2015 Fiscal Year Research-status Report
住宅確保要配慮者への民間賃貸住宅提供における平時・非常時の横断的な居住支援の検討
Project/Area Number |
15K06376
|
Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
新井 信幸 東北工業大学, 工学部, 准教授 (20552409)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米野 史健 国立研究開発法人建築研究所, その他部局等, 研究員 (60302965)
古山 周太郎 東北工業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80530576)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 居住支援 / 民間賃貸 / 東日本大震災 / 住宅確保要配慮者 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成18年度より実施してきた民間賃貸住宅に関する居住支援を実施しているNPO等の民間団体(30団体)を対象にしたヒアリング調査の記録に最新情報を随時収集してきた。行政、不動産業者、NPO等が連携して居住支援に取り組む仕組みとして、都道府県および市町単位で設立されている居住支援協議会の実態把握調査を実施した。さらに、岩手県内沿岸部の不動産業者へのヒアリング調査を実施した。 居住支援団体調査は、これまでの情報を「1.入居時支援/2.居住時支援/3.退去時支援」に分類し、それらに具体的な支援策で細分類して位置付ける作業を行った。また仙台にある障害者やホームレス等の居住支援を実施する団体にヒアリングし、被災者への居住支援対応について被災直後から具体的な動きは特にみられなかったことがわかった。退去後の住まいとして想定される民間賃貸住宅に空き家が少なく、仮設住宅退去予定世帯(仙台市内1世帯)に対して、物件ニーズ等を確認したところ、支援団体が照会できる物件とはマッチングできなかった。 居住支援協議会調査は、岩手、宮城、福島、神奈川、愛知の居住支援協議会担当者および関係者へのヒアリングを実施した。被災三県の協議会は、震災以降に設立されたこともあり、被災者への対応の実績はほとんどみられなかったが、福島は、家賃債務保証等のサービスを設けるなど支援体制の充実は図られていた。神奈川、愛知は協議会設立以前から行政、不動産業会、居住支援団体と連携しながら実績を積んでおり、平時の支援は体制および実績も充実しているが、震災における遠方避難被災者への支援の実績はみられず、対応の検討もしていなかった。 岩手県内不動産業者へのヒアリングは4件実施した。不動産業者は震災直後から管理物件への対応や殺到する入居希望者への物件紹介などの業務を担い、さらに借り上げ仮設制度の再度契約を結び直す業務に追われていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、①東日本大震災での入居時支援におけるマッチングの実態と課題の調査、②東日本大震災での居住時支援の活動実態の調査を、都市部と地方部において、行政、不動産業者、支援団体を対象に実施を予定していた。 都市部(仙台市内)の居住支援団体(NPO法人みやぎこうでねいと)から実態をヒアリングしたが、被災者への対応実績はみられなかった。また、岩手、宮城、福島の居住支援協議会の担当者・関係者からも、入居時・居住時支援の実態は把握できなかった。一方、地方部(岩手沿岸部)の不動産業者へのヒアンリグでは、一般被災者の入居対応や管理物件対応に追われていたことが伺えたことから、通常の体制のまま、非常時に住宅確保要配慮者に対して居住支援を実施するのは困難が生じることが推察された。なお、行政、都市部不動産業者、地方部支援団体への調査については、それぞれ先方の準備の都合もあり、平成28年度に実施する方が充実した調査が実施できると考え、時期を引き伸ばして実施することにした。 一方、平成28年度以降に実施予定にしていた「居住時支援における平時の取組との比較検討」「東日本大震災での退去時支援の実施状況の調査」を前倒しして実施した。居住時支援における平時の取組については、非常時の居住支援調査を進める上で、これまでの調査からの知見を整理してからの方が、より充実した調査が実施できると考え。前倒しして過去に調査してきた30件に最新情報を追加し、比較検討のための整理を行った。また、東日本大震災での退去時支援の実施状況については、入居時・居住時とともに支援団体へのヒアリングを実施したことから、結果的に前倒しして進めることになった。 このため部分的に遅れているところもあるが、反対に前倒ししている部分もあり、トータルとして順調に進められていると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降は、平成27年度に実施予定であった、東日本大震災での入居時・居住時支援における行政、都市部不動産業者、地方部支援団体への調査を把握する。具体的には宮城県・仙台市および岩手県・住田町にヒアリングを実施し、都市部の不動産業界へはヒアリングおよびアンケート調査を実施する。地方部支援団体は、住田町の支援団体からヒアリング調査を予定している。「入居時支援における平時の取組の適用可能性の検証」として、住宅確保要配慮者(高齢者、障害者、外国人、DV被害者など)の特性別や個々の事情別に、平時の対応を非常時にどこまで出来るかを検討する。そのうで、平時に居住支援を行う団体へのヒアリングやアンケートを実施し、非常時にどの程度対応可能かを把握する。また非常時と平時の支援の内容や体制、コスト等に関して比較し、平時の工夫を活かした形で非常時の対応を効率化する可能性について検討する。さらに、東日本大震災での退去時支援の実施状況から、平時の取組の適用方法についても検討する。そのうえで、今後の災害における支援実施の方策及び体制の検討を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
調査対象者の都合等から行政および都市部不動産業者、地方部支援団体への調査については、調査内容の充実をふまえて平成28年度に実施することにしたため、支出が当初より少額となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度未使用分は下記の使用を予定している。行政への居住支援ヒアリング調査(岩手県、宮城県、福島県および仙台市、住田町等)にかかる旅費及び記録作成等の人件費。都市部不動産業者においては、日本賃貸住宅管理協会、および全国賃貸住宅経営者協会連合会のそれぞれ宮城県支部に協力を仰ぎ、各不動産店へのアンケート調査(200件程度)およびヒアリング調査(10件程度)の実施を予定しており、それらにかかる費用一式。地方部(住田町)支援団体(3団体)への調査にかかる旅費及び記録作成等の人件費。
|