ルネサンスの理想都市に見る中近世の都市空間の変容に関する研究

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K06404
• Research Institution: Japan Women's University
• Principal Investigator: 片山 伸也 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (80440072)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 青木 香代子 日本女子大学, 家政学部, 研究員 (00597065) ; 赤松 加寿江 京都工芸繊維大学, グローバルエクセレンス, 講師 (10532872)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: イタリア / 都市史 / 中世 / ルネサンス / 都市組織

Outline of Annual Research Achievements

平成28年度は、前年度の計画に基づいて、フェラーラ、モデナ、レッジョ・エミリアの3都市について、資料収集と現地調査を行った。フェラーラは教皇領であったため、近代化以前の市街地の状況を示す史料としてローマ教皇グレゴリオ16世によって1835年に編纂された地籍図“Catasto Gregoriano”を入手して歴史的中心地区の分析の基礎資料とした。また、エルコレ1世による都市拡張に関する近年の研究成果に関する刊行資料を収集した。
17世紀以降のエステ家の拠点であったモデナおよびレッジョ・エミリアについては、自治体提供のGISデータをもとに分析を行った。特に、レッジョ・エミリアについては、歴史的中心地区の平面形式による建築類型、様式的特徴の分析データと地籍図も入手し、昨年度入手した18世紀の古絵図史料とともに分析の基礎資料とした。
レッジョ・エミリアの都市空間に関する分析としては、都市形成過程と建築類型の分布状況の比較、古絵図史料との比較による都市構造の復元的考察、現在のレッジョ・エミリアの社会統計データとの比較から、街区ごとの社会階層と都市構造の関係について分析を行った。更に、都市の公共空間（通りおよび広場）と居住空間を結びつけるポルティコについて、構造的特徴と様式的特徴をデータベース化し、上述の都市構造の分析と対応させて相関性を考察した。
また、ローマにおける中世からルネサンス期の都市空間の変容として、ジュリア通り周辺の都市組織の分析を行った。基礎資料としてローマ大学建築学部作成の実測平面図を用い、平面形式の類型化とファサード構成要素の相関性の分析および近代化以前の状況を示す史料としての地籍図“Catasto Gregoriano”をここでも併用し、同時期に開通したルンガーラ通りおよびリペッタ通りと比較しながら、都市組織におけるジュリア通りのルネサンス性を考察した。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

昨年度の計画に基いて、調査対象としたフェラーラ、モデナ、レッジョ・エミリアの３都市について資料収集ならびに実地調査を遂行できた点は、概ね予定通りの進捗と言えるが、その分、当初の研究計画の中で予定していたルネサンスの建築論おける理想都市の都市空間については、先行研究の収集ならびに原典の講読の進捗が十分遂行できたとは言えない状況である。
平成２９年度までの３ヶ年に実地調査の遂行を優先している結果ではあるが、今後は建築論における都市空間の分析も並行して進める予定である。

Strategy for Future Research Activity

フェラーラ、モデナ、レッジョ・エミリアの都市組織の分析と、ポルティコの類型と分布から見た都市構造の考察を引き続きを行う。特にレッジョ・エミリアについては、ここまでの研究成果を学会論文等で公表する予定である。
ルネサンス期の建築論における理想都市との比較については、研究分担者との講読を進めると共に、都市条例の街路に関する条文を収集し、理論と政治的意図および実現された都市空間の３点から立体的に近世都市空間の様態を考察する予定であり、平成２９年度は３都市に加えて実現した理想都市とされるパルマ・ノーヴァの実地調査も予定している。

Causes of Carryover

当初購入予定であったルネサンス期の建築論に関連する図書の購入が想定を下回ったことならびに、データ整理に関わる人件費が想定を下回ったことによる。

Expenditure Plan for Carryover Budget

関連図書の選定と購入手続きを遅滞なく行うこととし、未整理の平成28年度分の調査データの整理ならびに加工を年度早々に行うことで、早期に使用する予定である。