2017 Fiscal Year Research-status Report
クラスター内包フラーレンの電子状態解析と高圧導電性の評価
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15K05477
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮崎 隆文 岡山大学, 安全衛生推進機構, 教授 (70260156)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電気伝導度 / 超高圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の3年目では、超高圧(5GPa以上)条件下での直流4端子法での電気伝導度測定の実験計画を進め、クラスタ-内包フラ-レンおよびその関連物質への適用とその実証試験を行った。超高圧条件下での実験ではスクリュ-加圧式ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使い、0~70GPaまでの超高圧発生を確認し、1K~室温までの電気伝導度、X線回折および磁性の圧力依存性の測定実験が可能となった。そこで、高圧力下で高い電気伝導性を示す関連物質である(EDA)yMxFeSeおよび(EDA)yMxFeSe0.5Te0.5(M= アルカリ金属)、Ca0.5Sr0.5C6、AgxBi2-xSe3、(NH3)yNaxFeSeの各試料について測定実験を行った。その結果、これらの電気伝導度の圧力-温度依存性が明らかとなり、超伝導性に関する新たな知見が収集された。一方、フラ-レンC80ケ-ジ内にSc3Nを挿入したSc3N@C80の粉末試料について、0~15GPaまでのX線回折ピ-クの圧力依存性を観測した結果、7GPa付近までは単調にピ-クシフトしたが、7GPa以上では新たなピークの出現などが観測された。これは高圧力による化学変化が起こったと推察される。また、電気伝導度測定では絶縁フィルム上に電極間0.05mmの4電極を配線したシ-トの上にSc3N@C80粉末試料を置き、ダイヤモンドアンビルで直接挟んで加圧した。その結果、0~7GPaの昇圧時に電気伝導度の大幅な増加が認められ、7GPaでは常圧時よりも約5桁の電気伝導性の増加を観測した。その後、降圧すると電気伝導度は常圧時に戻ったことから、圧力によって重合などの化学反応は進行せず、圧力効果によって電気伝導性が向上したと考えられる。これらの研究成果の一部については、関連する学会にて6件の研究発表および1件の国際会議、4件の学術論文として発表済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画の3年目では、極低温および超高圧の条件下で、超伝導性を評価することが主目標であった。その際、クラスタ-内包フラ-レンとの関連物質について先行実験を行い、(EDA)yMxFeSeおよび(EDA)yMxFeSe0.5Te0.5(M= アルカリ金属)、Ca0.5Sr0.5C6、AgxBi2-xSe3、(NH3)yNaxFeSeの各試料について、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)高圧発生装置を使って0~70 GPa の電気伝導度測定に成功し、超伝導性の発現に関する新たな知見を得ることができた。また、上記と同様にDACを使って、Sc3N@C80の粉末X線構造回折実験(0~15GPa)および室温条件下での電気伝導度(0~7GPa)の測定実験に成功した。その結果、7GPaでは常圧時よりも5桁程の電気伝導度が増加し、減圧すると電気伝導性は常圧時に戻ったことから圧力によって重合などの化学反応は進行せず、圧力効果によって電気伝導性が向上したと考えられる。これらの研究成果は当初の実験計画に到達するものであるが、さらに詳細で緻密な測定実験を行うことで達成度はさらに高位に至るであろう。研究期間を1年延長して研究実験を進め、それら含めた研究成果を最終報告として総括したい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の延長によって、超高圧条件下での電気伝導性の再現性や極低温(10K以下)までの温度を変化させて極低温-超高圧における電気伝導性の追加実験の実施や関連する学会発表や論文投稿などによって補助事業の目的をより精緻に達成することができるであろう。また、ルテチウム内包フラ-レンについても、ケ-ジサイズ、内包されたルテチウムの酸化状態、ケージへの電荷移動などの知見を得るため、シンクロトロン放射光を使った光電子分光測定を継続して実験計画中である。最後に、得られた実験結果および考察結果を総括する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画の延長によって、追加実験の実施および関連する学会発表のための旅費や論文投稿のための経費として次年度へ95,471円を繰り越した。
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[Journal Article] Pressure-induced superconductivity in AgxBi2-xSe32018
Author(s)
Tong He, Xiaofan Yang, Takahiro Terao, Takaki Uchiyama, Teppei Ueno, Kaya Kobayashi, Jun Akimitsu, Takafumi Miyazaki, Takumi Nishioka, Koji Kimura, Kouichi Hayashi, Naohisa Happo, Hitoshi Yamaoka, Hirofumi Ishii, Yen-Fa Liao, Hiromi Ota, Hidenori Goto, and Yoshihiro Kubozono
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 97
Pages: 104503-1-8
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Preparation and characterization of a new graphite superconductor: Ca0.5Sr0.5C62017
Author(s)
Saki Nishiyama, Hidenori Fujita, Masatoshi Hoshi, Xiao Miao, Takahiro Terao, Takafumi Miyazaki, Hidenori Goto, Tomoko Kagayama, Katsuya Shimizu, Hitoshi Yamaoka, Hirofumi Ishii, Yen-Fa Liao and Yoshihiro Kubozono
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 7
Pages: 7436-7446
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Structure and transport properties of metal-doped Bi2Se3 topological insulators under high pressure2017
Author(s)
Tong He, Takahiro Terao, Hidenori Goto, Takafumi Miyazaki, Teppei Ueno, Kaya Kobayashi, Jun Akimitsu, Hitoshi Yamaoka, Hirofumi Ishii, Yen-Fa Liao, Yoshihiro Kubozono
Organizer
日本物理学会
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