2016 Fiscal Year Research-status Report
火山岩脈と砕屑岩脈の変形様式解析による北アルプスの隆起運動像の解明
Project/Area Number |
15K05310
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹内 誠 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80273217)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ジルコン / 砕屑岩脈 / 北アルプス |
Outline of Annual Research Achievements |
北アルプス地域の比較的若い時代に活動した岩脈とその変形,及び砕屑岩脈の産状とU-Pb年代を用いて,北アルプスの隆起の様式を検討することを目的としている. 地質調査により,火成岩岩脈と砕屑岩脈の関係を調べ,以下のような関係が明らかになった.下部白亜系手取層群に110 Ma(竹内ほか,2015)のざくろ石含有デイサイトが貫入し,デイサイトはその後角礫化する破砕作用を被っている.それらを普通角閃石黒雲母安山岩~閃緑岩が貫入し,角礫化が再び生じ,砕屑岩脈の貫入が起こった.さらに,濃緑輝石普通角閃石安山岩が貫入していることが明らかになった.従来知られていなかった岩体も発見され,火成作用の歴史を検討する上で,重要な発見となった. 野外調査によって砕屑岩脈は二種類存在することがわかった.一つはデイサイト角礫を主とするもので,もう一つは砕屑岩を主とするものである.砕屑岩脈の角礫の大きさや含有量,および岩脈内の配置はその形成条件に関係があると考え,その様子を観察した.また,貫入岩には随所に角礫化した部分が認められ,そのような岩盤として弱い部分を選択して若い岩脈が貫入している傾向があることがわかった. また,地質学的イベントの年代を明らかにするために,それぞれの岩石中のジルコンのU-Pb年代をレーザーICP-MSにて測定を行った.その結果,いずれも極端に若い火山岩脈の年代が1から数Maと大変若いことがわかり,ジルコンによるU-Pb年代は,名古屋大学でのICP-MSでの測定では困難であることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
地質調査による岩脈群の産状についてはかなり明らかになった.また砕屑岩脈の産状についても観察は十分に行うことができた.その結果,地質学的にイベントの順番に関しては明らかになり,従来知られていない事実がいくつかあきらかにできた.しかし,そのイベントに絶対年代を入れることが,ジルコンのU-Pb年代からは困難であることがわかり,その対応に苦労している.そのため,実施計画に大幅な遅れが生じている.
|
Strategy for Future Research Activity |
名古屋大学のICP-MSで測定可能な年代の白亜紀の火成弧の隆起運動の様式についてジルコン年代を用いて検討を行い,北アルプス地域に応用できないかを検討する予定である.隆起の様式は,火山弧上部は削剥されて現在は存在しないので,隆起に伴ってもたらされた砕屑物の年代から,どのように火成弧が隆起したかを検討する.
|
Causes of Carryover |
ジルコンのU-Pb年代測定において,極端に若い年代の岩石が対象であることがわかり,ジルコンU-Pb年代の測定が困難になり,測定用の物品等の購入が行われなかった.また,測定用の試料の調整も実施できなかったため,試料調整のためのアルバイト雇用ができず,使用額がすくなくなった.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
年代測定が可能な白亜紀の火成弧の隆起に対象を変え,その成果を北アルプスに応用できないかを検討したい.そのため,白亜紀の火成岩類のジルコンU-Pb年代測定を実施する予定で,遅れた分も挽回すべく,分析速度を上げていく予定である.
|
Research Products
(1 results)