2015 Fiscal Year Research-status Report
超音波造影剤の非接触濃度計測手法の開発と生体内分子イメージングへの応用
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15K06104
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉田 憲司 千葉大学, フロンティア医工学センター, 助教 (10572985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 好章 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60148377)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超音波分子イメージング / 造影剤 / 数密度推定 / 音波減衰 / 後方散乱係数 / 非線形振動 / シェル |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、1)超音波分子イメージングの定量性向上のための造影剤数密度推定法を提案と検証実験、2)シェル材質が造影剤振動特性に与える影響の検討を行った。 造影剤を含む媒質の減衰係数、後方散乱係数は、造影剤の濃度(数密度;単位体積当たりの個数)、粒径分布が既知であれば理論的に計算可能である。したがって、受波エコー信号から減衰係数、後方散乱係数を求め、さらに逆問題を解くことで、造影剤の数密度、粒径分布の推定が可能となる。当該年度では、減衰係数から推定する手法を提案した。直径8 mmの流路に造影剤を循環させ、提案手法を用いて数密度、粒径の期待値と分散を推定した。予め光学顕微鏡により造影剤の数密度、粒径分布を計測し、その値を参照値として正確性を検証した。その結果、数密度、粒径の期待値、分散とも提案手法では過小評価する傾向にあることを確認した。この要因として、理論モデルで考慮できていない造影剤振動の非線形性やシェルによる振動抑圧効果などが考えられた。 後者について、造影剤を覆うシェルは造影剤の振動に影響を与え、その程度はシェルの材質に大きく依存することが知られている。提案する数密度推定法の正確性を向上させるためにはシェルの影響を定量化しておく必要があることから、レーザドプラ振動計による振動計測実験を実施した。Pluronic単分子膜をシェルとするバブルを作成し、膜をもたない自由気泡と振動特性を比較した。その結果、両者の間で差異が確認され、当該システムを用いてシェルの影響を定量化できることが確認できた。今後は、バブルの大きさ、膜材質などについて実際に使用する条件のものを作成し、同様の計測を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
減衰係数の周波数特性から造影剤数密度推定法を提案し、その正確性の検証を行った。その結果、推定法の正確性に関するいくつかの問題は確認されたものの、その原因は想定の範囲内であり、今後の検討で解消できるものと考えている。また、造影剤の数密度推定を行うためには、使用する造影剤固有の特性(シェルの粘弾性の影響)を予め評価しておく必要があるが、その評価手法としてレーザドプラ振動計が使用できる可能性があることを示した。これらの結果の一部については論文発表、学会発表を行っている。上記の理由から、当初の計画に沿って順調に研究が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度では減衰係数を基にした推定アルゴリズムを提案した。提案手法は比較的太い血管内に流れる造影剤を想定した手法であり、造影剤数密度の深さ方向(音波伝搬方向)に対する空間分布は描写できない。実応用では毛細血管内に流れる造影剤が評価対象となり、3次元の濃度分布を画像化することが求められる。この問題を解決するため、局所減衰(もしくは後方散乱係数)を利用する手法を新たに提案する。新たに提案するアルゴリズムに対して、造影剤振動の非線形性やシェルによる振動抑圧効果などを組み込むことで、造影剤数密度の空間分布を高い正確性を持って描出できる手法の開発を目指す。造影剤振動の非線形性を利用すると信号対雑音比の大幅な改善が期待できるため、非線形性を考慮した推定アルゴリズムの開発は正確性の向上に大きく貢献すると考えている。ファントム実験を基軸とした検証実験を予定する。 造影剤の振動特性評価については、リン脂質膜を有する造影剤を使用するという前提で研究を進展する。使用する造影剤は、自作バブルおよびSonazoid®を用いる予定である。レーザドプラ振動計で各バブルのシェル材質の粘弾性を計測し、その値を提案する数密度推定手法に還元する予定である。粘弾性について実測値を用いることで、造影剤数密度をより正確に推定できると考えている。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進展し、複数回の学会発表を行うことができたため、旅費が予定よりも超過する傾向にあった。計測システムの構築に予想以上の費用がかからなかったため、結果的にほぼ当初の計画どおりの費用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降の使用計画として、消耗品費用(造影剤作成用の薬品、計測システムの部材)、旅費、謝金に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)