2016 Fiscal Year Research-status Report
石造ドーム住居「トゥルッリ」のレスタウロ:再生・利活用に関する実践的研究
Project/Area Number |
15K06407
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
黒田 泰介 関東学院大学, 建築・環境学部, 教授 (70329209)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 南イタリア / トゥルッリ / パイアーレ / レスタウロ / ドーム / 空石積み / プーリア地方 / 都市組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は南イタリア・プーリア地方に見られる、石造ドーム構造を用いた伝統的な住宅建築であるトゥルッリTrulliに関して、その形態及び建築構法、さらに環境工学的観点から調査・分析を行い、実際の修復計画への参画を通じて、歴史的建造物のオーセンティシティを尊重したレスタウロ:再生・利活用方法のあり方を、実証的・実践的に論考していくことを目的とする。 平成28年度はトゥルッリTrulliの一種であり、これまで研究対象として取り上げられることが少なかったパイアーレ Pajareに焦点を絞り、この種の建築物が集中しているサルヴェ市周辺にて現況実測調査を行った。今回の調査に当たり、考古学者M.Cavalera氏(Associazione Arches)、レッチェ大学V.Cazzato教授の協力を得られた。現地にて関連文献および再生・改修時の図面資料、史的資料等の文献収集を進めた。トゥルッリとは異なるジッグラト状のドームをもつパイアーレの形態、内部空間の形状を、建築材料や架構方法および組積技術から考察すると共に、農業施設として特徴的であるドーム上のテラスおよび建物周辺の石垣や竈、家畜の通路、オリーブの木用の堤など、石材を多用した生活環境のあり方に着目し、各事例の比較と共に、地域による違いを考察した。また所有者に対してヒアリング調査を行い、建物の由来や使用方法を可能な限り明らかにした。さらにパイアーレと共に、ヴォールト構造をもつ空石積みの石造建築であるラミアlamiaについても同時に調査を行い、形態及び建築構法の比較対象とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サルヴェ市を中心として、複数の特徴的なパイアーレおよびラミアの現地実測調査を行う事が出来た。V.Cazzato教授には研究を進める上で有益な示唆を頂くと共に、彼が手がけたトゥルッリのレスタウロ事例を見学させて頂いた。このように本研究の目的に従った、有意義な成果を上げることが出来た。また研究代表者が参加を予定していたアルベロベッロ歴史的中心地区内にあるトゥルッリのレスタウロ計画が中止となったため、他の計画への参画を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
トゥルッリおよびパイアーレに関する調査から得られた知見を元に、こうした歴史邸建築物をレスタウロする際の理念と手法を、事例研究から明らかにしていく。また特徴的な事例は、3Dレーザースキャニングによる精密な実測調査を行い、空石積みによるドームの形態と架構方法、組積技術を実証的に明らかにする。当研究室で導入したFaro社FocusX130は半径130m内の対象物を点群データとして記録することが可能で有り、直線をもたない空石積み建築の正確な形状把握に、大きく役立つものである。
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Causes of Carryover |
平成28年度は調査旅費を優先し、ノートPCおよび調査機器購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定したワークステーション型ノートPCを購入する。また3Dプリンタの導入に向けて準備を進める。
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