2017 Fiscal Year Research-status Report
石造ドーム住居「トゥルッリ」のレスタウロ:再生・利活用に関する実践的研究
Project/Area Number |
15K06407
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
黒田 泰介 関東学院大学, 建築・環境学部, 教授 (70329209)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 南イタリア / プーリア地方 / トゥルッリ / パイアーレ / 空石積み / ドーム / カテナリー曲線 / レスタウロ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は南イタリア・プーリア地方に見られる、石造ドーム構造を用いた伝統的な住宅建築であるトゥルッリTrulliに関して、その形態及び建築構法、さらに環境工学的観点から調査・分析を行い、実際の修復計画への参画を通じて、歴史的建造物のオーセンティシティを尊重したレスタウロ:再生・利活用方法のあり方を、実証的・実践的に論考していくことを目的とする。 平成29年度はサルヴェ市周辺の空石積みによるドーム建築、パイアーレ Pajareを主たる対象として、Faro社FocusX130を用いての3Dレーザースキャニングによる精密な実測調査を行った。特徴的な規模や形態をもつ6事例を選び、これらについて精密な点群データを作成した。現地調査は昨年度に引き続き、考古学者M.Cavalera氏(Associazione Arches)、レッチェ大学V.Cazzato教授、サルヴェ市の協力を得ながら行われた。現地にて関連文献および図面資料、史的資料等の文献収集を進めた。また所有者に対してヒアリング調査を行い、パイアーレのジッグラト状のテラスおよび周囲の石垣や竈、オリーブの木用の堤など、空石積み建築による農業生産施設における生活環境の実態を明らかにした。3Dレーザースキャニングによる実測データに基づいて、パイアーレ内部の持ち送りアーチによる尖頭ドームの形態と架構方法、組積技術について検討し、カテナリー曲線を描くドームの構法を実証的に明らかにした。サルヴェ市長ほか現地関係者に対して研究内容と調査成果に関する中間発表を行い、本研究に対する理解と共に、今後の活動に対して協力を得られることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サルヴェ市を中心として、複数の特徴的なパイアーレの3Dレーザースキャニングによる現地実測調査を行う事が出来た。現地の研究者からは研究テーマに関する有益な助言を頂くことができた。特にパイアーレの修復を数多く手がけるモルチャーノ・ディ・レウカ市の建設業者G.ボッツィ氏からは、空石積みの構法に関する考察に関して、大きな援助を頂いた。今年度の研究成果は2018年度日本建築学会(東北)他で発表する予定である。本研究が指向する、トゥルッリやパイアーレなど空石積み建築の形態及び建築構法や、環境工学的観点からの調査・分析を行うためには、3Dレーザースキャニングによる調査が有益かつ必要不可欠であることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度科学研究費基盤研究(C)に「南イタリアにおける空石積み建築の様態とレスタウロ:再生・利活用に関する研究」として、本テーマを発展させた研究計画をもって応募したが、残念ながら不採用となった。本研究を通じて得られた貴重な知見や現地での人脈を散失させてしまうことを防ぐため、平成29年度分研究費の繰越金を使わせて頂き、研究を継続させていきたい。調査事例を増やして比較対照のためのデータを蓄積すると共に、特に本研究のテーマに直結する、石造ドームのカテナリー曲線をつくるための、葦を使った実物大実験は、これを実現させたいと考えている。
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Causes of Carryover |
理由:現地での実測調査は、基本的に研究代表者1名のみで行った。これは当研究室所属の学生に現地における作業補助を依頼すると、海外渡航の交通費と旅費、人件費が必要となり、予算を大幅に超え、当該年度分の直接経費で賄うことが出来なくなると判断した結果である。また現地では実測調査を主務としたため、関連文献や資料等の収集は、前年度ほど進まなかった。こうしたことから結果的に直接経費にある程度の余裕が生じたため、これを繰り越して、次年度における研究活動継続費用として使わせていただくこととした。 使用計画:平成30年度における研究代表者の交通費、旅費、また現地の研究協力者に対する謝金として使用する予定である。
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