2015 Fiscal Year Research-status Report
炭酸カルシウム法地盤改良の低コスト化-空気後注入技術の開発-
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15K06218
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Research Institution | Wakayama National College of Technology |
Principal Investigator |
林 和幸 和歌山工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (30587853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 彩乃 和歌山工業高等専門学校, 環境都市工学科, 助教 (30736153) [Withdrawn]
米光 裕 和歌山工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (20290778)
青木 仁孝 和歌山工業高等専門学校, 環境都市工学科, 助教 (80775809)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地盤改良 / 炭酸カルシウム / 微生物代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、原位置の微生物を励起し、その代謝活動を利用して土中に炭酸カルシウムを析出させる地盤改良技術開発に資する基礎的知見の収集を目的としている。 平成27年度は、現場で深さ15mの調査ボーリングを2本実施し、そのうち1本に対し深さ1mごとに地盤中での炭酸カルシウム析出を可能にする原位置微生物の存在を調べた。その結果、ある特定の深さにおいて目的の機能を有する2種類の微生物の存在を確認できた。さらに、それぞれの菌株に対し遺伝子解析と同定も合わせて実施しこれを完了した(残りの1本は平成28年度解析用)。 地盤内における炭酸カルシウム析出および固化の特性を調べるため、直径50mm、長さ100mmの砂供試体に対し微生物薬液とカルシウム塩薬液を通水したところ、その析出の均質性が確認されただけでなく、一軸圧縮試験を行いその強度も改良されることを明らかにした。比較実験として、当該微生物と同様の目的の機能を有するウレアーゼを微生物の代わりに利用し同種の実験を実施したところ、薬液通水過程で間隙が閉塞し、注入口近辺のみで炭酸カルシウムが析出する極めて不均質な析出となった。このことより、ある薬液濃度においては、炭酸カルシウム析出における微生物利用は、改良体の均質性確保に有利であることが明らかとなった。 走査型電子顕微鏡を使い砂粒子表面に析出した炭酸カルシウムを観察したところ、棒状の微生物体が炭酸カルシウムであるギャップを保ちながら取り囲まれている明確な状況を確認できた。このことから、炭酸カルシウム析出の一連の過程における微生物の役割は、その周囲に析出環境を作るということであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微生物の同定と解析、観察から期待以上の成果が得られたこと、次年度分の調査ボーリングを実施できたことから、この範囲においては予定より早い進捗であった。また、採取微生物を利用した土の強度改良とその効果の検討は平成28年度以降が当初予定であったところ平成27年度から実施できたため、全体に研究は順調である。 他方、微生物薬液注入によるその力学特性の時間変化および、炭酸カルシウム析出と固化に関するより広範囲な分布についてはまだ捉えきれていない。その点において今後改善を要すると考えている。 以上より、全体に極めて順調ながらも、予定に対し補足できていないデータの存在を加味し、研究は「概ね順調」に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
目的微生物の存在の調査やその活性、遺伝子解析およびその同定はこれまで通り進める。一方今年度より、微生物生態解析を専門とする研究分担者を追加し体制を強化できたため、従来の研究に加え、微生物励起後における地盤の微生物生態変化とそれによる土の間隙の化学的環境変化の補足を実施する。これは、想定している技術の現場適用による環境影響の推握だけでなく、現場に対する本技術実施可否の判断に対し極めて重要な情報を与えると我々は考えている。 力学特性変化の補足と模型実験については、平成28年度の間、その研究担当者が同種の研究を実施している海外の機関で研鑽を重ねており、その成果を受け研究の高度化を図った上で実施する。
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Causes of Carryover |
使用額に当初と差異が生じた主たる理由は、(a)地盤固化薬液の二次元浸透特性の理解の基礎情報となる一次元浸透特性の把握を優先して実施したところ、本実験の比較対象とした疑似薬液の通水において、想定していなかった間隙閉塞が生じその検討に時間を要したこと、(b)その状況を鑑み、本年度実施予定であった二次元浸透特性把握の実験、およびその装置の製作が未実施であること、の2点である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
比較実験である疑似薬液通水において間隙閉塞が生じた一方、本実験である微生物薬液通水は問題なく実施でき、想定した砂試料の固化まで確認できたことから、二次元浸透特性の実験、研究に進むことが可能である。 平成28年度は装置の高度化検討と製作準備を進め、採取微生物を利用した本実験を当初予定どおり最終年度の平成29年度序盤から実施する計画である。
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