2017 Fiscal Year Research-status Report
ビジョンセンサを用いた非接触・非拘束なロコモ診断システムの構築
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15K06142
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
櫛田 大輔 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (30372676)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 主成分分析 / 相関係数 / ニューラルネットワーク / 中間層 / 床反力推定 / 筋骨格モデル / 筋活動推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の実施項目は,1) 鳥取県日野郡日野町の健診事業においてKinectを用いた高齢者の歩行データを取得すること,2) 昨年度構築したロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)判断モデルを用いた再現性の確認,3) モデル入力から理学療法士(以下,PT)の暗黙知の抽出,の3点である. 1)については,上記健診事業を5月31日からの3日間で実施し,244名に対して従来通り105項目の疫学データを得た.2)については,昨年度に主成分分析によって抽出した10個の指標について,関連研究論文を調査した.その結果,歩行に伴う上下振動から得られるストライドおよびステップの指数がロコモと強い相関性を示す調査研究があった.そのことから,昨年度抽出した10項目において同指標の持つ相関値(0.7)に基づいて最終的に8つの指標に絞り込んだ.さらに,8つの指標を入力とするニューラルネットワークに構造を変更し,K分割交差検証によって複数の中間層を持つ構造について検証を行うことで中間層は10とすべきであるとの結論を得た.今年度は昨年度構築したモデルの正当性を確認することを主として実施したが,これは再現性の確認と同等の意味をもつものである.3)については,2)で抽出した8つの指標についてPTにアンケート調査を行うことで実施した.その結果,PTが意識する指標の全ては8つの項目に含まれていた.PTが意識していない指標は「1歩行周期」と「両脚支持期時間」であった.これらはPTの暗黙知に相当するものであると予想される. つぎに,ロコモ診断をより定量化する手法として,Kinectから得られた歩行データを用いて床反力を推定する新たな試みも行った.結果として,Kinectから得た骨格座標情報と推定した床反力を筋骨格モデルに入力することで,非接触に筋活動を知る可能性を見出せたことから,ロコモの原因部位特定が今後期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標3つについて,滞りなく結果が得られており,かつ,当初想定していた以外のテーマ(Kinectによる非接触な歩行中の筋活動推定)について実施できていることから当初の計画以上の進展があると判断する. 当初の目標に掲げた3つについては,想定通りの結果が得られており,特にロコモ判断モデルについて昨年度抽出した10項目から更に相関性が高く,必要最小限の8つにまで絞り込むことができている.また,この8項目は他研究の文献やPTへのアンケートからも裏付けが取れており,信憑性の高い指標として価値のあるものである.さらに,この8項目に基づいて構築されたニューラルネットワークの中間層についても,データに基づき10個が望ましいと決定された点も価値がある. つぎに,本研究課題を実施するにあたりロコモの判断のみならずその原因をも予測できることが重要であるとの声がPTから得られ,それに基づいて本研究課題に追加で加えた筋活動の推定技術については,類似研究は国内外でもほとんど見られず,国際学会での講演を通して大いに価値があることが確認されている.本課題も含めた総合的なロコモ判断システムとして社会還元できる可能性を見出せたことは計画以上の進展と言える.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成30年度は,6月上旬に予定されている鳥取県日野郡日野町の住民を対象とした健診事業に参画し,今年度構築したロコモ判断モデルの精度を確認する.また,不定期ではあるが,鳥取県米子市の一部地域でも同様の健診事業が予定されているため,適宜ブラッシュアップさせたロコモ判断モデルを導入して判定精度の確認を行う.最終年度の目標は,研究成果を一連のシステムとしてい統合し,PTと同等の判断を目指すことである.組込める機能から逐次組み込み,検証と改善を繰り返し,本研究課題の目標達成に向けて取り組みを行う. 同時に,これまでの研究成果を国際会議で発表するとともに,査読付論文へ投稿する.
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Causes of Carryover |
今年度の実験補助者として1名雇用予定であったが,雇用予定者の都合が悪く雇用日に雇用できなかったこと,また,打ち合わせが予定よりも2回少なく,打ち合わせ先までの交通費に余剰が出たことが主たる原因である.平成30年度は,最終年度であるため打ち合わせ回数が増すと予想されるため,余剰分をその打ち合わせ旅費として活用する予定である.
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