2015 Fiscal Year Research-status Report
HSIモデルの外れ値からみる合理的なアマモ再生手法の開発
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15K06268
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野村 宗弘 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70359537)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生態系修復・整備 / 土木環境システム / 海洋生態 / 自然再生 / 環境修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災により被害を受けた他の湾は回復が進んでいるのに,松島湾は回復が進んでいない.また,砂地から砂泥地がアマモの生育条件とされているのに,松島湾においては泥場になぜアマモが生育できるのか.という研究課題に対して,泥場におけるアマモ生育のための機構を明らかにするとともに泥場におけるアマモ場の再生手法の開発を目的とした研究に着手した. 2015年度は,アマモの生育状況および生育環境調査として,松島湾におけるアマモの分布状況の確認,震災前後におけるアマモ場消長のパターン解析,アマモ生育場および非生育場における環境調査を実施した. 2015年4月に大潮の干潮時に松島湾全域を船と車で移動しながら目視でアマモ場の分布状況を確認した.震災前(2007年6月)の分布状況は,アマモ場面積2,130,000m2に対して,震災後の分布面積は310,000m2で約15%の回復状況であった. 次にアマモ場分布調査の結果について,震災前(2007年),震災直後(2012年),震災後(2015年)におけるアマモ生育の有無でパターン分けを行った.その結果,震災後,全くアマモが回復していない海域が最も多かったが,震災前から残存している海域や震災後に回復が確認できる海域,震災前にはアマモが生育していなかったが震災後に生育が確認できる海域などの存在が明らかとなった.このパターン解析の結果,今後実施する予定のアマモの機構解析および移植地点の水域を決定することができた. パターン解析の結果を踏まえ,アマモ生育場およびアマモ非生育場における環境調査を2015年11月に実施した.船の上からエクマンバージ型採泥器を用いた採泥(表層から2cm)を行い,粒度分布,強熱減量および全硫化物を分析した.今後,底質調査の結果をパターンごとに解析,考察する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,泥場においてアマモが生育できる理由ならびにHSI値の高い場においてアマモが生育できない理由を解明することを目指し,松島湾にわずかに残るアマモ場の光・水理・底質などの生育環境条件,生育場の拡大傾向の詳細な現地調査を行うとともに,水槽実験において播種法,移植法などの比較検討を通じて松島湾特有のアマモの生育環境条件・生育機構を解明することを目的としている. 平成27年度は,「アマモ生育状況及び生育環境条件の調査」として,アマモ生育環境に関する既往研究の整理を行った.全国のアマモ場の自生地ならびに造成地におけるアマモの生育状況,生育環境条件に関するデータを文献調査し,場の特性,水理・水質環境,底質環境に関するデータベースを作成した. また,「アマモ場分布に関する現地観測」を震災後平成24~26年と継続してきた松島湾藻場分布調査を継続し,平成27年のデータも取得して震災後の藻場の状況・推移を明らかにした. 上記の結果を踏まえ,震災前後におけるアマモ生育場および非生育場をパターン解析し,各地点において「生育環境条件(特に底質)に関する現地観測」を実施し,その差異について考察を行った. さらに,「泥場におけるアマモ場の再生手法の開発」として,これまでアマモの移植方法として報告されている竹串法及びポット法による移植法の検討を開始した. 以上のように個別の研究テーマがおおむね順調に進展していると自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,「アマモ場分布に関する現地観測」として,前年度までの現地観測の成果をまとめ,解析を行い,松島湾での震災後のアマモ回復状況の特徴などを示す.当該年度に行う現地生育実験の場所を決定する.また,「生育環境条件に関する現地観測」として,前年度の現地観測の成果を解析し,松島湾でのアマモ生育環境条件の特徴(生息場,非生息場の環境条件の違い)を明らかにする.特に「底質の巻き上げ→直上水の濁度→底層の光環境→アマモ生息環境の評価」の考えに基づき,松島湾では泥質でもアマモが生育できる理由の解明に向け,底質の特性(粘性,付着藻類の存在)と流速の関係解析,巻き上げ限界流速の解明などを行う. 「泥場におけるアマモ場の再生手法の開発」として,竹串法及びポット法による移植法の流出率,再生産率について評価する予定である. 平成29年度は「アマモHSI(生育地適性評価)モデルの再構築」を目指し,アマモが再生した場所と再生しない場所の環境条件の違いを再整理し,アマモHSIモデルを再構築する.また,アマモが再生したことによる環境変化(流れの静穏化効果,巻き上げの抑制効果)について現地データを取得するとともに,理論的解析も並行して行ない,アマモと環境の相互作用に関する知見をまとめる. さらに,泥質場におけるアマモの再生手法に関してアマモの生育状況・水理条件・底質条件・アマモ種子草体の供給状況の相互作用を考慮したHSIモデルを新たに構築し,実験結果と調査結果とあわせて泥質場などのアマモ再生手法としてまとめる予定である.
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Causes of Carryover |
現地調査の回数が計画時よりも少なかったため差額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の現地調査の回数・人員を増やす予定である.
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