[Presentation] Crystal structure and superconducting properties of RE(O,F)BiS2 (RE: La, Ce, Pr, Nd, Sm)2015
Author(s)
Kouhei Nagasaka, Takafumi Hiroi, Joe Kajitani, Ryuji Higashinaka, Tatsuma Matsuda, Yuji Aoki, Osuke Miura, Yoshikazu Mizuguchi
Organizer
TMU International Symposium 2015
Place of Presentation
首都大学東京
Year and Date
2015-09-24 – 2015-09-25
Int'l Joint Research
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[Presentation] Electronic structure of Ce(O,F)BiS2 revealed by x-ray absorption, resonance photoemission, and angle-resolved photoemission spectroscopies2015
Author(s)
T.Sugimoto, B.Joseph, E.Paris, D.Ootsuki, M.Takahashi, C.Morice, E.Artacho, S.S.Saxena, A.Iadecola, E.F.Schwier, M.Zheng, Y.Kojima, H.Iwasawa, K.Shimada, M.Arita, H.Namatame, M.Taniguchi, N.L.Saini, S.Demura, Y.Mizuguchi, Y.Takano, T.Asano, T.Nakajima, R.Higashinaka, T.D.Matsuda, Y.Aoki, T.Mizokawa
Organizer
TMU International Symposium 2015
Place of Presentation
首都大学東京
Year and Date
2015-09-24 – 2015-09-25
Int'l Joint Research
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[Presentation] 磁場に鈍感な近藤効果的異常を示すSmxLa1-xTa2Al20におけるSm4f電子状態2015
Author(s)
山田瑛, 東中隆二, 伏屋健吾, 浅野卓也, 松田達磨, 青木勇二, 佐藤英行, 三宅厚志, 徳永将史, 水牧仁一朗, 筒井智嗣, 伊奈稔哲, 新田清文, 宇留賀朋哉
Organizer
日本物理学会第2015年秋季大会
Place of Presentation
関西大学
Year and Date
2015-09-16 – 2015-09-19
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[Presentation] Fermi surfaces and orbital polarization of CeO0.5F0.5BiS2 revealed by angle-resolved photoemission spectroscopy2015
Author(s)
杉本拓也, 大槻太毅A, Corentin MoriceB, Emilio ArtachoB, S. S. SaxenaA, 高橋雅也, E. F. Schwier, 岩沢英明, 島田賢也, 有田将司, 生田目博文, 谷口雅樹, Naurang L Saini, 浅野卓也, 中島卓也, 東中隆二, 松田達磨, 青木勇二, 溝川貴司
Organizer
日本物理学会第2015年秋季大会
Place of Presentation
関西大学
Year and Date
2015-09-16 – 2015-09-19
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[Presentation] 超伝導体La(O.F)BiS2の高圧下におけるホール効果と熱膨張測定2015
Author(s)
秋田星二, 北川俊作, 小手川恒, 藤秀樹, 井澤宏輝, 水口佳一, 三浦大介, 浅野卓也, 東中隆二, 松田達磨, 青木勇二, 田中将嗣, 高野義彦, 長尾雅則
Organizer
日本物理学会第2015年秋季大会
Place of Presentation
関西大学
Year and Date
2015-09-16 – 2015-09-19
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[Presentation] SmTa2Al20の低温弾性特性と相転移異常2015
Author(s)
高橋祥平, 大山雄輔, 長谷川潤也, 中西良樹, 中村光輝, 吉澤正人, 山田瑛, 東中隆二, 松田達磨, 青木勇二, 佐藤英行
Organizer
日本物理学会第2015年秋季大会
Place of Presentation
関西大学
Year and Date
2015-09-16 – 2015-09-19
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