2015 Fiscal Year Research-status Report
ビジョンセンサを用いた非接触・非拘束なロコモ診断システムの構築
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15K06142
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
櫛田 大輔 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30372676)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | ロコモティブシンドローム / スクリーニング診断 / 体幹姿勢 / クラスタリング / ニューラルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題はロコモティブシンドローム(通称ロコモ)を早期発見するためのスクリーニング診断システムを構築することにある.厚労省の調査によると,ロコモは要介護原因の最大割合を占めており,メタボリックシンドロームや認知症との相関性も高いことが調査研究で示されている. 当該年度の実施としてまずはハード面について述べる.理学療法士(PT)がロコモ診断する際,歩行動作に基づいて行っていることに着目し,ゲート式の歩行測定装置について3台試作を行った.ゲート上部にはビジョンセンサ(マイクロソフト社製Kinect)を設置し,ゲート下部を患者が歩行することで歩行時の動的な骨格情報を推定・検出する仕組みである.また,ゲートには各種アタッチメントを取り付けられるよう設計しており,全天球カメラや広角カメラを同時設置することで,歩行時の周辺状況についてデータ取得が可能である. つぎに,ソフト面について述べる.2年前より鳥取県日野郡日野町の特定健診に参加して,高齢者のデータ取得を行っているが,当該年度についても約200名のデータ取得を実施した.取得したデータの一部についてPTにロコモ診断を実施してもらい,その結果と患者の動的な骨格情報(主に体幹姿勢)に対し,クラスタリングおよびニューラルネットワークによってロコモ患者をスクリーニングするためのアルゴリズム開発を実施した.結果として89%の検出率(未検出0人)という良好な結果が得られた. 一般的なロコモ診断では,患者の自己申告,足腰に負担の掛かる運動テスト,PTによる目視診断が行われている.これらは定量化されていないため,PT毎に診断が異なる場合やインフォームド・コンセントが難しいといった問題が挙げられている.当該年度の結果(主にソフト面)は定量化が実現可能であることを強く示唆しており,本研究課題の当初目的を達成できる見込みを示すことができたと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究には,ロコモティブシンドロームを診断するためのシステムを構成する機器や装置の設計・製作といったハード面と,自治体の特定健診において高齢者データの取得および診断アルゴリズムの改善といったソフト面が存在する.科研費の採択決定が10月であったことから,主に活動資金を必要とするハード面の遂行に半年程度の遅れが生じている.当初の予定では,ゲート式歩行測定装置を新たに設計・製作を行い,それを複数台用いた長距離歩行の取得を可能にすることをハード面では目指していたが,今年度はゲート式歩行測定装置の製作完了までを実施するに留まった.残された長距離歩行の取得に関しては,次年度の初頭の課題として遂行する予定である.それに対してソフト面は,予定されていた全ての項目を滞りなく遂行することができており,次年度の内容についても一部先行して実施している.ソフト面を実施するにあたり,ゲート式歩行測定装置には従来研究で作成した旧式を利用した.旧式は画像解像度が低く,ゲートの剛性が不足しているため正確なデータ取得やデータ欠落といった問題が稀に生じる.そのため,今年度得られたソフト面の成果については,新型のゲート式歩行測定装置を用いて再検証する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の課題を実施する.1)今年度積み残し課題であるゲート式歩行測定装置を複数台用いた長距離歩行計測システムの完成,2)日野町における特定健診を利用した高齢者の歩行データ取得,3)取得データに基づくロコモスクリーニングアルゴリズムの改訂.
2)は定期的に実施しているため問題なく実施可能である.3)は一部を本年度に先行的に実施しており良好な結果が得られているため,データ数の増加およびアルゴリズムの改善点の抽出など問題なく実施可能な課題である.上記に挙げた課題1)以外は当初予定していた通りであり,1)の実施が加わることで影響を受けるものではない.
本研究課題は,鳥取大学医学部附属病院が実施している鳥取県日野郡日野町を研究フィールドとして活用している.附属病院の理学療法士からも期待されている研究課題であることから,今後も定期的な打ち合わせを通して研究を推進させる予定である.また,研究内容について論文にまとめて学会に発表し,他研究者からの査読を受ける予定である.さらに,次年度はホームページに研究成果を公表し,広く一般人への認知および意見収集に務めたい.
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Causes of Carryover |
科研費の採択通知が10月であったため,研究実施内容の一部に遅れが生じた.具体的には,提案システムのハード面(ゲート式歩行測定装置)での設計・試作に遅れが生じている.ハード面の設計・試作については学内工場への外注を行っているため,工場担当者との打ち合わせや使用現場環境に合わせた調整など,時間を要する作業が必要である.今年度は使用機材の設計とそれに基づくプロトタイプの試作までを完了することができたが,使用現場での設置確認・データ取得確認・調整を実施することができず,結果として次年度使用額が生じることとなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
5月末に自治体の協力を得て,高齢者のデータ取得を行う予定となっている.その際に,今年度試作したゲート式歩行測定装置を用いる予定である.ゲート式歩行測定装置は3台のプロトタイプを試作していることから,3台全てを用いた長距離歩行データの取得の可否についてデータ取得を行う.これらの取得データに基づいて,ゲート式歩行測定装置の修正点抽出,ならびにゲート同士の位置関係の検討を行い,簡易設置においても一定精度のデータ取得が可能となるよう設計およびプロトタイプの修正を行う.また,ゲート式歩行測定装置に取り付けるビジョンセンサには各々1台の解析用計算機が必要であり,必要台数の確保も行う.次年度使用額はこれらの修正・追加のために利用する.
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