2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K06383
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
村井 裕樹 日本福祉大学, 健康科学部, 准教授 (30455563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 英祐 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50167011)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 片まひ / 避難安全 / 防災訓練 / 火災 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画は、一部項目を除き、概ね計画通り実行できた。以下、具体的に記載する。 1.片まひ者の火災時における避難安全の意識に関する研究:防火と避難について、自宅での対策、意識・経験(実際の災害と訓練)について調査を行った。その結果、①自宅での対策は十分ではなかったが、可燃物の管理を行うことや足下灯や常夜灯を利用しての避難経路の確保など工夫している人もいた。また、共同住宅の居住者は避難時にエレベータが使用できないことについて不安の意見が得られた。②防災訓練への参加者数は少ないが参加を希望する意見は比較的多かった。課題として、防災訓練の情報を得られてない点(知らないこと)、訓練会場までの移動手段が不十分であることなどがあり、支援の必要性について知見を得られた。以上の結果は学会への論文として投稿した。 2.避難行動に関する研究(避難行動・防火戸の開閉):実験方法の整理、実験会場の設定、対象者の選定について検討を完了した。片まひ者による実験の実施については平成28年度に変更した。 実験方法等の検討結果は次のとおりである。①方法と会場:当初は建物に設置されている防火戸を使用した実験を想定したが、検討の結果、避難行動の中でも特に防火戸開閉行為自体に関する詳細なデータ収集の必要性が分かったため、実験状況を厳密に設定するために実験室を用意してその中に防火戸を設置し実験することになった。②対象者:健常者で実施した防火戸開閉動作の検討から一定以上の身体機能が必要と想定されたため、対象者は比較的身体機能の高い片まひ者とすることとした。以上の事前検討を済ませ、平成28年度に滞りなく実施する準備を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、片まひ者の火災時の避難安全を検討するための基礎的資料を得ること、特に、片まひ者の防災に関係する生活実態と防災意識について把握することを中心に進めてきた。 本研究では、片まひ者の「生活実態・意識」と「避難動作」を把握することが軸であるが、平成27年度は「生活実態・意識」について細かく把握することができた。具体的には、片まひ者へのヒアリング調査から、自宅での防災対策がやや低いこと、しかし防災訓練に参加したいという希望は高く、情報面等で参加を支援する工夫が必要であること、防火戸の開閉には力が必要であるため一定以上の身体機能の片まひ者を被験者とすべきことなど一定の基礎的知見が得られている。 しかし、当初計画していた片まひ者による避難実験については、実験方法や計測方法の検討および健常者による防火戸開閉動作の検討を通して得られた結果から、片まひ者のより基礎的な避難行動のデータを得る必要性(実際の建物を利用した実験よりも、実験室を設定して避難行動を計測する必要性。特に防火戸の開閉行為自体に関するデータ。)がわかった。そのため、データ取得の精度を高めるために研究計画を再検討し、片まひ者による避難実験は平成28年へと変更した。そのため進捗状況はやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、片まひ者の防災意識や防火戸開閉実験への基礎情報が得られたため、今後は、得られた知見の社会への還元、および片まひ者による防火戸通過実験を中心に研究を進めていく。そのために、以下のとおり推進方策を行う。 1.平成27年度の成果の社会への還元を行う。具体的には、①日本建築学会大会での論文発表を行う(論文投稿済み)。②福祉技術に関する展示会への出典を行う(7月末予定)。これらの活動を通して、片まひ者の避難安全の課題について得られた知見を広く周知する。 2.実験実施に向けての詳細な検討(防火戸設置位置、撮影箇所等)を行う。特に、既往研究等を参考にし、避難行動の撮影方法と結果の分析方法について更に検討を進める。 3.「2」の結果をふまえ防火戸の通行実験を行う(10月予定)。実験施設の確保はすでに完了しており、十分な実験スタッフを確保して安全性に配慮し綿密なデータ収集を行う。 4.「3」で得られた結果の分析を行い、研究論文等を作成し知見を社会に還元する。
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Causes of Carryover |
当初、防火戸を使用した避難実験は建物に設置済みのものを使用する計画であったが、検討の結果、実験場所(実験室)に防火戸を新たに設置して実験を行う必要性がわかった。さらに、健常者による防火戸開閉動作の検討で得られた知見もふまえて実験計画の再検討を行い、片まひ者を対象とした本実験は次年度の実施に計画を修正した。 そのため、防火戸の制作、運搬、設営に多くの費用がかかることが想定されたため、多くの予算を次年度へ繰り越した。 あわせて、上記実験に伴い必要となる計測機器等の購入も、次年度へ繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費の主な使用計画は以下のとおりである。 ①避難実験の実施にあたり、防火戸の制作、運搬、設営、また、実験の計測機器(ビデオカメラ等)の購入に使用する計画である。②避難実験の被験者に対する謝金、実験実施の補助者に対する謝金、実験データ入力者への謝金、実験会場への交通費として使用する計画である。③避難実験時にあわせて被験者へのアンケート調査を予定しており、印刷費として使用する計画である。
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