2015 Fiscal Year Research-status Report
フルオラスケミストリーを指向した新規イオン液体の創製
Project/Area Number |
15K05585
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
本田 光典 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (60242533)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
国本 浩喜 金沢大学, 物質化学系, 教授 (10242538) [Withdrawn]
山口 孝浩 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90272947)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | フルオラス / イオン液体 / グリーンケミストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高変換効率を達成可能な有機薄膜太陽電池の作成過程において、発電層の形成に必要なフルオラスなイオン液体を創製すること、得られたイオン液体を太陽電池のデバイス合成に用いること、グリーンケミストリーを指向する有機合成において、新たな反応場や精製法の簡略化を実現することにある。本年度は、ピロリジニウム系イオン液体の合成し、これを有機薄膜太陽電池の発電デバイスのモルフォロジー制御に利用する計画した。 ピロリジンを出発原料とし、ヨウ化パーフルオロアルキル、ハロゲン化アルキルを順次置換反応させ、対応するアンモニウム塩へと変換し、引き続きLiN(SO2CF3)2、KPF6等で処理してイオン交換し、パーフルオロアルキル一つを有するピロリジニウム塩のライブラリを構築した。得られた化合物群のうち常圧で液体であったのはN(SO2CF3)2塩のみであった。またこれらを分配係数測定によってそのフルオラス性を見積もったところ、いずれも満足のいく性能を示さなかった。よって、フルオラス性向上のために、同一のパーフルオロアルキル基をカチオン部に2つ置換したピロリジニウム塩を合成し、これをイオン交換した化合物群を合成した。しかし、液性を示すものはN(SO2CF3)2塩のみであり、フルオラス性の大きな向上は見られなかった。そこで研究計画を変更し、アニオン部にもパーフルオロアルキルを導入しフルオラス性を付与したイオン液体の合成を検討した。ナトリウムテトラキスパーフルオロアルキルシリルフェニルボレートを調製し、これをアニオン交換剤として用いて対応する塩を合成した結果、これらはフルオラス溶媒に高い溶解性をもつ液体であることが明らかとなった。計画とは異なり応用的利用を検討できなかったものの、高いフルオラスを有するイオン液体の合成はこれまでに例がなく、新規材料として、また、合成化学的にも大変意義深い。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度における本研究の目的は、N-パーフルオロおよびN,N’-ビスパーフルオロアルキルピロリジニウム系イオン液体を合成し、その物性測定を行い、フルオラス性を見積もること、および得られるフルオラスイオン液体の特性を活用して、これまで困難であった有機薄膜太陽電池の発電層合成におけるモルフォロジーの制御、さらにグリーンケミストリーを指向する有機合成において、新たな反応場を形成したり、精製法を簡略化することであった。 イオン液体を合成においては、当初計画していたピロリジニウムカチオンの窒素上にのみパーフルオロアルキル基を有するイオン液体において、充分なフルオラス性を観測できなかった。しかし、アニオン部にも複数のパーフルオロアルキル基を導入することにより、この問題が解決され、フルオラス性を予想より格段に向上させることができた。今後、更なるライブラリーの構築、実用化のための大量合成が必要であり、有機薄膜太陽電池の発電層構築やグリーンケミストリーへの応用には至っていないのが現状である。 上述の様にフルオラスイオン液体の開発に時間と労力が費やされ、応用面において遅れをとっているが、28年度以降に検討を予定していたイオン液体の分子構造とフルオラス性の相関の解明が進行しており、全体として概ね予定通りと考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
27年度に得られた知見をもとに、計算化学等の手法を駆使してイオン液体の分子構造とフルオラス性の相関の解明をさらに進め、フルオラス性向上を指向したイオン液体の分子設計を行う。例えばカチオン部に3個以上のパーフルオロアルキル基を導入する手段を開発することにより、フルオラス性が飛躍的に向上されると予想され、今後の応用的研究を推進できると考えている。具体的には、上述の方法で合成するフルオラスイオン液体を用いて、これまでに本研究者らが開発したパーフルオロアルキル基をもつポリチオフェンとフラーレン誘導体の混合物を溶解(膨潤)することが可能となり、真空蒸着により有機薄膜太陽電池の発電層を合成することができる。得られた発電層の表面構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認するとともに、これを用いて作成した太陽電池の開放電圧、短絡電流密度、フィルファクタを測定し、エネルギー変換効率を明らかにして、発電層のモルフォロジー制御の評価とそのフィードバックによるイオン液体の分子構造の改善が、現実的に可能となるであろう。
|
Research Products
(7 results)