2016 Fiscal Year Research-status Report
始新世-漸新世哺乳動物相交代の実態の解明:アジア産分類群の起源と移住
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15K05330
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江木 直子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (80432334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鍔本 武久 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (20522139)
西岡 佑一郎 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (00722729)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 哺乳類 / 古第三紀 / 動物相交代 / 生物地理 / 層位・古生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,古第三紀~中新世のアジア産化石哺乳類の新標本の記載と既知標本の系統分類の同定を行い,各分類群の古生物地理とアジア地域の動物相の変化を調べ,汎地球規模の現象とされてきた始新世-漸新世境界の陸棲哺乳動物相交代へのアジア産分類群の寄与を明らかにすることを,目的とする。 ヨーロッパの哺乳動物相において認識された始新世-漸新世境界の動物相交代は,アジア系分類群の出現が1つの特徴としてあげられてきたが,それらがアジアでどのように起源したかは検討されてこなかった。また,近年の調査により,ヨーロッパや北米との対比に用いられてきた資料以外にも,アジアには様々な分類群が存在していることや,始新世-漸新世境界以前にも変化が起きていることが指摘され,始新世-漸新世境界の哺乳動物相交代を複数の移住イベントとして検証し直す必要がある。 平成28年度は主に以下の作業を行った。(1)モンゴル科学アカデミーでは,これまで重点的に行っていた始新統産出標本ではなく,漸新世(Shunkht)の哺乳類化石の整理を行った。主に小型哺乳類化石の産出が多く,巨大哺乳類化石の産出は非常に少ないことがわかった。標本は大量にあり,今後の継続的な研究調査が必要である。(2)ミャンマー考古局では,始新世(Pondaung)の肉食哺乳類標本の追加観察を行った。ヒエノドン類については固有属を見出したほか,他産出地の標本との比較も含めて食肉類の再同定を進めた。(3)日本の中新統(瑞浪)産出のシカ類の観察を行い,文献調査により漸新世まで遡って分類解析を進めている。(4)タイ北部チェンムアン地域と東北部コラート地域の偶蹄類化石のデータを収集し,第三紀の既存標本所蔵についての情報を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は,各メンバーがモンゴル,ミャンマー,タイ,日本の各地域の標本について,データ収集と同定分類などの解析作業を遂行した。また,今後の国際共同研究についての情報収集や打ち合わせも行った。成果や総説的な発表を学会や学会の自由集会で行った。一方で,成果のとりまとめが遅れ,論文発表まで至らなかった。また,古生物地理の考察のために中国産標本の追加調査が必要と判断したが,平成28年度中には渡航日程の調整がつかなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
始新世-漸新世境界の哺乳動物相交代のアジア東部での実態を,新標本の産出・記載報告,既存標本の系統分類の再検討,従来の研究では軽視されてきたモンゴル~内蒙古以外の地域の産出情報の考慮,各分類群の地理的・時間的分布の把握にもとづいて,明らかにする。始新世-漸新世境界でヨーロッパや北米に移住し,動物相交代に影響したとされるアジア産分類群の地理的・時間的分布を明らかにし,地理的分布の拡大方向と時期,その起源地を推定する。更に,各哺乳類分類群の起源と移住の時期や地域・経路を分類群間で比較し,アジア東部地域およびヨーロッパや北米への哺乳動物相変化に寄与した分類群とその移住の時期や経路または起源地を明らかにする。 化石哺乳類の分類は,歯顎部形態にもとづいて行う。博物館で化石の写真撮影,計測,許可される場合はモールド(帰国後,化石模型を作成するための鋳型)の作成を行う。標本を文献やこれまで収集したキャストと比較することで,形態特徴を明らかにし,種の変異の範囲内に入るか検討し,産出報告と新種の場合は記載を行う。海外博物館作業としては,代表者・分担者らが関与してきた発掘調査国(モンゴル,ミャンマー,タイ)で,継続的な調査によるデータ収集を予定している。また,この他にアジア産種のタイプ標本や欧米産種との比較が必要な場合,ヨーロッパ,アメリカ,中国の博物館で観察を行う。 成果は,国内学会(日本古生物学会など),国際学会(古脊椎動物学会など)と論文で発表する。 研究組織には,江木(代表者;主に総括,肉食哺乳類),鍔本(分担者;大型哺乳類),西岡(分担者;小型哺乳類と小型偶蹄類)の他に,国内研究者として,連携研究者の冨田幸光(国立科学博物館名誉研究員;兎形類),研究力者の村上達郎(愛媛大学大学院理工学研究科博士課程大学院生;奇蹄類)が加わる。
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Causes of Carryover |
国際学術誌投稿のための英文校閲が,執筆の遅れにより,年度内に発注できなかったため。当初28年度には予定していなかった中国での標本調査が必要と考え,学会発表費用1回分をあてることにしたが,28年度中には渡航の日程調整がつかなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度より繰り越した分については,国際学術誌投稿のための英文校閲と海外学術機関での追加標本調査に使用する。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] Large fossil rodents from Thailand2016
Author(s)
Nishioka Y., Nakaya H., Suzuki K., Ratanasthien B., Jintasakul P., Hanta R., Kunimatsu Y.
Organizer
Society of Vertebrate Paleontology 76th Annual Meeting
Place of Presentation
Salt Lake City (アメリカ合衆国)
Year and Date
2016-10-26 – 2016-10-29
Int'l Joint Research
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