2016 Fiscal Year Research-status Report
大規模ネットワークシステムの完全分散最適化理論の体系化と社会システムへの応用
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15K06143
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
櫻間 一徳 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10377020)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分散最適化 / 分散制御 / マルチエージェントシステム / リアルタイムプライシング / スマートグリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度開発した完全分散制御法を電力システムの制御に応用する方法論を構築した.ここで想定する電力システムは,エージェント(家庭またはアグリゲータといういくつかの家庭を束ねる機構)による交渉によって電力価格を決め,電力使用量を変化させる,交渉型リアルタイムプライシングが実装されているものである.構築した方法論は,電力システムが安定的に同時同量(電力需要量と供給量を一致させること)を達成するための交渉の手順,つまりプロトコルである.提案法は,通信ネットワークでつながっている相手とのみ交渉が可能であるという分散型プロトコルに基づいていることが特徴である. 次に,提案プロトコルによって同時同量が達成されるための通信ネットワークの構造的な条件を明らかにした.その結果,強連結性という,どのような二つのエージェントも一方からもう一方へ辿ることのできる構造が必要であることがわかった.これは必要最低限な構造を表すため,通信ネットワークにおける余分な通信経路をカットすることを可能にする. 最後に,マルチエージェントシミュレータ「artisoc」によるシミュレーションを行った.この際,交渉型リアルタイムプライシングが実装されている電力システムにおいて,発電機一台が故障するというシナリオを想定した.実際に,提案する分散型プロトコルが効果的に働き,電力不足を解決することをシミュレーション上で確認した. 今後,エネルギー不足に伴い,消費者の情報を利用することで,効率的に電力システムを運用することが期待されている.提案プロトコルは,大量に存在する消費者の情報を集約することなく実行できるため,安価な情報インフラによってリアルタイムプライシングを実現することを可能とする.以上より,本研究の結果はスマートグリッドの基礎技術となり,将来のエネルギー不足問題を解決できることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していた電力システムの制御への方法論を構築し,シミュレーションが完了した.さらに,その成果が査読付き学術論文 IEEE Transactions on Industrial Electronics および IEEE Transactions on Control of Network Systems という電気工学および制御工学の分野における権威ある雑誌に採択されており,研究成果が分野で認められていることが裏付けられた.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,提案法を広域センサネットワークに適用し,環境測定実験を実施することで,提案する完全分散最適化の有効性を示す.特に,大量のセンサにおいて得られたサンプルから区画全体の観測値の分布を推定する方法について検討する.まず,平成27年度に得られた結果をもとに,分散的に解決できる最適化問題のクラスの中から観測値分布の最も正確な近似関数を見つけることで,最適な分散推定アルゴリズムを導出する.次に,提案アルゴリズムによる環境観測実験を実施する.観測対象として,土壌の温度分布の多点測定を行う予定である.以上によって,従来法より温度の推定精度が向上することを確認し,提案法の優位性を示す.
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Causes of Carryover |
本年度は当初の予定していた発表ができなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際会議での発表および論文投稿費として使用し,外部へのアピールを強化する予定である.
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Research Products
(12 results)