2016 Fiscal Year Research-status Report
2次元正方格子をとる遷移金属オキシカルコゲナイドの電子物性
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15K05441
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
分島 亮 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (10292046)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 正方格子 / 磁性 / 複合アニオン |
Outline of Annual Research Achievements |
複数のアニオンを含む複合アニオン化合物では、アニオンの大きさ、電気陰性度の違いから様々な結晶構造をとる。酸化物イオンに着目すると、第3周期以降のアニオンと酸化物イオンとでは、イオン半径および電気陰性度の差が大きいため、これらの複合アニオン化合物中では、アニオンのサイトが互いに秩序化した2次元構造をとりやすいことが知られている。そのため新規複合アニオン化合物を探索し、その物性について調べることを目的とした。 遷移金属を含むオキシカルコゲナイドの新規物質の探索を試みたところ、メリライト型マンガン酸化物の酸化物サイトを硫化物イオンで置換することに成功した。この化合物中ではマンガンイオンには4つの酸化物イオンが配位したMnS4四面体構造をとり、ゲルマニウムイオンには3つの硫化物イオンと1つの酸化物イオンが配位したGeOS3四面体構造をとっている。さらにGeOS3四面体は酸化物イオンが架橋し、Ge2OS6ダイマーを形成している。また、磁性イオンであるマンガンサイトに注目するとマンガンは2次元正方格子を形成している。 この化合物について電気・磁気的性質を調べると、電気伝導性は絶縁体であり、磁化率の温度依存性からマンガンは2価の酸化状態をとっていることが分かった。さらに、低温では2次元反強磁性的な挙動を示し、15.5ケルビンで長距離反強磁性秩序を示した。この転移温度は同形構造をとるメリライト型マンガン酸化物の長距離磁気秩序温度(TN = 4.4 K)と比較すると非常に高く、この原因について第一原理計算を行うことで検討を行ったところ、酸化物イオンを硫化物イオンで置換することで、酸化物ではイオン結合だったマンガンと配位子の結合性が共有結合性に変化することで超交換相互作用が強くなることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的である新規オキシカルコゲナイドの合成に成功し、物性を調べることができた。本研究で合成に成功した化合物は同形構造の酸化物も存在し、配位子の置換効果が確認できる。酸化物イオンを硫化物イオンで置換することで、磁気転移温度が大きく変化することを見出し、第一原理計算を行い、詳細な検討を行ったところ、共有結合性が強くなることで超交換相互作用が強くなることを見出した。 通常、酸化物イオンと硫化物イオンとでは電気陰性度およびイオン半径が大きく異なるため、本研究のような複数のカチオンが異なるサイトを占める化合物で酸化物とオキシカルコゲナイドが同構造をとる化合物は極めて希である。このような化合物を合成し、構造と電子物性を比較し、さらに物性変化の機構まで解明できたので、現在までの進捗状況は当初の研究目的通り進行しており、概ね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は他の遷移金属でも様々なオキシカルコゲナイドの創製を目指すが、メリライト型酸化物の酸化物サイトがカルコゲナイドイオンで置換できることが分かったので、今回合成に成功した組成と類似の組成から新規物質の探索を試みる。また、合成に成功した化合物の物性評価も行い、第一原理計算等を用いて電子状態について解明していく。
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Causes of Carryover |
差額が2千円以下と少額になってしまったため、試薬等の消耗品をはじめとする研究に使用する物品で購入できるものがなかったため、次年度の予算と合わせて使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算と合わせて、白金試薬等を購入する予定である(すでに発注した)。
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Research Products
(4 results)