2015 Fiscal Year Research-status Report
マランゴニ効果を利用したアクティブマター系の構築と解析
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15K05199
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
北畑 裕之 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20378532)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マランゴニ効果 / アクティブマター / 分岐現象 / 反応拡散方程式 / 表面張力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、非平衡条件下で自由エネルギーを用いて運動するアクティブマター系について、対称性を考慮しつつその一般的な理論の構築を目指すものである。27年度においては、これまでに研究を続けてきた具体的な実験系を用いて形状と運動の関係性について議論することを計画し、それに沿って研究を進めた。その結果、次にあげるような結果が得られた。 (1)水・樟脳系において、これまで反応拡散方程式と樟脳粒の運動方程式を組み合わせたモデルが用いられてきた。その際に用いる拡散係数の値は、熱揺らぎが駆動力となる一般的な平衡状態での拡散係数とは異なる値をとらないと実験を説明できなかった。そこで、その差がマランゴニ対流による物質の輸送であると考え、対流の影響を繰り込んで反応拡散方程式で扱えないかを考案した。その結果、樟脳の濃度差による表面張力差が駆動するマランゴニ対流が樟脳分子を輸送し、その結果実効的な拡散係数が大きくなることを理論的、数値的に示すことができた。その結果は、論文としてまとめ、現在、国際論文誌に投稿中である。 (2)(1)と関連して、樟脳の分子の濃度差によるマランゴニ対流が発生しているとき、水面に置いた物体が移動し、樟脳の分子の供給を止めてマランゴニ対流が止まると、水面に浮かんだ物体が、もともと樟脳粒があった位置に近づいてくる現象が観察された。これは、水面がマランゴニ対流により変形されていると考え、実際にレーザー変位計によってその水面変形を観察し、数マイクロメートルのオーダーで水面が変形していることを明らかにした。また、数値計算を使ってその見積もりが妥当であることを示した。その結果は現在論文としてまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定においては、水・樟脳の系における実効的な拡散係数の計算、および、水面の変化について、と、水・アルコール系を用いた液滴形状の変化についての研究を行う予定であった。前者については、予想以上に進捗し、二つのテーマともに論文をほぼ執筆し終える(一方はすでに投稿済)段階にある。一方、後者については、水・アルコール系を用いるのではなく、共同研究において、水相中の油滴の運動に関して同様の解析を行うことで、もともと求めていた知見が得られた。そのような意味で、予定とは具体的内容は少し異なるが、ほぼ予定通りの進捗が得られたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、主に予定通り進んでいる。水・アルコール系に関しては、28年度において形状と運動の相関について実験的な調査をできればと考えている。それにより、水・油滴系で得た結果の確認ができると期待される。 また、実効的な拡散係数の理論的導出に関しては、予定通り、樟脳粒が静止している状況に限らず、動いている状況でも適用できる理論体系の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
27年度は、主にコンピュータを使った数値計算や、理論計算を中心とした研究が主に進んだため、実験用の試薬や消耗品の購入をする必要が少なかったため、予定よりも使用した額が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、数値計算や理論計算で得られた成果の検証も含めた実験的研究を行うため、また、今年度得られた成果をまとめるために共同研究者との議論のための旅費のために使用する予定である。
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Research Products
(9 results)