2017 Fiscal Year Research-status Report
衝撃波加熱コンドリュール形成モデルの追求:高濃度ダスト領域における弧状衝撃波
Project/Area Number |
15K05266
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中本 泰史 東京工業大学, 理学院, 教授 (60261757)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | コンドリュール形成 / 微惑星 / 微惑星形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,これまでのシミュレーション結果を踏まえて結果の取りまとめに取りかかった。しかしながら,いつかの問題に直面した。ひとつは,本課題で想定している高速微惑星による弧状衝撃波では,コンドリュール形成に適当な条件を見出すことが難しいことが見えてきたことである。もちろん,否定的結論で論文化することも必要であろう。しかし二つ目の問題として,本課題で得たそうした否定的結論とほぼ同じ内容の論文が,海外の研究グループによって先に発表されてしまったことがある。否定的内容を補強する独自の論文として出すことには障害が多いため,この方針での論文化は一旦取りやめることとした。 そこで,コンドリュール形成については,別の可能性を検討してみることとした。高速微惑星による弧状衝撃波がコンドリュール形成に適当ではない理由の一つは,ダスト濃度がまだ足りないということだったので,その点を満たす状況を検討したところ,浮かび上がったのが雷加熱である。本課題に取り組んだことで得られた各種の知見やノウハウを加味した上で,雷によるコンドリュール形成を検討してみたところ,大筋では可能性があり,詳細に調べてみる価値があることがわかった。 一方で,本課題の主目標であった弧状衝撃波の計算の他に,サブテーマとして,コンドリュール前駆体であるダストアグリゲイトの形成についても研究を進めてきた。分子雲コアの重力収縮に始まる原始星と原始惑星系円盤の形成から,その内部でのダスト微粒子の運動・衝突・合体を計算した。その結果,分子雲コアからの質量降着が継続している期間(約40万年)は,ダストが合体・成長することによる微惑星形成は進行しないことがわかった。これは微惑星の形成過程の研究にとっては,新たな知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で得られた結果が当初予想に対して否定的なものであったこと,本質的に同じ結論の論文が海外の研究グループによって先に発表されたこと,などにより,本課題の主目標に関して得られたこれまでの結果を論文として発表することは困難となってしまった。そこで,コンドリュール形成に関しては別の可能性について新たに検討することから始めることになった。よって,「コンドリュール形成過程を明らかにする」という大きな目標に向かっては,やや遅れが生じてしまったことになる。しかしながら,コンドリュール形成過程の新しい可能性が見えてきたので,その点では一歩前進したとも言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
(推進方策) 雷によるコンドリュール形成の可能性を定量的に調べる。そのために,理論的モデルを作り,定量的な評価ができるような計算を実施し,観測結果との比較を行っていく。
|
Causes of Carryover |
本事業で得た研究成果を発表するための論文投稿と学会発表の一部が事業期間中に完了できなかったため,次年度使用額が生じた。残額は,平成30年度中に行う論文投稿と学会発表で使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)