2018 Fiscal Year Annual Research Report
casa-torre and the conflicts between its society and the commune in medieval Florence
Project/Area Number |
15K06411
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Research Institution | Aichi Sangyo University |
Principal Investigator |
石川 清 愛知産業大学, 造形学部, 教授(移行) (40193271)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 塔状住居 / 中世 / フィレンツェ / 建築史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度計画では、8)塔に関わる門閥とフィレンツェ政府の成立との関係/9)中世末期の擬似パラッツォと公共建築における木製張り出し回廊(実地調査含む)、10)ルネサンス期パラッツォと個人居住区画(アパルタメント)に及ぼした影響(原史料調査含む)を中心に研究調査した。塔の組織化からその衰退、擬似パラッツォの成立状況の把握に努めた。塔に関わる門閥の重要な関心事の一つは、隣の塔と合体して拡大を目指すことにあった。塔に関わる門閥の契約の中には、非常に強力な忠誠心を示すものがある。明らかに近隣に強大な<家>があり、その背景には親教皇派と親皇帝派の抗争がある。 塔や公共的防禦施設の取り壊しが市民の住宅建築への転換を容易にした。塔とその家族防御に対抗する市民建築の新しい様式の創造を試みたわけではなかった。プリモ・ポーポロはパラッツォ・デッラ・ポデスタとパラッツォ・デッラ・シニョリーアという塔を複合した最も完全な模倣物を建設した。私的な塔に関わる門閥とその施設がどのようにポポロ政府から標的となったかを示してしている。彼らは塔に関わる門閥を敵対していたわけではなく、塔自体の力に対抗した。木製張り出し通廊はバルジェッロなどのモニュメンタルな公共建築のファサードに組み込まれたが、パラッツォ・デッラ・シニョリーアにおける、さらに進歩した高い記念性をもった外観においてはもはや木製張り出し通廊は消え失せ、中庭側に取り付けた。そしてルネサンス期のパラッツォに中庭回廊が組み込まれた形式が完成したときには、内観においても外観においても張り出し回廊は事実上時代遅れとなっていた。ここに塔状住居から塔を組み込んだ公共建築、中世後期の擬似パラッツォ、そして中庭とその上階にアプローチする階段を備えたルネサンス期のパラッツォへ向かう住居建築の発展過程があると私は推測し、それらの推論を本研究で補足した。
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